ドナルド・ジョハンソンとは? わかりやすく解説

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ドナルド・ジョハンソン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/18 14:51 UTC 版)

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Donald Johanson
ドナルド・ジョハンソン
生誕 Donald Carl Johanson
(1943-06-28) 1943年6月28日(78歳)
アメリカ合衆国 イリノイ州シカゴ
国籍 アメリカ合衆国
研究分野 古人類学
研究機関 ケース・ウェスタン・リザーブ大学
アリゾナ州立大学
出身校 イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校
シカゴ大学
主な業績 アウストラロピテクス・アファレンシスルーシー)の発見
プロジェクト:人物伝
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ドナルド・カール・ジョハンソン(Donald Carl Johanson、1943年6月28日 - )は、アメリカ合衆国古人類学者である。イヴ・コパン英語版モーリス・タイーブ英語版と共同で、エチオピアハダール地方のアファール盆地で「ルーシー」と呼ばれるメスのアウストラロピテクス・アファレンシスの化石を発見したことで知られる。

生涯

若年期と教育

ジョハンソンは、イリノイ州シカゴスウェーデン出身の両親の間に生まれた。スウェーデンのレスリング選手のイバール・ヨハンソン英語版は叔父にあたる。

1966年にイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で学士号を取得し、シカゴ大学で修士号(1970年)と博士号(1974年)を取得した。

キャリア

ルーシーが発見された当時はケース・ウェスタン・リザーブ大学の人類学の准教授だった。1981年にカリフォルニア州バークレー人類起源研究所英語版を設立し、1997年にアリゾナ州立大学に移籍した。ケース・ウェスタン・リザーブ大学から名誉博士号を授与され[1]、2008年にはウェストフィールド州立大学からも名誉博士号を授与された。

ルーシー

ルーシーは、1974年11月24日エチオピアハダールで発見された。ジョハンソンは大学院生のトム・グレイに付き添って発掘調査をしていたが、視界の端に見えた白い骨の化石がヒト科の動物の骨であると認識したのが最初だった。最終的に骨格の40%が復元され、後にこれがアウストラロピテクス・アファレンシスの最初に発見された個体であることが判明した。ジョハンソンは、これほど多くの骨が一度に見つかったことに驚愕した。「ルーシー」という名前は、探検隊の一員のパメラ・アルダーマンが提案したものであり、発見された夜にテープレコーダーから繰り返し流れていたビートルズの楽曲『ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ』に因んで命名した。

ルーシーは身長約3.5フィート(約1メートル)の二足歩行のヒト科の動物で、レイモンド・ダートが唱えた「アウストラロピテクスは直立歩行する」という説を裏付けるものであった。ジョハンソンらは、その肋骨から植物性の食事をしていたこと、曲がった指の骨からおそらく樹上生活をしていたであろうことを推定した。ジョハンソンらはルーシーをアウストラロピテクス・アフリカヌスの古い仲間と考えた。その後、似たような形態の頭蓋骨がいくつか発見されたため、ほとんどの古生物学者はルーシーをアファレンシスという別種に分類することにした[2]

ジョハンソンとメイトランド・A・エディーは、この研究に関する最初の一般書である"Lucy: The Beginnings of Humankind"(ルーシー: 人類の始まり)で1982年の全米図書賞科学部門を受賞した[3]

最初の家族

AL 333英語版」は、1975年にジョハンソンの研究チームがハダールで発見した、少なくとも13体分の先史時代のヒト科動物の化石であり、「最初の家族」(First Family)と呼ばれている。一般的にはアウストラロピテクス・アファレンシスの仲間と考えられており、約320万年前の化石と推定されている。

賞と栄誉

1976年、アカデミー・オブ・アチーブメントのゴールデンプレート賞を受賞した[4]

1991年、 懐疑主義的研究委員会(CSICOP)は、ジョハンソンに最高の栄誉である「In Praise of Reason」賞を授与した[5]

2021年10月に打ち上げられたNASAの小惑星探査機は、ジョハンソンらが発見した化石に因んで「ルーシー」と名付けられた。探査機「ルーシー」の最初の目標天体である小惑星52246は、ジョハンソンの名前を取って2015年に「ドナルドジョハンソン」と命名された[6]

2013年から、アメリカ国立科学教育センター英語版の諮問委員を務めている[7]

ジョハンソンは無神論者であり[8]、2014年10月24日、信教からの自由連盟英語版の第37回年次大会で「Emperor Has No Clothes」賞を受賞した[8]

著書

関連項目

脚注

  1. ^ Honorary Degrees, CWRU 2009” (2009年5月14日). 2009年5月15日閲覧。
  2. ^ Donald C. Johanson (2009). Lucy's Legacy: The Quest for Human Origins. Harmony Books 
  3. ^ "National Book Awards – 1981". National Book Foundation. Retrieved 2012-03-07.
  4. ^ Golden Plate Awardees of the American Academy of Achievement”. www.achievement.org. American Academy of Achievement. 2021年10月18日閲覧。
  5. ^ “CSICOP's 1991 Awards”. Skeptical Inquirer 16 (1): 16. (1991). 
  6. ^ 52246 Donaldjohanson (1981 EQ5)”. Minor Planet Center. 2018年10月30日閲覧。
  7. ^ Advisory Council”. ncse.com. National Center for Science Education. 2018年10月30日閲覧。
  8. ^ a b Crowd loves Lucy scientific sleuth Johanson”. ffrf.org. 2021年10月18日閲覧。

外部リンク


ドナルドジョハンソン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/24 02:00 UTC 版)

ドナルドジョハンソン
52246 Donaldjohanson[1][2]
仮符号・別名 1981 EQ5 · 1998 YF26[1][2]
分類 小惑星[1][2]
軌道の種類 小惑星帯[1][2]
エリゴネ族[3]
発見
発見日 1981年3月2日[1][1][2]
発見者 S. J. Bus[1][2]
発見場所 サイディング・スプリング天文台[1][2]
軌道要素と性質
元期:2021年7月1日 (JD 2,459,396.5)[1]
軌道長半径 (a) 2.383578000915053 au[1]
近日点距離 (q) 1.936820875225216 au[1]
遠日点距離 (Q) 5.667626943558679 au[1]
離心率 (e) 0.1874313009762331 [1]
公転周期 (P) 1344.133730218515 日
3.68 [1]
軌道傾斜角 (i) 4.423103472464905 [1]
近日点引数 (ω) 213.1424481456299 °[1]
昇交点黄経 (Ω) 262.8196524209048 °[1]
平均近点角 (M) 24.30295575561566 °[1]
ティスラン・パラメータ (T jup) 3.509 [1]
物理的性質
直径 3.895±0.013 キロメートル[1]
スペクトル分類 C[4]
絶対等級 (H) 15.5 [1]
アルベド(反射能) 0.103±0.019[1]
Template (ノート 解説) ■Project

ドナルドジョハンソン[5][6][7] (52246 Donaldjohanson) は、小惑星帯の内帯に位置する、小惑星族の1つ「エリゴネ族」に属するC型小惑星[3]。1981年3月2日、オーストラリア連邦 ニューサウスウェールズ州サイディング・スプリング天文台での観測からアメリカの天文学者シェルテ・バスによって発見された。アメリカ航空宇宙局 (NASA) のトロヤ群小惑星探査機ルーシー (Lucy) の目標天体の1つ[8]となったことから、化石人骨「ルーシー」の発見者の一人であるアメリカの古人類学者ドナルド・ジョハンソンにちなんで命名された[1]

軌道と分類

ドナルドジョハンソンが属する「エリゴネ族」は、163 エリゴネを主として約2,000個の炭素質小惑星が属する大きな小惑星族で、約1億3000万年前に起こった小惑星の衝突によって誕生した、比較的古い族であると考えられている[9]。ドナルドジョハンソンは、小惑星帯内帯を太陽から約1.9 - 2.8 天文単位 (au) 離れた公転軌道を、約3年8ヶ月(約1,345日)の周期で公転している[1][2]。公転軌道の軌道長半径は約2.38 au、軌道離心率は約0.19、黄道に対する軌道傾斜角は約4.4°である[1][2]

物理的特徴

ドナルドジョハンソンは、炭素質小惑星のC型小惑星に分類されており[4]、これはエリゴネ族の小惑星の全体的なスペクトル型であるC型もしくはX型と一致している[9]

2020年8月に行われた測光観測の結果、光度曲線の振幅が1.7等級と非常に大きく、ゆっくりと回転していることが明らかになった[10][11]。この光度曲線は、ドナルドジョハンソンが非常に細長い形状をしているか、あるいは自転と公転が同期した二重小惑星系である可能性を示唆している[11]。2020年11月から2021年2月にかけて行われた、2台のTRAPPIST望遠鏡による大規模な測光観測の結果、ドナルドジョハンソンの自転周期が約252時間であるとされた[12]

NASAの広視野赤外線探査機WISEの拡張ミッションNEOWISEによる観測結果から、直径は3.895 km、表面のアルベドは0.103 とされている[13]

名称

アメリカ航空宇宙局 (NASA) のトロヤ群小惑星探査機ルーシー (Lucy) の目標天体の1つ[8]となったことから、化石人骨「ルーシー」の発見者の一人であるアメリカの古人類学者ドナルド・ジョハンソンにちなんで2015年12月25日に命名された[1][14]

探査計画

2021年10月16日打ち上げ予定のNASAのトロヤ群小惑星探査機ルーシーが、トロヤ群に向かう途中で近接観測する計画となっている[15]。フライバイは2025年4月20日に予定されており、922 kmの距離を秒速13.4 kmの速度で通過する計画である[15]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 52246 Donaldjohanson (1981 EQ5)”. Small-Body Database Lookup. JPL. 2021年10月11日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i 52246 Donaldjohanson (1981 EQ5)”. Minor Planet Center. IAU. 2021年10月12日閲覧。
  3. ^ a b Asteroid 52246 Donaldjohanson – Nesvorny HCM Asteroid Families V3.0”. Small Bodies Data Ferret. 2021年10月12日閲覧。
  4. ^ a b LCDB Data for (52246) Donaldjohanson”. Asteroid Lightcurve Database (LCDB). 2021年10月12日閲覧。
  5. ^ ルーシーとは?│ルーシーと私の楽しむカガクの時間”. 国立科学博物館. 2021年10月12日閲覧。
  6. ^ Hoffman, Adam (2016年8月31日). ルーバー荒井ハンナ: “猿人ルーシーの死因は木から転落? 注目の理由は”. ナショナルジオグラフィック日本版サイト. 2021年10月12日閲覧。
  7. ^ Greshko, Michael (2021年10月20日). 北村京子: “探査機ルーシーが木星トロヤ群へと旅立つ、何がわかる?”. ナショナルジオグラフィック日本版サイト. 2021年10月23日閲覧。
  8. ^ a b Lucy - The First Mission to the Trojan Asteroids”. NASA (2021年9月). 2021年10月12日閲覧。
  9. ^ a b Nesvorný, D.; Broz, M.; Carruba, V. (December 2014). Identification and Dynamical Properties of Asteroid Families. 297–321. arXiv:1502.01628. Bibcode2015aste.book..297N. doi:10.2458/azu_uapress_9780816532131-ch016. ISBN 9780816532131 
  10. ^ Levison, Harold F.; Olkin, Catherine B.; Noll, Keith S. et al. (2021-08-24). “Lucy Mission to the Trojan Asteroids: Science Goals”. The Planetary Science Journal (American Astronomical Society) 2 (5): 171. Bibcode2021PSJ.....2..171L. doi:10.3847/psj/abf840. ISSN 2632-3338. 
  11. ^ a b Noll, Keith (2020年12月4日). “Is the Lucy Mission Target (52246) Donaldjohanson a Binary?”. Mikulski Archive for Space Telescopes. 2021年10月13日閲覧。
  12. ^ Ferrais, Marin; Jehin, Emmanuel; Manfroid, Jean; Moulane, Youssef; Barkaoui, Khalid; Benkhaldoun, Zouhair (2021). Rotation period determination of NASA Lucy mission target (52246) Donaldjohanson. 53rd Annual DPS Meeting. American Astronomical Society. 1226. 2021年10月13日閲覧
  13. ^ Masiero, Joseph R.; Mainzer, A. K.; Grav, T. et al. (2011-10-17). “Main Belt Asteroids with WISE/NEOWISE. I. Preliminary Albedos and Diameters”. The Astrophysical Journal (American Astronomical Society) 741 (2): 68. arXiv:1109.4096. Bibcode2011ApJ...741...68M. doi:10.1088/0004-637x/741/2/68. ISSN 0004-637X. 
  14. ^ MPC/MPO/MPS Archive”. Minor Planet Center. 2021年10月12日閲覧。
  15. ^ a b Levison, H. F.; Olkin, C.; Noll, K. S.; Marchi, S.; Lucy Team (March 2017). “Lucy: Surveying the Diversity of the Trojan Asteroids: The Fossils of Planet Formation”. 48th Lunar and Planetary Science Conference (1964): 2025. Bibcode2017LPI....48.2025L. https://www.hou.usra.edu/meetings/lpsc2017/pdf/2025.pdf. 

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