ワイン醸造における役割
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 14:03 UTC 版)
「マロラクティック発酵」の記事における「ワイン醸造における役割」の解説
マロラクティック発酵の最重要な役割は、ワインの酸度を下げることである。これはワインの官能的な側面にも影響を与え、口当たりが柔らかくなる、香りに複雑性を与える、といった効果がある。これらの理由から今日では世界中の赤ワインのほぼ全てでマロラクティック発酵がなされており、多くのスパークリングワインおよび白ワインのうちの20%ほどにも採用されている。 マロラクティック発酵で酸度が下がるのは、二価の酸でありきつい酸味を持つリンゴ酸が、一価の酸でより柔和な乳酸に変換されるためである。リンゴ酸と乳酸の化学的構造の差異により、ワインの滴定酸度(TA)は1~3 g/l 低下し、pHは0.3上昇する。リンゴ酸は生育中のブドウのなかに常に存在するが、ブドウが色づき始めるころに最多となり、熟すにつれて減少する。一般に、冷涼な気候で栽培されたブドウはリンゴ酸を豊富に含むため、マロラクティック発酵によるTAやpHの変化も大きくなる。 また、マロラクティック発酵により、ワインの微生物学的な安定性を向上させることができる。すなわち、ワインに悪影響を及ぼす微生物の生育に必要な栄養素を乳酸菌が消費してしまうのである。とはいえ、pHが上がることで若干不安定化する側面もあり、特にもともとpHが高めのワインに対しては影響も強い。マロラクティック発酵を行い酸度が下がったワインに対して、後から酸を添加し安定な状態を保てる程度までpHを下げるようなことも珍しくなく、この目的には酒石酸が用いられるのが普通である。
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