ジークムントおよびヴォルスング一族との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/21 16:53 UTC 版)
「ジークフリート」の記事における「ジークムントおよびヴォルスング一族との関係」の解説
シグルズがヴォルスング族を経由してオーディンの血を引いているという記述は『ヴォルスンガ・サガ』にしかないが、これが古くは大陸と北欧で共通していた伝承なのか、スカンディナヴィアの資料でのみ発展した要素であるのかははっきりしない。アングロ・サクソン族やフランク族、あるいは他の西ゲルマン部族においても、たいてい王族の系譜はヴォータンやガウトのような神話上の存在を始祖に置いていることから考えれば、シグルズが神々の系譜上に置かれることは伝承として古い可能性がある。ヴォルフガング・ハウブリッヒは、アングロ・サクソンの国デイラ王国の系譜にはsigi-から始まる似たような名前が多い上に、その始祖をヴォータンとしていることに触れている。 大陸でも北欧でもジークフリートの父とされるジークムント(シグムンド)とジークフリートの関係についてはさまざまな解釈がある。注目すべきは、スカンディナヴィアにおいてシグルズは古くても11世紀までしか遡れないが、シグムンドの名前はスカンディナヴィアやイングランドでより古い文献(『ベーオウルフ』など)に確認できることである。『角質化したザイフリート』を代表として、北欧でも大陸でも幼少期のジークフリートを親を知らぬ孤児として森に配置していることからみて、おそらくジークムントを父とする伝承は後世発達したものであると考えられる。カタリン・ツァラヌは、孤児ジークフリートに貴種としての性格を与えるためだけにジークムントの息子とされたのだと述べている。これは物語上では、父の死の復讐としてフンディングの息子たちを殺すという筋として立ち現れていることになる。 ジークムントに関する古英語の伝承の存在が事態をさらにややこしくしている。『ベーオウルフ』では、ジークムントが竜を殺し財宝を得ているのである。これは、ジークフリートの物語の珍しい一変種とみることもできるが、もともと竜殺しはジークムントであって、その事績が息子に移されたとみることも可能ではある。そもそもはジークムントとジークフリートは同一の存在で、後に父と息子に分かたれたという説もありうる。ジョン・マキネルによれば、ジークフリートは11世紀半ばになるまで竜殺しとはされていなかったという。一方、ハーマン・ライカートは、2つの竜殺しは根源的に関係がない別のものであると論じている。つまり、ジークフリートは若い頃に英雄へのイニシエーションとして竜を殺したのであり、老いてから竜を殺したジークムントの物語を同様に解釈することはできないとする。
※この「ジークムントおよびヴォルスング一族との関係」の解説は、「ジークフリート」の解説の一部です。
「ジークムントおよびヴォルスング一族との関係」を含む「ジークフリート」の記事については、「ジークフリート」の概要を参照ください。
- ジークムントおよびヴォルスング一族との関係のページへのリンク