ボタン配列の各方式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 09:28 UTC 版)
蛇腹楽器の常として、バンドネオンもモデルによってボタン配列の方式が全く異なるため、楽器の購入や習得にあたっては注意を要する。主な方式は以下の通りである。 押引異音式(「ダイアトニック」「バイソニック」とも)アインハイツ(Einheit)式配列 ライニッシュ(Rheinische)式配列 押引同音式(「クロマティック」「ユニソニック」とも)ペギュリ式(Peguri System)配列 クセロー式(Kusserow System)配列 マノーリ式(Manouri System)配列 上記以外にも、プロ奏者が楽器職人に特注して一部のボタン鍵の音高を変えたり、ボタン鍵を増やしたバンドネオンもある。ピアノ式鍵盤と同様のボタン鍵配列を採用した機種や、もはやバンドネオンとは言えない変わった設計の機種も存在し、まれに中古品市場で出回ることもある。 蛇腹楽器の常として、バンドネオンも、さまざまな鍵盤配列方式が考案されて乱立し、それぞれの方式は特定の音楽ジャンルと結びつくなどして、いまだ統一されていない。最も規則的で合理的なヴイッキ・ヘイデン式鍵盤配列(英語版)(押引同音)はまったく普及せず、逆に、規則はずれが多く非合理的なライニッシュ式配列がアルゼンチンを中心に広く世界に普及している。 バンドネオンを含む蛇腹楽器の演奏技術は、鍵盤配列の不規則性を逆手に取って生かしたものも少なくない。また現行の鍵盤配列は、演奏者が現地の個性的な音楽を演奏しやすいよう、規則はずれのボタン鍵を追加するなど、試行錯誤の歴史の積み重ねの末に確立したものである。鍵盤配列の各方式の優劣や適否は、机上の合理性のみで判断できるものではない。 小松亮太によれば、バンドネオンはもともと発明国のドイツでは「買ったその日にすぐ弾ける」ほど簡単で便利な楽器であり、ドイツ人がバンドネオンで楽しんでいた音楽はかなり単純だったのでそれで良かったこと、アルゼンチン人がドイツから輸入したバンドネオンでタンゴの複雑な音楽を演奏するようになってもバンドネオンのボタン配列の不規則性は解消されなかったが、この不規則性こそがバンドネオン特有の音色の要(かなめ)として絡んでくること、を述べている(小松2021,pp105-107)。
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