ミッシングファンダメンタル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/16 04:53 UTC 版)
「音響心理学」の記事における「ミッシングファンダメンタル」の解説
ミッシング・ファンダメンタル(英語版)は複合音の音高認知において幻聴される基本周波数である。 人間が知覚する音の高さ(音高)は音波が物理的にもつ基本周波数と強い結びつきを持つ。周期性を持つ音の周波数スペクトルは、いわゆる調波構造を持つ離散スペクトルとなる。一般的には、基本周波数成分(基音)とその整数倍の正弦波(倍音)から構成される。ところで音の重なり合わせ等の結果、基本周波数成分が失われ倍音のみで構成されたとする。この音を人間が聴いた場合、もし人間が一番下の周波数成分から音高を判断しているなら、第2倍音に相当する音高が認知されるはずである。しかし実際には、このような音で知覚される音高は、失われたはずの基本周波数(ミッシング・ファンダメンタル)に対応する音高となる。 この背景には、聴神経の発火が基底膜で分解されたのちに、その基底膜の特定の位相に限定して生じることがある(位相固定性)。この位相固定が成立する周波数には限界があることが知られており、大凡3kHz から4kHz で位相固定性は崩れるとされている。従って、ミッシング・ファンダメンタルに対応したピッチが聞こえる限界も、この辺りが上限となっている。ミッシング・ファンダメンタルに対応したピッチが聞こえるという現象は、しばしば他の感覚領域にも生じる知覚的補完の一種のように取り扱われることもあるが、これは適切とは言えない。むしろ、もともと我々がピッチという感覚を抽出する機構が、波形に備わる周期性を時間的に捉えているからである聞こえている。 ミッシング・ファンダメンタルに関して、ロー・カット・フィルタなどにかけることによって、基本周波数成分を物理的には存在しないようにすることが可能である。近年では計算機の発達により、デジタル加算合成が簡易に可能となっており、物理的に完全に基本周波数成分を含まない複合音を合成出力することは精度高く可能になっている。
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