ルーシー (探査機)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/16 07:38 UTC 版)
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小惑星(617) パトロクロスとその衛星メノイティオスを探査するルーシーの想像図
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任務種別 | 複数フライバイミッション |
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運用者 | NASA · SwRI |
COSPAR ID | 2021-093A |
任務期間 | 12年(予定) |
任務開始 | |
打ち上げ日 | 2021年10月16日 09:34 (UTC) |
![]() ルーシー・ミッションの公式ロゴ |
ルーシー(Lucy)とは、5つの木星トロヤ群小惑星を探査する計画、あるいはその計画における探査機の名称である[1]。
ルーシーは、M型小惑星プシケ探査計画のサイキと共に、2017年1月4日にNASAのディスカバリー・プログラムに選定された[2]。
ディスカバリー・プログラムは、NASAの惑星ミッションプログラムオフィスが運営する、低コストかつ高頻度で太陽系探査を行うシリーズミッションであり、1994年度予算で正式に開始され、各ミッションは開発期間36か月以内、開発費1億9000万ドル以下、ミッション総費用2億9900万ドル以下という明確なコスト上限のもと、重点的な科学目標の達成を目指す方式を採用している[3][4]。
また、ディスカバリー・プログラムは、1990年代初頭に当時のNASA長官ダニエル・ゴールディンが提唱した「より速く、より良く、より安く(Faster, Better, Cheaper)」の方針を具現化する枠組みとして創設されたことでも知られる[5]。
ミッション名は、有名な類人猿化石、ルーシーに由来する。これは、探査対象であるトロヤ群小惑星が太陽系初期の歴史を保存する「惑星形成の化石」であると考えられているからである[6]。一方、類人猿化石のほうのルーシーは、ビートルズの楽曲「Lucy in the Sky with Diamonds」にちなんだものである[7]。
経過
- 2021年
- 10月16日午前9時34分 (UTC) にケープカナベラル空軍基地から打ち上げられた[8]。
- 2022年
- 10月16日、第一回地球スイングバイ実施[9]。
- 2023年
- 11月1日 (UTC) 頃、小惑星ディンキネシュに接近観測し、ディンキネシュが接触二重小惑星であることを発見した[10]。
- 2024年
- 12月13日4時15分 (UTC)、第二回地球スイングバイ実施[11]。
- 2025年
- 4月20日 (UTC) 頃、小惑星ドナルドジョハンソンに接近観測[12]。
予定

ルーシーは、2027年には木星L4トロヤ群に到達し、(3548) エウリュバテス、(15094) ポリュメーレー、(11351) レウコス、(21900) オルスをフライバイする予定である。 これらのフライバイののち、ルーシーは重力アシストを受けるために地球近傍へ戻り、木星のL5点へ向かう。L5点では、(617) パトロクロスとその衛星メノイティオスを探査する。また、トロヤ群到達前の2025年には小惑星帯の内側にある(52246) ドナルド・ジョハンソンもフライバイする予定で、(52246) ドナルド・ジョハンソンは、ルーシー化石の発見者にちなんで2015年に名づけられた小惑星である[13]。
ルーシーには高解像度可視イメージャ、光学/近赤外分光器、熱赤外分光器の3つの機器が搭載される予定である[14]。
開発
ルーシーはNASAのディスカバリー・プログラムの次期ミッションとして提案されたミッションの1つである。次期ミッションは2021年末までの打ち上げを要求するものであった。この応募は2015年2月に締め切られ、総計28ミッションが提案された。
2015年9月30日、ルーシーは5つあるファイナリスト・ミッションの1つに選出され、計画の具体化のため300万ドルの資金を受けた[15][16][17]。ほかには、DAVINCI、NEOCam、サイキ、VERITASがファイナリスト・ミッションに選出されている。
2017年1月4日、ファイナリスト・ミッションからルーシーとサイキの2つが選定された。
科学搭載機器
以下の機器が搭載される予定である[14]:
- L'Ralph
- 可視全領域カラーイメージャ/赤外分光マッパ。 L'Ralphはニュー・ホライズンズのRalphを基にしていて、ゴダード宇宙飛行センターで開発される予定である。
- L'LORRI
- 高分解能可視イメージャ。L'LORRIはニュー・ホライズンズのLORRIから派生したもので、ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所で開発される。
- L'TES
- 熱赤外分光装置。L'TESはオサイリス・レックスのOTESに類似の搭載機器である。アリゾナ州立大学で開発される予定。
これらのほかに、通信電波のドップラーシフトを用いた電波科学探査が小惑星の質量を決定するために行われる。
目標天体
目標天体とフライバイする予定日時は以下の通り[18][19]:
- 2025年4月20日:(52246) ドナルド・ジョハンソンをフライバイ。(52246) ドナルド・ジョハンソンは直径4 kmのC型小惑星でメインベルト内縁部に位置し、年代約1.3億年のエリゴネ族の小惑星である。
- 2027年8月12日:(3548) エウリュバテスをフライバイ。(3548) エウリュバテスは直径64 kmのC型小惑星で、木星トロヤ群のうち、L4周りのギリシア群に属する。トロヤ群で唯一確認されている衝突族の最大メンバー。2,000 km離れたところに直径1kmほどの衛星を有する[20]。
- 2027年9月15日:(15094) ポリュメーレーをフライバイ。(15094) ポリュメーレーは、直径21 kmのP型小惑星でL4トロヤ群内の衝突小惑星片である可能性がある。
- 2028年4月28日:(11351) レウコスをフライバイ。(11351) レウコスは直径34 kmのD型小惑星で、自転速度が遅い(自転周期466時間)L4トロヤ群小惑星である。
- 2028年11月11日:(21900) オルスをフライバイ。(21900) オルスは直径51 kmのD型小惑星でL4トロヤ群に位置する。
- 2033年3月2日:(617) パトロクロスをフライバイ。(617) パトロクロスは直径140 kmのP型二重小惑星で、680 km離れたところに直径104 kmの衛星メノイティオスがある。L5トロヤ群に属する。
脚注
- ^ Chang, Kenneth (2017年1月6日). “A Metal Ball the Size of Massachusetts That NASA Wants to Explore”. New York Times 2017年1月7日閲覧。
- ^ Northon, Karen (2017年1月4日). “NASA Selects Two Missions to Explore the Early Solar System”. 2017年7月22日閲覧。
- ^ “NASA’s Discovery Program”. NSSDCA. 2025年5月16日閲覧。
- ^ “Discovery Program”. NASA. 2025年5月16日閲覧。
- ^ “Discovery and New Frontiers Oral Histories”. NASA. 2025年5月16日閲覧。
- ^ Witze, Alexandra (2015年3月16日). “Five Solar System sights NASA should visit”. Nature News 2015年10月2日閲覧。
- ^ Johanson, Donald C.; Wong, Kate (2010). Lucy's Legacy: The Quest for Human Origins. Crown Publishing Group. pp. 8–9. ISBN 978-0307396402
- ^ Fox, Karen; Johnson, Alana; Neal Jones, Nancy (2021年9月29日). “NASA’s Lucy Mission Prepares for Launch to Trojan Asteroids”. NASA News 2021年10月13日閲覧。
- ^ “NASA小惑星探査機「ルーシー」第1回地球スイングバイを実施”. sorae (2022年10月20日). 2024年12月20日閲覧。
- ^ “小惑星ディンキネシュの衛星は接触二重小惑星 NASA探査機ルーシーの観測で判明publisher=sorae” (2023年11月11日). 2024年12月20日閲覧。
- ^ “NASA小惑星探査機「ルーシー」第2回地球スイングバイ実施 未踏の木星トロヤ群へ”. sorae (2024年12月20日). 2024年12月20日閲覧。
- ^ “NASA探査機「ルーシー」が2回目の小惑星フライバイを実施 予想外のサイズが判明”. sorae (2025年4月22日). 2025年4月24日閲覧。
- ^ Dreier, Casey; Lakdawalla, Emily (2015年9月30日). “NASA announces five Discovery proposals selected for further study”. The Planetary Society 2015年10月1日閲覧。
- ^ a b “Southwest Research Institute (SwRI) 2015 News Release - SwRI awarded $3 million NASA contract to develop mission to Jupiter’s Trojan asteroids”. www.swri.org. 2015年10月5日閲覧。
- ^ Brown, Dwayne C.; Cantillo, Laurie (2015年9月30日). “NASA Selects Investigations for Future Key Planetary Mission”. NASA News (Washington, D.C.) 2015年10月1日閲覧。
- ^ Clark, Stephen (2014年2月24日). “NASA receives proposals for new planetary science mission”. Space Flight Now 2015年2月25日閲覧。
- ^ Kane, Van (2014年12月2日). “Selecting the Next Creative Idea for Exploring the Solar System”. Planetary Society 2015年2月10日閲覧。
- ^ “Lucy: Surveying the Diversity of Trojan Asteroids, the Fossils of Planet Formation”. Southwest Research Institute (2015年). 2017年7月11日閲覧。
- ^ Levison, H. F.; Olkin, C.; Noll, K. S.; Marchi, S. (March 2017). Lucy: Surveying the Diversity of the Trojan Asteroids, the Fossils of Planet Formation (PDF). 48th Lunar and Planetary Science Conference. 20-24 March 2017. The Woodlands, Texas. Bibcode:2017LPI....48.2025L. LPI Contribution No. 1964, id. 2025。
- ^ Noll, K. S.; Brown, M. E.; Weaver, H. A.; Grundy, W. M.; Porter, S. B.; Buie, M. W.; Levison, H. F.; Olkin, C. et al. (2020-09-04). “Detection of a Satellite of the Trojan Asteroid (3548) Eurybates—A Lucy Mission Target” (英語). The Planetary Science Journal 1 (2): 44. doi:10.3847/PSJ/abac54. ISSN 2632-3338 .
関連項目
- トロヤ群
- ルーシー (アウストラロピテクス) - ミッション名の由来である
- JUICE - ESAの木星系探査計画
- OKEANOS
- ディスカバリー計画
「ルーシー (探査機)」の例文・使い方・用例・文例
- ルーシーは寝ています
- ルーシーは石につまずいて転んで足首をねんざした
- 「ルーシー,あなたが今話をしていた男の人はだれ」「彼は大学のときの友達よ」
- ルーシーは新しい彼に夢中になっている
- ルーシーは忙しい社交生活を送っている
- ルーシーはリボンで髪を束ねていた
- 母犬のルーシーとその子供たちの写真を取ったよ。
- ルーシーは四ヶ月前日本に来ましたか?
- ルーシーは四ヶ月前に日本に来ましたか?
- ルーシーがあなたが何冊か面白い本を持っていると私に教えてくれました。
- 着いたと思ったとたんに、ルーシーが家へ帰りたいと泣き出した。
- 多くのアメリカ人はテレビで「アイ・ラブ・ルーシー」の再放送を観るのが好きだ。
- 申し訳ありませんが、ただいまルーシー氏は手が話せません。
- 春はルーシーが一番好きな季節だ。
- 私の犬はルーシーに世話をしてもらいました。
- 私に犬はルーシーに世話をしてもらいました。
- ルーシーは両親を幸福にした。
- ルーシーは必ず来る。
- ルーシーは箸が使えない。
- ルーシーは電灯のスイッチをつけた。
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