スィッズとスェヴェリスの物語における2匹の竜
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「赤い竜 (ウェールズの伝承)」の記事における「スィッズとスェヴェリスの物語における2匹の竜」の解説
ブリテン王スィッズ (Lludd) は恐るべき唸り声が五月祭前夜のたびに鳴り響く原因をつきとめるべく、弟のフランス王スェヴェリス (Llefelys) に尋ねた。スェヴェリスは、兄上の国の竜に他国の竜が襲いかかろうとしていて、そのためにブリテンの竜が恐ろしい雄たけび声を上げているのだと告げた。スェヴェリスは2匹のドラゴンを封印する策を進言した。ブリテン島の東西南北の中心地に穴を掘り、そこに蜂蜜酒を大量に注いた桶を置き、その上に絹の布をかぶせるという策略であった。そうして準備を整えて見張っていると、相争う2匹の竜の姿が見えたが、そのうち激しい戦いに疲れ切って両者とも穴の中の桶の底に落ちていった。ドラゴンたちは蜂蜜酒の中でやがて酒に酔い、深き眠りについた。スィッズ王はこれを見て絹の布で2匹を包み、さらに石でできた箱に閉じ込め、地中深くに封印した(この場所は後にディナス・エムリスと呼ばれ、ヴォーティガンが砦を築いた伝説の舞台となる)。こうして竜は2匹とも封印されることとなった。 以上の話は、『マビノギオン』の「スィッズとスェヴェリスの物語(英語版)」で語られる3つの災禍の2番目に当たる。シャーロット・ゲストによるマビノギオン英訳では、この物語の中でディナス・エムリス(英語版)に封じ込められることになる2匹の竜は、『ブリトン人の歴史』(9世紀)に登場するヴォーティガンと赤白2頭の竜の話(第42章)と関連があると解説されている。ヴォーティガンと2頭の竜の話はモンマスのジェフリーの『ブリタニア列王史』(12世紀)に翻案された形で取り入れられたが、『ブリトン人の歴史』では生贄にされそうになる少年はアンブロシウスという人物であるのに対し、『ブリタニア列王史』では代わりにアンブロシウスの名をもつマーリンが登場する(第6部17章から第7部3章まで)。『ブリタニア列王史』および『ブリトン人の歴史』のヴォーティガンと二頭の竜のエピソードでは、片方がブリトン人の赤い竜、もう片方がサクソン人の白い竜とされたが、「スィッズとスェヴェリスの物語」に出てくる2頭の竜の話では、ドラゴンの色についての言及はなく、プリダイン(ブリテン)の竜に襲いかかろうとしているもう一匹の竜についても他国の民の竜としか書かれていない。
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