テンソル積の環構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 15:31 UTC 版)
「体のテンソル積」の記事における「テンソル積の環構造」の解説
「多元環のテンソル積」および「テンソル積」も参照 一般論を得るためには K ⊗N L に(単に N-線型空間同士のテンソル積というだけでは不十分なので)環構造を入れて考える必要がある。すなわち、N-線型空間としての構造(和とスカラー倍)に加えて、生成元同士の積が ( a ⊗ b ) ( c ⊗ d ) := a c ⊗ b d {\displaystyle (a\otimes b)(c\otimes d):=ac\otimes bd} となるように積が定義できる(実際この式は各変数に関して N-線型ゆえ、テンソル積の普遍性により、生成元の上で考えたこの積はテンソル積空間全体で定義された双線型な積に拡張できる)。これによりテンソル積空間上に環構造が定まり、K ⊗N L は体のテンソル積 (tensor product of fields) と呼ばれる可換 N-代数になる。 体のテンソル積の環構造は、K, L をともに、N の適当な拡大体へ埋め込むすべての方法を考えることによって調べることができる。注意すべき点として、このテンソル積構成は共通の部分体 N の存在は仮定するが、K と L を部分体として含む共通の拡大体 M の存在はアプリオリには仮定しない(これは合成体構成では仮定していたことである)。K と L をそのような体 M に埋め込む(それを具体的に α: K → M, β: L → M と書く)ときはいつでも、 γ ( a ⊗ b ) = ( α ( a ) ⊗ 1 ) ⋆ ( 1 ⊗ β ( b ) ) = α ( a ) . β ( b ) {\displaystyle \gamma (a\otimes b)=(\alpha (a)\otimes 1)\star (1\otimes \beta (b))=\alpha (a).\beta (b)} を満たすように環準同型 γ: K ⊗N L → M が導かれる。この γ の核はテンソル積環の素イデアルであり、また逆に、このテンソル積環の任意の素イデアルは N-代数の(分数体の中で)整域への準同型を与え、したがって K と L の N(のコピー)の拡大としてのある体への埋め込みを提供する。 このようにして K ⊗N L の構造を解析できる: 原理的には 0 でないジャコブソン根基(すべての素イデアルの共通部分)があるかもしれない - そしてそれによる商を取った後 K と L の様々な M への N 上の すべての埋め込みの積について話すことができる。 K と L が N の有限拡大の場合、状況は特に単純である、なぜならばテンソル積は N-代数として有限次元である(したがってアルティン環である)からである。すると R が根基であれば ( K ⊗ N L ) / R {\displaystyle (K\otimes _{N}L)/R} を有限個の体の直積として持っていると言うことができる。各そのような体はある拡大 M における K と L に対する(本質的に相異なる)体埋め込みの同値類の代表元である。
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