トクマサとは? わかりやすく解説

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トクマサ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/30 13:44 UTC 版)

トクマサ(得正)
根岸御賞典を拝受したトクマサ
品種 サラブレッド
性別
毛色 栗毛
生誕 1933年3月20日[1]
死没 1943年以降不明
トウルヌソル
種正
生国 日本千葉県
生産者 下総御料牧場[2]
馬主 山中清兵衛
調教師 尾形景造東京
競走成績
生涯成績 27戦9勝[3]
獲得賞金 6万3602円75銭[3]
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トクマサ(得正[注釈 1])は日本競走馬1936年に行われた第5回東京優駿大競走日本ダービー)優勝馬である[7]李王職1937年(昭和12年)に買上げ、蘭谷牧場(江原道准陽郡)の種牡馬として繋養した[4]

経歴

競走馬時代

第5回東京優駿大競走(外4番がトクマサ)

1933年3月20日に宮内省管轄の下総御料牧場で誕生。父は前年に日本へ導入され、産駒がクラシック戦線で活躍を始めていた大種牡馬トウルヌソル[8]、母はイギリスから輸入された[9]基礎牝馬である種正(タネマサ、血統名:ヤングマンズフアンシー[12])という良血馬であった。1935年に馬主となる山中清兵衛によって1万5450円で購入され[13]、東京競馬場の尾形藤吉(景造)厩舎に預託された[1]

1936年春に中山競馬場でデビューするも不振が続き、5戦1勝という戦績で第5回東京優駿大競走に挑むと、最後の直線で騎手の伊藤正四郎[注釈 2]も折れるほどの気合の騎乗を見せ、2分42秒1のタイムで優勝した[注釈 3]人気5番で勝利した結果、競走後に特払い特別給付金)が出る大穴であった[注釈 4]。 このとき調教師の尾形は重馬場(実際は稍不[注釈 5])を得意とする第8レース勝ち馬フソウの履いていた蹄鉄に気づき、競馬場にほど近い自宅からアメリカ製のスパイク鉄[注釈 6]を取り寄せると[18]、トクマサに履かせて[19]出走に間に合わせた[16]

なお、その第5回東京優駿大競走について、関西の秘密兵器と目され同厩舎で評価の高かったヒサトモなどに比べると、トクマサの注目度は低く、上述の通り5番の評価で単票は106票止まりだった[16]。レースではスタートから中団の7番手につけ、向こう正面で進出を開始。3、4コーナーで馬場の内側を突いて先行集団に取り付くと、最後の直線では先に抜け出した1番人気のピアスアローを外から強襲し、1馬身4分の1差をつけて優勝した[16]

ダービー制覇後は、同年6月に横浜競馬場で行われた帝室御賞典にも優勝。翌1937年には目黒記念(春)、中山記念(秋)を制するなど活躍を続けた。通算成績は27戦9勝、獲得賞金は6万3602円75銭であった[3]

種牡馬時代

1937年11月に引退後、朝鮮李王職蘭谷牧場に買い上げられて「得正」の名で種牡馬として供用された[4][20]。しかし太平洋戦争下の混乱期に行方不明となり、1943年以降の消息は不明とされている[3]

なお、東京優駿大競走で伊藤正四郎が使用して折れた鞭は、トクマサを生産した下総御料牧場に寄贈され[注釈 7]、「勝利の鞭」として保存された[3]

競走成績

評価

血統表

トクマサ血統ゲインズバラ系5号族(5-h) / Hampton5.5×5=9.38% St.Simon5.5×5) (血統表の出典)

*トウルヌソル
Tournesol
1922 鹿毛
仏・G1[21]
父の父
Gainsborough
1915 鹿毛
Bayardo Bay Ronald
Galicia
Rosedrop St.Frusquin
Rosaline
父の母
Soliste
1910 栗毛
Prince William Bill of Portland
La Vierge
Sees Chesterfield
La Goulue

種正
*Young Man's Fancy
1920 鹿毛
Junior
1909 黒鹿毛
英国産
Symington Ayrshire
Siphonia
Scylla Eager
Sirenia
母の母
Enthusiast's Last
1909 鹿毛
英国産
Enthusiast Sterling
Cherry Duchess
Myrrha Baliol
Hetty F-No.5-h

父・トウルヌソル1925年ジョッケクルブ賞フランスダービー)優勝馬で、1932年に日本へ輸入後、本馬のほかヒサトモクモハタテツモンイエリュウクリフジといった数々の大レース優勝馬を輩出した戦前の大種牡馬である。母の種正(ヤングマンズフアンシー)も英国から輸入された御料牧場の基礎牝馬である。

全姉(父も母も同じ姉)に1935年春の帝室御賞典(阪神)勝ち馬・キンチヤンがいる[22][23][24]

脚注

注釈

  1. ^ 当初の血統名は「波正」[4][5][6]
  2. ^ 伊藤正四郎は伊藤正徳調教師の実父、伊藤雄二元調教師の義父。
  3. ^ ゴール後に確認すると、実際に鞭は根元から折れて長さ20 cmほどになっていたという[14]
  4. ^ 単勝式の払戻金は元金含め9円50銭であったが、当時の規定では配当が10円を超えた場合は元金の10倍が上限とされ、残額は国庫収入となる代わりに、的中券を持たない(いわゆるハズレ馬券)の購入者に対して元金と同額を払い戻す「特払い」が行われた[15]。日本ダービーではトクマサの配当が初めて200円台に達した[16]
  5. ^ 当日の馬場は稍不発表であった。しかし、公式記録では天候「晴」、馬場状態「良」と記録されている[15]
  6. ^ スパイク鉄は当時、「歯鉄」と呼ばれ、翌1937年より使用禁止[17]
  7. ^ 旧下総御料牧場は栃木県塩谷郡高根沢町に移転した。鞭は現在、三里塚記念公園内にある三里塚御料牧場記念館の収蔵。

出典

  1. ^ a b 『サラブレツド系統種牡馬名簿』 第1巻、日本競馬会、1941年、163-164頁。 
  2. ^ 第3篇 下総御料牧場の春 §名馬探訪 Part 2」『広報とみさと99・11』(PDF)447号、富里市〈富里の歴史シリーズ2 §馬匹改良の夜明け〉、1999年11月、14, 15頁https://www.city.tomisato.lg.jp/cmsfiles/contents/0000000/117/199911_3.pdf 
  3. ^ a b c d e 『日本ダービー25年史』 1959, pp. 37
  4. ^ a b c 日本競馬会 1942, p. 163, NDLJP:1067255
  5. ^ 『サラブレッド系種牡馬名簿』 第1巻、昭和16年、日本競馬会。NDLJP:1067255。。 
  6. ^ 『登録馬名簿』 1943
  7. ^ 『中央競馬年鑑』昭和43年、日本中央競馬会、1969年。NDLJP:2526535。「種牡馬(馬名得正):昭1 トウルヌソル 3,500 4,41250 特払 9.50 1 | 種正 12.11 朝鮮蘭谷牧場」 国立国会図書館デジタルコレクション (参照 2025-06-30)
  8. ^ 木下 2011, p. 271, 「トウルヌソル」
  9. ^ 『日本ダービー50年史』 1983
  10. ^ 日本競馬会 1942, p. 29(コマ番号:22 0022.jp2)
  11. ^ 日本競馬会 1942, p. 595(コマ番号:308 0308.jp2)
  12. ^ 種正(タネマサ)(前名Young Man's Fancy)[10][11]
  13. ^ 『競馬新読本』 1947, p. 143-(コマ番号:78 0078.jp2-), 「第3章 名馬物語 §18. 名馬の賞金獲得高」
  14. ^ 『日本ダービー50年史』日本中央競馬会、1983年、37頁。 
  15. ^ a b 『日本ダービー25年史』 1959, p. 96
  16. ^ a b c d 『競馬新読本』 1947, p. 146-148, 「第3章 名馬物語 §19. トクマサ快勝の因」
  17. ^ 『優駿』2013年5月号、12頁。 
  18. ^ 『競馬新読本』 1947, p. 55-, 「16. 雨に強い馬、弱い馬」
  19. ^ 競馬倶楽部時代の競走蹄鉄” (PDF). 日本中央競馬会. 2021年11月23日閲覧。
  20. ^ 佐藤正人『わたしの競馬研究ノートの 15』日本中央競馬会、中央競馬ピーアール・センター(頒布)、1991年12月、18頁。doi:10.11501/12441142国立国会図書館書誌ID:000002154972 
  21. ^ 神翁顕彰会 1963, p. 7, 「トウルヌソル」
  22. ^ 『昭和11年春季 競馬成績書』帝国競馬協会、1936年、179頁。 
  23. ^ 『競馬新読本』 1947, p. 24-, 「6. 血統の研究」
  24. ^ 『競馬新読本』 1947, p. 117-, 「母系と優秀な産駒」

参考文献

主な執筆者、編者の順。

  • 日本中央競馬会『日本ダービー25年史』日本中央競馬会、1959年、37, 96頁。 
  • 『サラブレッド血統書』 第1巻、日本競馬会、昭和16年。NDLJP:1067256 国立国会図書館デジタルコレクション。
  • 『登録馬名簿』(昭和18年1月31日現在)日本競馬会、昭和18年。NDLJP:1125936  国立国会図書館デジタルコレクション (参照 2025-06-30)

関連資料

  • 『登録馬名簿』(昭和17年8月10日)

外部リンク




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