フレキシティ2とは? わかりやすく解説

フレキシティ2

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/17 23:59 UTC 版)

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フレキシティ2
Flexity 2
フレキシティ2が最初に導入されたブラックプール・トラム2013年撮影)
基本情報
製造所 ボンバルディア・トランスポーテーション
中国中車南京浦鎮車輛(ライセンス生産)
製造年 2011年 -
主要諸元
編成 5車体・7車体連接車
軌間 1,000 mm1,435 mm
制御装置 MITRAC
備考 主要数値は[1][2][3][4][5][6][7][8]に基づく。
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フレキシティ2(Flexity 2)は、ドイツベルリンに本社を置く鉄道車両メーカーのボンバルディア・トランスポーテーションが展開する路面電車車両。車内全体が低床構造となっている超低床電車である。この項目では、中国の鉄道車両メーカーである南京浦鎮車輛有限公司が展開しているライセンス生産車両のCINIUSについても解説する[1][9][2][8]

概要

フレキシティはボンバルディア・トランスポーテーションが世界各地に展開する路面電車ライトレール路線向けの電車ブランドである。その中でフレキシティ2は、乗降扉付近の床上高さが330 mmに抑えられ、車内に段差が存在しない100 %低床構造となっている車種である[1][2][8]

全長が短く台車が設置されている車体が台車が存在せず全長が長いフローティング車体を挟む編成で構成され、前者には小径車輪を有する車軸・2次サスペンション(軸ばね、枕ばね)付き台車が設置されている。これにより騒音や振動の抑制、メンテナンスコスト削減に加え、フローティング車体にかかる重量も抑えられている。車体の製造においては溶接炭素鋼が用いられ軽量化が図られている一方、従来の車両から車体破損時の対策が強化され安全性が向上している。内装を含め、設計にはモジュール構造が採用されており、顧客の要望に基づいた多様なデザインに対応可能である[1][2][8]

車両の速度制御システムにはボンバルディアが開発した「MITRAC」が用いられ、従来の車両からエネルギー消費量が最大30 %削減されている。また、リチウムイオン電池に対応する非接触誘導電力伝送システムのプリムーブ(PRIMOVE)の搭載も可能で、停車時にスーパーキャパシタと併用して架線から電気を貯めることにより非電化の架線レス区間でも長距離走行ができる[1][9][2][8][10]

運用・導入都市

2011年イギリスブラックプールブラックプール・トラム)向け車両の製造が開始されて以降、フレキシティ2は以下の都市に導入されている。そのうち、ベルギーに導入されたフレキシティ2は内外のデザイン性が高く評価され、2015年にアンリ・ヴァン・デ・ヴェルデ賞(Henry Van de Velde Label)を受賞している[1][3][4][7][11]

フレキシティ2 導入都市一覧
都市 編成 運転台 両数 備考・参考
イギリス ブラックプール
(ブラックプール・トラム)
5車体連接車 両運転台 18両 詳細は「フレキシティ2 (ブラックプール・トラム)」を参照[3][12]
オーストラリア ゴールドコースト
(G:link)
7車体連接車 両運転台 18両 車内にはサーフボード用ラックが存在する[4][13]
メルボルン
(メルボルン市電)
3車体連接車 両運転台 100両(予定) 詳細は「メルボルン市電G形電車」を参照[14]
スイス バーゼル
(バーゼル市電)
5車体連接車 片運転台 43両 [1][5]
7車体連接車 15両
チューリッヒ 7車体連接車 片運転台 70両(予定) 詳細は「VBZ Be 6/8」を参照
「フレキシティ・チューリッヒ(Flexity Zurich)」[1][6]
ベルギー ブリュッセル
(ブリュッセル市電)
5車体連接車 両運転台 79両(予定) 詳細は「ブリュッセル首都圏交通T3200形」、「T4200形電車フランス語版」を参照
「TNG(New Generation Tram)」[15][16][17]
7車体連接車 11両(予定)
アントウェルペン
(アントウェルペン市電)
5車体連接車 片運転台 38両 詳細は「アルバトロス (路面電車車両)」を参照
[7][11][18]
7車体連接車 24両
ヘント
(ヘント市電)
7車体連接車 両運転台 26両

CINIUS

概要

2010年代以降中国各地の都市に次々と開通する路面電車路線へ向けて、中国北車や中国南車、両者合併後の中国中車超低床電車を展開する世界各地の企業と業務提携を結び、各企業の車両のライセンス生産を実施している。その中で、中国南車(現:中国中車南京浦鎮車輛有限公司ボンバルディア・トランスポーテーションとライセンス契約を結び、フレキシティ2を基にした「CINIUS[注釈 1]の展開を行っている[9][19][20]

2020年現在、CINIUSは以下の路面電車路線で使用されており、全路線とも5車体連接車が導入されている。また、蘇州高新区有軌電車の路線は非電化(架線レス)となっており、非接触誘導電力伝送システムのプリムーブ(PRIMOVE)を用いた充電走行が行われている[9][20]

都市 路線 編成 運転台 両数 備考・参考
江蘇省蘇州市 蘇州高新区有軌電車 1号線 5車体連接車 両運転台 18両 [9][20][21]
江蘇省南京市 南京有軌電車 河西線 塗装は黒色[9][8][20]
麒麟線 塗装は黄緑色[9][8][20]

諸元

CINIUS 主要諸元
編成 運転台 参考
5車体連接車 両運転台 [8][20]
全長 全幅 全高 車体高 台車間距離 重量
32,660mm 2,650mm 3,800mm 3,535mm 11,230mm 44.0t
平均加速度 常用減速度 非常減速度 着席定員 定員
乗客密度6人/m2 乗客密度8人/m2
1.0m/s2 1.2m/s2 2.8m/s2 56人 300人 382人

脚注

注釈

  1. ^ ブランド名の「CINIUS」は「City Genius」の略称である。

出典

  1. ^ a b c d e f g h 服部重敬「欧州のLRV 最新事情」『路面電車EX vol.13』、イカロス出版、2019年6月20日、87頁、ISBN 9784802206778 
  2. ^ a b c d e FLEXITY 2 Trams”. Bombardier. 2015年9月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月22日閲覧。
  3. ^ a b c FLEXITY 2 – Blackpool, United Kingdom”. Bombardier. 2015年10月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月22日閲覧。
  4. ^ a b c FLEXITY 2 Light Rail System – Gold Coast, Australia”. Bombardier. 2015年10月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月22日閲覧。
  5. ^ a b FLEXITY 2 – Basel, Switzerland”. Bombardier. 2015年10月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月22日閲覧。
  6. ^ a b Bombardier Unveils New FLEXITY Zurich Tram Design”. Bombardier (2018年5月8日). 2020年5月22日閲覧。
  7. ^ a b c FLEXITY 2 – Ghent and Antwerp, Belgium”. Bombardier. 2015年10月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月22日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h 低地板现代有轨电车平台”. 南京浦镇车辆有限公司. 2020年5月22日閲覧。
  9. ^ a b c d e f g 服部重敬 2018, p. 93.
  10. ^ MITRAC Energy Saver”. Bombardier. 2020年5月22日閲覧。
  11. ^ a b Bombardier’s FLEXITY 2 Tram Wins Prestigious Design Award”. Bombardier (2015年9月7日). 2020年5月22日閲覧。
  12. ^ Blackpool Tramway”. British Trams Online. 2020年9月8日閲覧。
  13. ^ All Stations”. G:link. 2022年4月21日閲覧。
  14. ^ Next Generation Trams”. Victoria State Goverment. 2022年4月21日閲覧。
  15. ^ Bombardier Wins Contract to Provide up to 175 FLEXITY Trams to Brussels Transportation Company”. Bombardier (2018年4月25日). 2020年9月1日閲覧。
  16. ^ Keith Barrow (2019年5月24日). “Brussels orders more New Generation Trams from Bombardier”. Bombardier. 2020年9月1日閲覧。
  17. ^ Libor Hinčica (2023年5月3日). “S tříletým zpožděním. V Bruselu vyjela první tramvaj TNG”. Československý Dopravák. 2023年5月4日閲覧。
  18. ^ Bombardier to Supply 40 Additional FLEXITY 2 Trams to Belgian Transport Agency De Lijn”. Bombardier (2015年6月2日). 2020年5月22日閲覧。
  19. ^ 服部重敬 2018, p. 91.
  20. ^ a b c d e f CINIUS”. 南京浦镇车辆有限公司 (2016年5月15日). 2020年5月22日閲覧。
  21. ^ 庞巴迪合作伙伴南车浦镇赢得中国低地板有轨电车订单”. Bombardier. 2013年12月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月22日閲覧。

参考資料

外部リンク


フレキシティ2

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/31 06:45 UTC 版)

フレキシティ」の記事における「フレキシティ2」の解説

詳細は「フレキシティ2」を参照 新設計のフレキシティ2011年ブラックプールに初導入

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「フレキシティ2」を含む「フレキシティ」の記事については、「フレキシティ」の概要を参照ください。

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