パイレーツによろしく
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パイレーツによろしく | |
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作者 | 川西蘭 |
国 | ![]() |
言語 | 日本語 |
ジャンル | 長編小説 |
発表形態 | 書き下ろし |
刊本情報 | |
出版元 | 河出書房新社 |
出版年月日 | 1984年5月10日 |
総ページ数 | 312 |
id | ISBN 978-4-309-00365-8 |
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『パイレーツによろしく』は、川西蘭の長編小説。1984年(昭和59年)5月、「河出書き下ろし長篇小説叢書」の一冊として、河出書房新社より刊行され、みずみずしい感覚や独特の会話体により、若い層からの支持を得た[1]。1988年(昭和63年)には、後藤幸一監督により映画化された[2][1][3]。
映画
パイレーツによろしく | |
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PIRATES IN THE CITY[1] | |
監督 | 後藤幸一 |
脚本 | 佐伯俊道 |
原作 | 川西蘭『パイレーツによろしく』 |
製作 | 木下茂三郎 |
出演者 | |
撮影 | 篠田昇 |
編集 | 福田憲二 |
製作会社 | キノシタ映画 |
配給 | 東映洋画[2] |
公開 | ![]() |
上映時間 | 105分 |
製作国 | ![]() |
言語 | 日本語 |
あらすじ
平凡な大学生(石黒賢)、自閉症の天才システムエンジニア(三上博史)、売れっ子の少女漫画家(鳥越マリ)の3人に、山口二矢を思わすテロリストの少年(石橋保)、挫折して海賊放送をしている全共闘崩れの中年(森本レオ)が絡む、当時はまだ珍しかったポップ調で描く[1][3][2]。詰めこみからゆとり教育の狭間に置かれた3人の20代前半の若者と行き場を無くした30代のけだるさとが対照的に描かれる[1][3][2]。
キャスト
- 上杉透:石黒賢
- 早瀬明:三上博史
- 美保あすか:鳥越マリ
- 真里子:高橋洋子
- 男(Mr.パイレーツ):森本レオ
- マチルダ:浅野愛子
- アコ:神津はづき
- 岡本克之:金田賢一
- 長田仁:石橋保
- 長田勇造:笈田敏夫
スタッフ
- 監督:後藤幸一
- 脚本:佐伯俊道
- 原作:川西蘭『パイレーツによろしく』
- 製作:木下茂三郎
- プロデューサー:佐々木啓
- 撮影:篠田昇
- 美術:福澤勝広
- 録音:瀬谷満
- 照明:高屋齋
- 編集:福田憲二
- 選曲:大友洋二
- 助監督:鈴木政信
- 製作協力:シネマハウト
- 音楽協力:服部克久
- 美術協力:今保太郎
製作
製作会社としてクレジットされるキノシタ映画は愛知県名古屋市に本拠を置く、ゴルフ場などを経営する株式会社キノシタの映画部門で、製作クレジットの木下茂三郎は同社社長[2]。1984年の『チーちゃんごめんね』、1985年の『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』、1988年の本作、1993年の『ゲンセンカン主人』と4本の映画を製作している[2]。
企画・脚本
企画は監督の後藤幸一[2]。後藤が荒井晴彦経由で佐伯俊道に直に「どうしても、これをやりたいんです。7000万円の予算でやろうと思います」と脚本を依頼した[2]。佐伯も原作を気に入り、自身と等身大の30代の全共闘世代のキャラクターを少し膨らませると提案しOKが出て、脚本第一稿まではスムーズにいった。本作もキノシタ映画製作で準備も進んでいたが、『チーちゃんごめんね』の分配金を巡って東宝と木下茂三郎が大いに揉め、木下の映画界に対する不信感は頂点に達し、一度は約束した本作映画化をご破算にしたいと言い出した[2]。木下が自身で映画館・キノシタホールを開設した切っ掛けはその事件といわれる[2]。スタッフ・キャストもほぼ決定した後で、後藤は木下の説得に東京ー名古屋を何10回と往復する羽目になった[2]。内田栄一が準備稿を読み「大傑作!」と褒めてくれたが、効果なく、一年が経過した後、「絶対に金は出さん」と言っていた木下が軟化し「配給さえキチンと決まれば3000万なら出す」と言ってくれた[2]。これを受け、後藤が考えたのが当然ながら全体のギャラを抑えること[2]。キャストにノーギャラの提案はよっぽどの友人か、ノーギャラで出演してもメリットがある例えば映画賞が期待できるような大監督の映画以外は不可能なので、スタッフに無理を頼むことになった[2]。後藤が佐伯に基本ノーギャラで、特別な版権契約を結び、配給のアガリで歩合を支払うという提案をしてきた[2]。佐伯は日本シナリオ作家協会にまだ入ってはいなかったが、同協会で著作権問題に詳しい国弘威雄に相談に行った[2]。国弘は「その条件で納得しなければ木下氏がまたもや3000万を反故にするかも知れない。そうなると製作は中止に追い込まれる。スタッフ・キャストもみんなが困る」などと説得[2]。さらに「作協の会員でもないのに、契約とか著作権について普段から考えてるの? この際作協に入らないか?」と誘われ、佐伯の脚本家仲間、荒井晴彦、斎藤博、一色伸幸、丸内敏治らが日本シナリオ作家協会に次々入会した[2]。国弘は終始一貫して脚本家の著作権のために闘い続けた人で尊敬されていた[2]。
キャスティング・撮影
金髪に頭を染める三上博史は元々、寺山修司作品の常連で映画ファンからカルト的人気があったが[2]、本作公開時はフジテレビ系のテレビドラマ『君の瞳をタイホする!』出演後で、女性人気が爆発中という状態[2]。また鳥越マリが初めてヌードを披露した[2]。都内プランタン銀座前などでロケが行われている。
興行と成績
都内は新宿東映パラス2一館のみの封切[3]。後藤は劇場のテケツ(切符売り場)の横に立ち、入場者数をカウントしていたという[2]。けっこうお客が入ったとされるが、脚本家に対する分配金は払われなかった[2]。名古屋のキノシタホールは2019年4月26日の閉館まで33年間営業が続いたが、同館で歴代興収ナンバー1は本作という[2]。
作品の評価
年配の映画評論家からは「訳が分からん映画だ」など酷評された[2]。川口敦子は「ヒロイン、アシスタントをはじめとするキャラクターの誇張のされ方が恥ずかしい」などと、中野翠は「ガマンにガマンを重ねたが、ついに1時間半で途中退場した(中略)『青春』『都市』『現代』といったものへの想像力のまずしさ。セックス抜きの男女関係がどうのこうの騒ぐほどのことでもない(中略)『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を100回見て出直して欲しい。鳥越マリのメロドラマ調演技、竹下通り的にダサいファッションやインテリアにも怒り爆発」などと、萩原朔美は「こういう雰囲気とか気分を読み取る小説の映像化には要注意だ。『突然炎のごとく』のシチュエーションだけど、鳥越マリにジャンヌ・モローは酷。三上博史も生かされず可哀想」などと、松田政男は「絶対に愛国者でないはずの私でさえ、見ている間中、日本に対する海外の偏見が増々助長されるだろうなと思いたくなったほど、若い世代を見事に捕捉し損ねている。怪演の神津はづきが僅かな救い」などと、利重剛は「つまらなかった。時代論世代論を描いている様で実は何も言ってない事に腹が立った。この映画じゃ90年代は見えて来ない」などと評した[3]。
ソフト状況
ビデオは発売されていたが廃版[1]。DVD、BDは発売されていない。劇場で上映されることもない。
脚注
外部リンク
固有名詞の分類
映画作品 |
バルジョーでいこう! 真紅の影 パイレーツによろしく リーサル・コップ 息子の青春 |
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