スネル報告書とその評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/19 16:03 UTC 版)
「パシフィック電鉄」の記事における「スネル報告書とその評価」の解説
スネルの陰謀説は、日本においても「アメリカの路面電車は自動車会社が潰した」という形で広く伝わっている。しかし、この話をそのまま事実として受け止めることには問題がある。 まず、スネルの報告書(邦訳『クルマが鉄道を滅ぼした』)は誤りの多い本である。スネルはパシフィック電鉄の批判に当たって、"The Electric Interurban Railways in America" という本を参考にし、そこから「(GM支配下の)バス会社による電鉄会社の買収」の証拠を見出したとしているが、引用の過程においてシカゴ郊外の都市鉄道とワシントン州の地方鉄道を取り違えるなどの初歩的なミスが多く、彼がこの本から見出したと言うという事実はそういったミスの中から生まれた虚構に過ぎなかった。 また、文中に述べられたパシフィック電鉄の路線の一部がGM子会社のバス会社であるパシフィック・コーチ・ラインズに譲渡されたのは事実であったが、彼はその事実を正確に理解していなかった。パシフィック電鉄がこの会社に譲渡した路線は、ロサンゼルス北方の町グレンデールの市内路線の数kmで、もともと蒸気鉄道路線との連絡線として建設されたものを旅客営業に用いたものであったが、運行本数、利用客数ともに少ない盲腸路線に過ぎなかった。この路線の廃止時に、バス路線の運行効率化を図るために、バスを自社の直営とせずこの地域でバス事業を営んでいたパシフィック・コーチ・ラインズに譲渡したというのが真相であったのだが、スネルはこれを自動車会社を後ろ盾とした大規模な陰謀と誤解していたのである。 スネルの告発を検討する公聴会においては、"The Electric Interurban Railways in America" の著者であるUCLAのジョージ・ヒルトン教授が発言したが、ヒルトン教授は発言の中で、スネルの報告書を事実をあまりにも単純化しすぎていると批判した。
※この「スネル報告書とその評価」の解説は、「パシフィック電鉄」の解説の一部です。
「スネル報告書とその評価」を含む「パシフィック電鉄」の記事については、「パシフィック電鉄」の概要を参照ください。
- スネル報告書とその評価のページへのリンク