フレキシブルフューエル‐ビークル【flexible fuel vehicle】
読み方:ふれきしぶるふゅーえるびーくる
フレックス燃料車
(フレキシブル・フューエル・ビークル から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/29 18:32 UTC 版)
フレックス燃料車(-ねんりょうしゃ、英: Flexible-fuel vehicle、略称: FFV)は、ガソリンとメタノールやエタノールなど、1種類以上の燃料が混合して走行が出来るように設計された車両のことである。デュアルフューエルビークル(英:Dual-fuel vehicle )とも。
概要
フレックス燃料車はセンサーで混合物を検知してコンピュータで燃料の供給量を調整するので、どのような比率で燃料を混合しても走行が可能である。
フレックス燃料車の中でもっとも多いのはエタノールフレックス燃料車で、2008年中旬時点でアメリカ(730万台)、ブラジル(620万台)、カナダ(60万台)、スウェーデンを主とする欧州(12万6,500台)の4市場合計で1,400万台が生産された。
エタノールフレックス燃料車はガソリン100 %からエタノール100 %(E100)のどのような混合比においても走行が可能になるような技術が存在するが、北米と欧州のフレックス燃料車は最高でガソリン15 %と無水エタノール85 %の混合燃料(E85)での走行までが可能である。これは気温11 ℃未満時に起こる冷間始動時の不確実性を排除するためである。さらに11月から3月で気温0 ℃以下の時は、アメリカではE70、スウェーデンではE75にアルコールの混合率を減らしている。また、ブラジルのフレックス燃料車はE20から100 %含水アルコール(E100)での走行が可能で、気温15℃以下においてエンジン始動のためだけに使用される小容量のガソリンタンクを装備している。
2006年にはトヨタ自動車が、エタノール10%(E10)が使用できるよう、全ガソリン車車種に対応させた[1]。
問題点・注意点
フレックス燃料車の問題点には、エタノールのエネルギー密度が低く燃費が悪化すること、エタノールによる金属の腐食やゴムの膨潤で燃料ラインが劣化する可能性、食料問題や生産エネルギーの問題といったバイオエタノール生産の課題、そして燃料供給インフラの不足やコストが高いことなどがある[2][3][4]。
車両側の問題点
・燃費の悪化
- エタノールはガソリンよりもエネルギー密度が低いため、エタノール含有量が高い燃料を使用すると燃費が悪化する。
・燃料ラインの劣化
- エタノールは一部の金属やゴム材料を腐食させたり膨潤させたりする可能性がある。これにより燃料漏れが発生したり、エンジンの始動性や運転性が悪化したりする懸念が生じる。
・エンジンの調整
- フレックス燃料車は燃料の混合比を検出してエンジンを調整するセンサーと特別な燃料ラインを備えているが、従来のガソリン車をそのままフレックス燃料車として使用することは、これらの改造がないため、燃料ラインの劣化やエンジンの不調を引き起こす。
バイオエタノール(燃料)側の問題点
・食料問題
- トウモロコシなどの食料作物を原料とするバイオエタノールの生産は、食料の供給を圧迫し食料問題に繋がる可能性がある。
・生産エネルギーとコスト
- バイオエタノールの製造には高いエネルギーが必要であり、生産コストも高くなる傾向がある。
・エネルギー密度が低い
- ガソリンと比べてエネルギー密度が低く、より大量の燃料が必要になるため、運搬コストも高くなる可能性がある。
インフラ・その他
・供給インフラの不足
- フレックス燃料の供給インフラが十分に整備されていないため、普及の妨げとなっている。
・コスト
- 燃料の生産・供給コストが高く、ガソリンよりもコスト競争力が低い場合がある。
腐食対策
エタノール燃料による腐食を防ぐには、エタノール混合率が車両に対応しているか確認し、燃料系統部品が腐食に強い素材で作られているか確認することが重要である。また、高濃度のエタノール混合燃料をガソリン車に使用すると、部品が腐食して燃料漏れや事故につながる可能性があるため、車両の指定燃料を守り、エタノール混合率の高い燃料に対応していない車には使用しないよう注意が必要である[5][6][7][8][9]。
腐食対策のポイント
・対応している車両を使用する
- エタノール混合率の高い燃料は、特定の車両のみが対応している。使用する車の取扱説明書で指定されている燃料を確認し、その車両に対応したエタノール混合率の燃料のみを使用する。
・燃料系統部品の素材を確認する
- エタノールは特定の金属やゴム、プラスチックといった素材を腐食させる可能性がある。エタノール混合燃料に対応していない車に高濃度エタノール混合燃料を使用すると、燃料配管、ガスケット、シールなどの部品が腐食し、燃料漏れや事故の原因となることがある。
・水分混入に注意する
- エタノールそのものの親水性が高い為、エタノール混合ガソリンは水分と混じりやすく、水分が混入すると燃料の腐食性が増し、燃料系統のトラブルを引き起こしやすい。そのため、燃料の供給チェーン全体での水分混入対策が必要[10]。
高濃度エタノール混合燃料の使用に関する注意喚起
- 高濃度エタノール含有燃料をガソリン自動車に誤って使用すると、自動車の燃料系統部品が腐食し、燃料漏れなどの不具合や火災の危険性があるため、国土交通省から注意喚起をしている。
- 市場に流通する一部の車両はエタノール混合率「E10」に対応しているが、それ以上の混合率の燃料(E20やE85など)には対応していない場合がある。新たな基準に適合した車両の普及と、それに対応する燃料システムの開発が求められている。
脚注
注釈
出典
- ^ “3つのサスティナビリティ”. トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト (PDF). 2025年8月24日閲覧。
- ^ “過去に実施したアルコール含有燃料の調査研究の内容と結果について”. 国土交通省(PDF). 2025年8月29日閲覧。
- ^ “バイオディーゼル燃料とは?概要とメリット・デメリットについて解説”. TansoMiru(タンソミル). 2025年8月29日閲覧。
- ^ “バイオ燃料とは何か?持続可能な新エネルギーのメリット・デメリットを詳しく解説 - CARBONIX MEDIA”. 株式会社Sustech(サステック). 2025年8月29日閲覧。
- ^ “バイオエタノールの導入拡大をめざして”. 資源エネルギー庁. 2025年8月29日閲覧。
- ^ “高濃度アルコール含有燃料をガソリン自動車に使用することの注意喚起”. 国土交通省. 2025年8月29日閲覧。
- ^ “【エンジンが壊れる?】環境に優しいエタノール混合ガソリン 英国で「E10」本格導入 影響は”. オートカー. 2025年8月29日閲覧。
- ^ “消毒用アルコール、次亜塩素酸水・次亜塩素酸ナトリウムのメリット ...”. ㈱レスキューナウ. 2025年8月29日閲覧。
- ^ “自動車用燃料(ガソリン)へのバイオエタノールの導入拡大について”. 経済産業省(PDF). 2025年8月29日閲覧。
- ^ “内燃機関超基礎講座:アルコール燃料エンジンの開発:気化潜熱とエアブロッキングとの戦い[CART]”. MOTOR Fan. 2025年8月29日閲覧。
関連項目
外部リンク
- フレキシブル・フューエル・ビークルのページへのリンク