下位のアネモイ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/12 06:13 UTC 版)
アテーナイのホロロゲイオン(風神の塔)のように、少数の古代の資料には下位の4柱のアネモイが散見できる。ヘーシオドスやホメーロスが記述しているように、元来はこれらの下位のアネモイたちはテューポーンによって生み出された邪悪で粗暴な精霊アネモイ・テュエライ(Ἄνεμοι θύελλαι, Anemoi Thyellai, 「嵐」の意)であり、雄のハルピュイアであるテュエライであった。これらのアネモイがアイオロスの厩舎に繋がれており、ほかの4柱の天上のアネモイは繋がれていなかった。しかしながら、後世の記述者は二種のアネモイを混同して習合させてしまい、上の区分はほとんど忘れ去られた。 カイキアス(Καικίας,Kaikias) 北東の風の神。カイキアスは雹をちりばめた盾を構えた髭の男として描写され、カイキアスの名はギリシア語で「邪悪」を意味する κακία に由来する。カイキアスは美徳の精霊アレーテ(英語版)の姉妹である悪徳の精霊の名前でもある。ローマ神話におけるカイキアスに相当する神格は、カエキウス (Caecius) であった。 アペリオテス(Apeliotes) 南東の風の神。この風神は農民に特に有益な恵みの雨をもたらすと考えられており、アペリオテスはしばしば、多くの花々や穀物を覆い隠した明るい色の布を纏い、雨靴を履き果物籠を抱えた姿で描写される。アペリオテスは綺麗に髭をそり、巻き毛を生やし、親切そうな表情を浮かべている。アペリオテスは下位の神であったため、しばしば東風の神エウロスと習合させられた。ローマ神話におけるアペリオテスに相当する神格スブソーラーヌス (Subsolanus) は、しばしばウゥルトゥルヌスに代わり東風の神であるとも考えられていた。 スキーローン(Σκίρων,Skiron) 北西の風の神。スキーローンの名はアッティカの祭事暦における春の終わりの3か月であるスキロポリオンと関係がある。スキーローンは冬の始まりを表す大釜を傾ける髭の男として描写される。ローマ神話におけるスキーローンに相当する神格はカウルス (Caurus) あるいはコールス (Corus) である。 リプス(Lips) 南西の風の神。しばしば船の艫を支えた姿で描写される。ローマ神話におけるリプスに相当する神格は、イタリアの南にアフリカがあったことから、アフリクス(Africus, 「アフリカの風」の意)と呼ばれていた。この名前は、アフリカ大陸の名の語源となった北アフリカの部族アフリに由来する。
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