バルプロ酸投与の影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/16 14:06 UTC 版)
抗てんかん薬として広く使われ、気分障害(双極性障害)や片頭痛の治療薬としても使われる場合のあるバルプロ酸ナトリウムは、L-カルニチン欠乏症を引き起こす。 バルプロ酸によるL-カルニチン欠乏症の発生機序は、様々な機序が考えられている。例えば、バルプロ酸がL-カルニチンの合成に関わる酵素を阻害して生合成が抑制されること、腎臓でのL-カルニチンの再吸収を抑制することが挙げられる。また、バルプロ酸とは、2-プロピルペンタン酸の事であり、要するに、脂肪酸の類似分子である。バルプロ酸が代謝の過程でバルプロイルCoAに変換され、バルプロイルカルニチンとなって排泄されるため、L-カルニチンを体外へ奪う機序も挙げられる。これらの機序によって、慢性的にL-カルニチンが体内で不足し易い状況が継続する事が、バルプロ酸の代表的な副作用として知られる肝障害や高アンモニア血症に大きく関与しているとされる。 軽度の高アンモニア血症では自覚症状が出ない場合も多く、早期発見のために、服用中は定期的な血液検査が必要である。 てんかんや気分障害の治療薬は、一般に長期にわたり服用する物であり、特に、てんかんの治療では小児期から服用開始する場合が多いため、注意が必要である。 バルプロ酸の副作用予防としてL-カルニチンを経口投与する場合は、日本人の場合は体重1 kgあたり10 mg - 20 mg、または、成人で1日250 mg~750 mgを服用する。 バルプロ酸を服用している患者に、体重1 kgあたり15 mgのL-カルニチン投与を行った結果、1週間で欠乏症から回復したとする報告が有る。また、バルプロ酸の副作用による肝毒性や高アンモニア血症にも、L-カルニチンの摂取によって改善する効果が出たとの報告が有る。
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