タンパク質単独仮説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 16:31 UTC 版)
プリオンが発見される以前、全ての病原体は核酸によって自己複製を行うと考えられていた。「タンパク質単独仮説 protein-only hypothesis」によれば、タンパク質構造が核酸の助けによらずに自己複製する能力を備えているとされる。この仮説は発表当初、複製情報の中心的運搬体が核酸にあると記述するいわゆる「分子生物学のセントラルドグマ」と矛盾するとして、議論を醸した。 タンパク質単独仮説を支持する証拠に以下のものがある。 プリオン病と決定的な関係を持つウイルス粒子、細菌、菌類が見つかっていない。 プリオンの感染性と決定的な関係を持つ核酸が見つかっていない。また、感染性因子はヌクレアーゼ耐性を有する。 感染に対して免疫反応が認められない。 PrPScをある種の細胞から別の種の細胞に実験的に感染させると、レシピエント細胞の種のアミノ酸配列を有したPrPScが出現する。これはドナー由来の感染性因子がそのまま複製した訳ではないことを示唆する。 PrPScとPrPCの間に、アミノ酸配列の違いはない。従って、「PrPSc特異的」な核酸とはredundantな概念である。 家族性のプリオン病は、PrPの遺伝子に変異を有する家系に認められる。また、PrPに変異を導入したマウスは、感染が起こらないように管理された環境においても、プリオン病を発病する。 PrPCを欠損した動物はプリオンに罹患しない。
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