ソフトウェア特許と機能的クレーム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/13 15:16 UTC 版)
「ソフトウェア特許」の記事における「ソフトウェア特許と機能的クレーム」の解説
「ソフトウェア特許」について、誰しもが受け入れられる定義や、何が正しいか、そうでないかを定義づける統一的な規定が存在しない。これは、ソフトウェア特許における「機能的クレーム」が原因であると考えられる。 米国においては、請求項の記載が、有用で(useful)、具体的で(concrete)、実体的な(tangible)技術的要素については特許可能性があることが明確化されている。 欧州においては、請求項の記載と明細書の全体から、その発明に技術的な構成が含まれているかが重要視される。技術的効果・技術的寄与を備える構成については、特許可能性があることが明確にされている。 日本においては、発明は特許法第2条の「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」であることを要し、コンピュータソフトウェア審査基準において、「ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されている」ことを要する旨が定義されている。 これらの上記の定義においては、請求項の記載が発明になりえるかといったことを判断するのには役に立つが、ソフトウェア特許における「機能的クレーム」において、実体的に示される技術的思想が、どのような対象(客体)に対して権利を及ぼすかを明確に判断することが著しく困難である。その意味で、審査結果と権利範囲の効果は全く異なるものである。 たとえば、多くの分野の技術的思想においても、ソフトウェア的な「機能的クレーム」が含まれることが多い。そして、この一般的な特許とソフトウェア特許との間に明確な区別をする事は困難であり、この機能的クレームにおいては、純粋に機械的な手段や、電子的な手段、あるいは方法的な手段のうち、何によって実現されるものなのかが不明確であることが多く、その技術的な実体も不明確であることが多い。 加えて、もしあるソフトウェアが、いわゆる等価原理、ないしアナログ下で、ソフトウェアと明確な区別をする事が難しい形で使われるとするなら、ソフトウェアを必要としない手段を含む特許を侵害する可能性もあり得るということである。(たとえば、ソフトウェアがデジタルシグナルプロセッサ化(DSP化)されたとしたら、ハードウェアとして認識される可能性は大きくなる。) ソフトウェア特許とは、どのような実体によって、技術的と認められるものであるべきか、また、願望的な機能のみを記載することが、果たして、本当に技術的であるといえるのであるかについては、権利の正当性において、厳密な判断が必要であろう。
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