ピュラコスの子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/24 16:00 UTC 版)
このイーピクロスは、テッサリアー地方の都市ピュラケー(英語版)の王である。 ポーキス地方の王デーイオーンの子ピュラコスと、ミニュアースの娘クリュメネーとの子であり、したがってイアーソーンの母方の叔父にあたる。一説によればデーイオーンの子ケパロスとクリュメネーの子。ポダルケースとプローテシラーオスの父とされるが、ヘーシオドスによればプローテシラーオスは叔父のアクトールの子である。 イーピクロスは俊足の戦士として有名だった。彼の足は神速であり、風と速さを比べることができるほどだったが、そのあまりの速さ、軽妙さゆえに、麦の穂を踏んで往来しても穂を折るどころか傷をつけることすらなかったと、ヘーシオドスは歌ったという。 いくつかの作品はイーピクロスをアルゴナウタイの1人としているが、彼がアルゴナウタイに参加したかどうかは疑わしく、『アルゴナウティカ』1巻45行に「ホメーロスも、ヘーシオドスも、レーロスのペレキューデースも、イーピクロスがアルゴナウタイであるとは述べていない」という古註が施されている。 アポロドーロスによると、イーピクロスは幼少期に父ピュラコスが家畜を去勢する様子を見たことが原因で性的不能に陥ったが、予言者メラムプースの占いと治療によって回復した。それによると、ピュラコスは牝牛の群れを盗みにやって来たメラムプースを捕らえ、1年もの間牢屋に閉じ込めた。メラムプースは兄弟のビアースがピュロス王ネーレウスの娘ペーローと結婚できるように、ネーレウスの出した条件を達成するために牛を盗もうとしたのだった。それから1年が経過したころ、メラムプースは虫たちの会話から牢屋の天井が虫食いで脆くなっていることを知り、別の牢屋に変えてもらった。その後しばらくして牢屋が崩れたため、ピュラコスはメラムプースが優れた予言者だと知り、牢屋から解放して、イーピクロスの性的不能を解消する方法を尋ねた。そこでメラムプースは鳥占いによって原因を探り、治療の方法を指示した。その結果イーピクロスにポダルケースが生まれた。 しかし『オデュッセイアー』によると、ネーレウスが出したペーローとの結婚の条件はイーピクロスの牛の群れを盗むことであり、ピュラコスの時代のエピソードがイーピクロスの時代のものとして語られている。ただし『オデュッセイアー』の別の個所ではメラムプースが囚われていたのはピュラコスの館である。またヘーシオドスやパウサニアースもイーピクロスのときだったとしている。
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