ホモロジーを用いた証明
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/08/05 08:08 UTC 版)
「ブラウワーの不動点定理」の記事における「ホモロジーを用いた証明」の解説
この証明は、D n の境界が (n − 1)-球面 S n − 1 であるという事実に基づいている。 背理法より、連続函数 f : D n → D n は不動点を持たないと仮定し、矛盾を示す。D n 内の各 x に対して、仮定より f(x) と x は異なる値なので(f が不動点を持たないとは f(x) ≠ x を意味することに注意)、f(x) と x を通る唯一つの直線を引くことが出来る。この直線に沿って、S n − 1 上のある点が得られるので、これを F(x) とする。これは、レトラクションとして知られる特別なタイプの連続函数 F : D n → S n − 1 を定義する。すなわち、終域(この場合は S n − 1)のすべての点がその函数の不動点となる。 直感的に、S n − 1 の上への D n のレトラクションはあり得ないように思われる。実際、n = 1 の場合は S 0(すなわち、閉区間 D 1 の終点)が連結ですらないため、これはあり得ない。また n = 2 の場合はこれほど明らかではないが、各々の空間の基本群を利用した基本的な議論で証明することが出来る:レトラクションは、S 1 の基本群から D 2 の基本群への単射群準同型を導くが、はじめの群は Z と同型である一方で二つ目の群は自明群であり、これはあり得ない。n = 2 の場合はまた、非消失ベクトル場に関する定理に基づき矛盾を示すことも出来る。 n > 2 の場合にレトラクションがあり得ないことを証明するのはさらに難しい。一つの方法として、ホモロジー群を利用する方法がある:ホモロジー Hn − 1(D n) は自明であるが、Hn − 1(S n − 1) は無限巡回群である。このことにより、再びレトラクションが前者から後者への単射群準同型を導くため、矛盾となる。
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