モッジ型フリゲートとは? わかりやすく解説

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モッジ型フリゲート

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/24 07:46 UTC 版)

モッジ型フリゲート
基本情報
艦種 駆逐艦 / フリゲート
建造期間 2006年 -
就役期間 2010年 -
前級 アルヴァンド級
次級 (最新)
要目 (Saunders 2015, p. 385)
満載排水量 1,372トン
全長 94.5 m
最大幅 11.1 m
吃水 4.3 m
主機 ディーゼルエンジン×2基
推進器 スクリュープロペラ×2軸
出力 20,000 hp(14.9 MW
速力 28ノット[注 1]
航続距離 3,650海里 (18kt巡航時)
乗員 125名+便乗者21名
兵装
搭載機 ベル 214ヘリコプター×1機
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モッジ型フリゲートペルシア語: ناوچه کلاس موج: Mowj-class frigate)は、イラン海軍フリゲートの艦級[2]。なお公式の艦種は駆逐艦である[1]

設計

基本的には、イスラム革命以前からイラン海軍が運用していたアルヴァンド級(ヴォスパーMk.5フリゲート)を発展させた設計となっている[1]。ただし同級はCODOG方式の機関を搭載していたのに対し、本級ではガスタービンエンジンを省いて、ディーゼルエンジンのみとなっており、その分だけ速力も低下している[2]。また電源としては、出力550キロワットディーゼル発電機4基を搭載している[3]

アルヴァンド級と異なり、艦尾甲板にはヘリコプター甲板が設けられた。格納庫は持たないが[2]艦載ヘリコプター1機の搭載に対応している[1]。機種としてはベル 214の名前が挙がっており[3]、また武装した無人航空機(UAV)の運用試験を行ったとも発表されている[4]。なおヘリコプター甲板直前には搭載艇2隻が配置されている[1]

装備

レーダーとしては、「ジャマラン」はアルヴァンド級と同じAWS-1を搭載して竣工したが[1]、「ダーマヴァント」では国産の3次元レーダーであるアスルを搭載しており、「ジャマラン」も後にこちらに換装した[2]。また「ダーマヴァント」では火器管制レーダーとしてWM-28も搭載した[2]

兵装は大きく変更された。例えば艦砲は、アルヴァンド級ではイギリス製の55口径114 mm単装砲を搭載していたのに対し、本型では、イタリア製の62口径76mm単装速射砲、あるいはそのリバースエンジニアリング版であるFajr-27を搭載した[3]。また機関砲としてボフォース 70口径40mm機関砲(Fath-40)と90口径20mm機関砲(エリコンGAM-B01)を備えるほか[1]、前者を30mm口径のカマンドCIWSAK-630の国産化版)に換装した艦もある[3]

艦対艦ミサイルとしてはヌールC-802の国産化版)を備える[1]。また艦対空ミサイルとして、メラブサッヤード-2の艦載化版)を搭載する[3][注 2]。また対潜兵器として3連装短魚雷発射管を備えている[1][2]

同型艦

一覧表

艦番号 艦名 起工 進水 就役 退役 母港
76 ジャマラン
IRIS Jamaran
جماران
2006年 2007年2月 2010年2月19日 就役中 バンダレ・アッバース
77 ダーマヴァント
IRIS Damavand
ناوچه دماوند
2007年 2013年 5月17日 2015年 2018年 1月10日[7] バンダレ・アンザリー
74 サハンド
IRIS Sahand
ناوچه سهند
2010年[8] 2012年 2018年12月1日 就役中 バンダレ・アッバース
75[3] デーナ
IRIS Dena
2012年[8] 2015年[8] 2021年6月14日[3] 就役中 バンダレ・アッバース

運用史

2018年1月、カスピ海を担当する北部艦隊に所属していた2番艦「ダマーヴァンド」が、嵐のため防波堤に衝突し、浸水・沈没した[9][10]

2020年5月10日、1番艦「ジャマラン」が演習中に発射した艦対艦ミサイルが、誤ってヘンディジャン級支援艦「コナラク」に命中[11][12]。沈没は免れたが、19名が死亡、15名が負傷した[11][12]。「コナラク」は標的の設置を担当していたが、設置後に十分な距離をとっていなかったとされる[11][12]

「サハンド」は2021年、133日間、4万5000キロメートルの長距離航海を実施し、イランの最高指導者アリー・ハーメネイーや国内メディアから称賛された。バンダレ・アッバース港を5月2日に出航して、アフリカ大陸南端回りで7月25日にロシア連邦サンクトペテルブルクに到着。スエズ運河を経由して9月9日に寄港した。経済制裁下で兵器などの国産化を進める「抵抗経済」の象徴の一つとなっている[13]

2024年7月、3番艦「サハンド」はイラン南部のバンダレ・アッバースにあるイラン海軍第1海軍基地で横転沈没した。修理中に浸水して傾斜し、その後艦を固定していたロープが切断して沈没したとされる[10]


脚注

注釈

  1. ^ 30ノットとする説もある[1]
  2. ^ サッヤード-2は、革命前に取得していたSM-1MRをリバースエンジニアリングした国産化版である[5]。本型はSM-1MRそのものを搭載しているとする説もあるが[2]制裁措置に伴って、これ自体は既にイラン軍での運用を終了している[6]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i Wertheim 2013, pp. 308–309.
  2. ^ a b c d e f g Saunders 2015, p. 385.
  3. ^ a b c d e f g “Home-made Mowj-Class frigate Dena officially joined the Iranian Navy”. Navy Recognition. (2021年6月13日). https://www.navyrecognition.com/index.php/naval-news/naval-news-archive/2021/june/10294-home-made-mowj-class-frigate-dena-officially-joined-the-iranian-navy.html 2021年6月15日閲覧。  {{cite news}}: |accessdate=|date=の日付が不正です。 (説明)
  4. ^ Sam LaGrone (2014年7月24日). “Iran Claims New Frigate Undergoing Sea Trials with Armed UAVs”. USNI News. https://news.usni.org/2014/07/24/iran-claims-new-frigate-undergoing-sea-trials-armed-uavs 2021年6月15日閲覧。  {{cite news}}: |accessdate=|date=の日付が不正です。 (説明)
  5. ^ Jeremy Binnie (2017年1月4日). “Iran tests Talash air defence system”. Jane's Defence Weekly. オリジナルの2017年1月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170104110212/http://www.janes.com/article/66654/iran-tests-talash-air-defence-system  {{cite news}}: |date=|archivedate=の日付が不正です。 (説明)
  6. ^ Wertheim 2013, p. 306.
  7. ^ Destroyer of the Navy of Iran Flew Into a Breakwater in the Caspian Sea”. Maritime Herald (2018年1月11日). 2018年1月11日閲覧。
  8. ^ a b c Saunders, Stephen; Philpott, Tom, eds. (2015), “Iran”, IHS Jane's Fighting Ships 2015–2016, ジェーン海軍年鑑 (116th Revised ed.), Coulsdon: IHS Jane's, p. 385, ISBN 9780710631435, OCLC 919022075 
  9. ^ イランがカスピ海に駆逐艦を配備”. 世界の艦船 (2023年12月19日). 2024年8月9日閲覧。
  10. ^ a b Iranian warship that sank during repairs now retrieved”. marineindustrynews.co.uk (2024年7月19日). 2024年8月9日閲覧。
  11. ^ a b c イラン海軍、演習でミサイルを自軍の船に誤射 19人死亡”. BBC (2020年5月11日). 2025年1月18日閲覧。
  12. ^ a b c イラン海軍、演習中に艦艇を誤射 19人死亡、15人負傷”. AFP (2020年5月11日). 2025年1月18日閲覧。
  13. ^ 飯島健太「【世界発2021】メイドイン・イラン 車も家電も/長引く制裁 苦肉の「抵抗経済」/国産駆逐艦 133日間航海「偉業」」『朝日新聞朝刊』2021年10月16日、国際面。2021年10月16日閲覧。

参考文献

関連項目




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