フレキシティ・アウトルック (インスブルック市電)とは? わかりやすく解説

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フレキシティ・アウトルック (インスブルック市電)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/10 01:08 UTC 版)

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フレキシティ・アウトルック(インスブルック市電)
フレキシティ・アウトルック(326)(2018年撮影)
基本情報
運用者 インスブルック交通・シュトゥーバイタール鉄道会社ドイツ語版
製造所 ボンバルディア・トランスポーテーション
製造年 2007年 - 2009年2018年 - 2020年
総数 1次車 32両(301 - 326、351 - 356)
2次車 20両(327 - 335、371 - 381)
運用開始 2008年
投入先 インスブルック市電
主要諸元
編成 連接車(5車体連接車)、両運転台
軸配置 Bo′+2′+Bo′
軌間 1,000 mm
電気方式 直流900 V
架空電車線方式
最高速度 70 km/h
起動加速度 1次車 1.00 m/s2
減速度(常用) 1次車 1.26 m/s2
減速度(非常) 1次車 2.73 m/s2
車両定員 1次車 158人(着席56人)
2次車 158人(着席40人)
折り畳み座席2人分
(乗客密度4人/m2時)
車両重量 1次車 37.9 t
全長 1次車 27,600 mm
2次車 27,900 mm
全幅 2,400 mm
全高 3,500 mm
床面高さ 320 mm(低床率100 %)
車輪径 560 mm
台車中心間距離 9,500 mm
軸重 1次車 9.1 t
2次車 6.8 t
主電動機 三相誘導電動機
主電動機出力 100 kW
出力 400 kW
制御方式 VVVFインバータ制御方式IGBT素子)
備考 主要数値は[1][2][3][4][5][6]に基づく。
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この項目では、ボンバルディア・トランスポーテーション(現:アルストム)が開発した路面電車車両ブランドのフレキシティ・アウトルックのうち、オーストリアインスブルック市電へ導入された車両について解説する。車軸が存在する台車を用いた超低床電車2007年以降導入が実施され、2024年現在インスブルック市電の営業用車両はフレキシティ・アウトルックに統一されている[1][2][5][7][6]

概要

2001年、インスブルック市議会は今後のインスブルック市電の方針として、路線の延伸を始めとした近代化を決定した。これを受けて旧型電車の置き換えを目的とした新型電車の導入も検討されるようになり、ヨーロッパの企業を対象とした入札を経て、2005年10月にインスブルック市電を運営するインスブルック交通・シュトゥーバイタール鉄道会社ドイツ語版(Innsbrucker Verkehrsbetriebe und Stubaitalbahn GmbH、IVB)はボンバルディア・トランスポーテーション(現:アルストム)へ新型電車の発注を実施した。これを受け、同社は超低床電車ブランドとして展開するフレキシティ・アウトルックのインスブルック市電向け車両を開発した[1][3][5][7][8][9]

フレキシティ・アウトルックは、高床式車両と同様に車軸を有する台車を有しながらも、車輪を始めとした構造の小型化により、車内に段差がない100 %低床車体を実現させた超低床電車である。インスブルック市電向け車両も同様の構造で、乗降扉付近の床上高さが320 mmに抑えられており、それよりも床上高さが高い台車がある箇所についてもスロープで結ばれており段差が存在しない。編成は5車体連接式で、車体両側に乗降扉を有する両運転台車両である。車幅は従来の車両よりも広い2,400 mmで、導入に際しては市電の各施設の対応工事が実施された。前面にはクラッシャブルゾーンが設けられており、障害物への衝突時の乗務員や乗客の安全が守られる[3][2][7][5]

最初に発注された車両(1次車)は2007年10月16日に納入され、試運転を経て2008年3月27日から営業運転を開始した。その後、2009年10月までに合計32両が導入され、同年7月までに既存の旧型電車を全て置き換えた。そのうちインスブルック市内および近隣都市間で運用されるのは26両(301 - 326)、山岳鉄道路線であるシュトゥーバイタール鉄道線(STB)向けの車両は6両(351 - 356)で、前者のうち2両(325、326)と後者の全6両については、シュトゥーバイタール鉄道線の安全対策である列車制御システムに対応した機器が搭載されている[1][4][2][8][9][6][10]

続けて、2015年12月にインスブルック交通・シュトゥーバイタール鉄道会社は今後の路線網の拡大に合わせて、2次車にあたる20両の追加発注を実施した。これらの車両はクラッシャブルゾーンが最新の基準に合わせて拡大されている事に加えて運転台側の乗降扉の幅が広くなったため、全長が300 mm長くなっている。運転台にはタッチスクリーンが増設され、運転士による操作の利便性が図られている他、後方確認用のバックミラーが監視カメラに置き換えられている。車内についてはロングシートが利用客から不評だった事から全座席がクロスシートに変更され、その分着席人数が減少している。また、軸重の軽減や空調装置の見直しと言った設計変更も行われている。これらの改良が施された車両は「フレキシティ・インスブルック(Flexity Innsbruck)」と呼ばれる事もある。2018年から導入が開始されており、当初は2019年に実施された延伸に備えて同年までに全車が納入される予定だったが、製造過程の不具合が要因となりスケジュールに遅延が生じ、全車がインスブルックに到着したのは2020年となった。そのうち9両(327 - 335)はインスブルック市内や近隣都市間の系統用車両、11両(371 - 381)はシュトゥーバイタール鉄道線に対応した機器を有する車両である[1][4][6][11][12][13][14]

その他

1次車のうち、2両(307、320)については2011年(320)および2012年(307)以降グムンデン - フォルヒドルフ線に貸し出され、2016年まで使用されていた[1]

脚注

注釈

出典

  1. ^ a b c d e f Wolfgang Kaiser (2016-5-18). Straßenbahn in Österreich: Alle aktuellen und ehemaligen Betriebe Kindle Ausgabe. GeraMond Verlag. ISBN 978-3956130168. https://books.google.co.jp/books?id=iSrEDwAAQBAJ 2024年7月5日閲覧。 
  2. ^ a b c d FLEXITY Outlook – Innsbruck, Austria”. Bombardier. 2017年11月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年7月5日閲覧。
  3. ^ a b c FLEXITY Outlook Innsbruck, Austria”. Bombardier. 2024年7月5日閲覧。
  4. ^ a b c Vehicle Statistics Innsbruck, Tramway”. Urban Electric Transit. 2024年7月5日閲覧。
  5. ^ a b c d ENTER 2007, p. 216.
  6. ^ a b c d Robert Schrempf 2019, p. 35.
  7. ^ a b c ENTER 2007, p. 215.
  8. ^ a b Robert Schrempf 2019, p. 33.
  9. ^ a b Robert Schrempf 2019, p. 34.
  10. ^ Innsbrucker Verkehrsbetriebe und Stubaitalbahn GmbH (2020). “Ausschreibung abgeschlossen”. Tram/Regionalbahn 4: 16-19. https://www.ivb.at/fileadmin/dl_neu/zwei_fuenf_Magazin_4_Sommer_2020.pdf 2024年7月5日閲覧。. 
  11. ^ Robert Schrempf 2019, p. 37.
  12. ^ Innsbrucker Verkehrsbetriebe und Stubaitalbahn GmbH (2015). “Ausschreibung abgeschlossen”. Tram/Regionalbahn 9: 14-15. https://www.ivb.at/fileadmin/downloads/IVB_Tram_Regionalbahn_Magazin_09_2015.pdf 2024年7月5日閲覧。. 
  13. ^ Innsbruck bestellt 20 Flexity-Straßenbahnen”. Eurailpress (2015年12月18日). 2024年7月5日閲覧。
  14. ^ First Innsbruck Regionalbahn LRV rolled out”. Metro Report Intarnational (2018年3月13日). 2024年7月5日閲覧。

参考資料

  • Robert Schrempf (2019-04). “Fehlstart an Inn”. Strassenbahn Magazin (GeraMond Verlag GmbH): 32-37. 



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