末期王朝時代のトート神像(ウィーン美術史美術館 )
ヒヒ型のトート神像(ルーヴル美術館 )
トート (ギリシャ語 :Θωθ;トト 、テウト [2] とも)は、古代エジプト 神話 の知恵を司る神 。古代エジプトでの発音は、完全には解明されていないがジェフティ (エジプト語 :ḏḥwty;ジェフゥティとも )と呼ばれる。
聖獣は、トキ とヒヒ 。数学や計量を司る女神であるセシャト を妻(または妹)としている。
信仰 主にヘルモポリス (ギリシア人が名付けた「トートの町」の意味)で信仰された。
多くの信仰を集め、長い間、様々な広い地域で信仰されたため、知恵の神、書記の守護者、時の管理人、楽器の開発者、創造神などとされ、王族、民間人問わず信仰された。そのためある程度の規模を持つ神殿には、トートのための神殿が一緒に作られている。
またエジプトの外でも信仰を受け、新バビロニア や古代ローマ帝国 でも信仰された。
容姿 トキかヒヒのどちらかの姿で表される。
また信仰の中心とされたヘルモポリスは、上エジプト、下エジプトの両方に2つあった。ここから元々は、同名の二柱の神が存在していて次第に習合したとも考えられる。
神話 多くの信仰を集めた神のため、その神話も多岐に渡る。さらに長い期間信仰されたため、多くの役割を持っている。創世神の一人であり、言葉によって世界を形作るとされる。
誕生 誕生について諸説ある。
ヘリオポリス神話において世界ができた時、自らの力で石から生まれたとされる説が有名である(この場合、早く生まれたために足が悪くなったとされる)。
その他にもセト の頭を割って誕生した、またオシリス の末弟という神話もある。
ヘルモポリス神話において世界は、八柱神(オグドアド )によって作り出されたとされている。その後この神々が眠りにつくが世界が終焉を迎えた時、また新しい世界を生み出すために目覚めさせなければならない。この役目を請け負ったのがトートだとされる。あるいは、トートが創造神とされた。
書記の守護者として 神々の書記であり、ヒエログリフ を開発したことから書記の守護者とされた。また死者の審判においては、全ての人の名前や行動を生前の内から記録しているとも、アヌビス が死者の心臓を計りにかけ、トートは、死者の名前を記録する作業を行うともいう。王が即位した時には、その王の名前をイシェド と呼ばれる永遠に朽ちない葉に書き記す。
時の管理者として ヌト がオシリス たちを生む前にラー が「その子供たちは災いを生む」と言って子供を産むことを禁じた。困ったヌトは、トートに相談した。そこでトートは月と賭けをして勝ち、時の支配権を手に入れた。そこで太陽神の管理できない閏日を5日間作った(太陰暦 と太陽暦 の差)。そしてヌトは、この間にオシリス 、セト 、大ホルス 、イシス 、ネフティス の5柱を生んだ。(ホルスを含まない4兄弟の場合もある。)
そして月としての属性を得たため太陽の沈んだあとの夜の時間は、トート神が太陽にかわって地上を守護するとされる。
魔法使いとして トートは、魔法 に通じておりイシスに数多くの呪文を伝えた。病を治す呪文も熟知していることから医療の神の面もある。ホルスに頭を切り落とされたイシスを牝牛の頭に挿げ替えて復活させたのはトートである。さらに彼は魔法の書物を書き、この世のあらゆる知識を収録する42冊の本も書いたと考えられている[3] (「トートの書 」を参照)。
「大いなる導きヒヒ 」と呼ばれると共にヒヒ の姿で描かれることもある。これは、ヒヒを聖獣とする知恵の神ヘジュウルとの習合による物である。ちなみにヒヒは、魔術 の象徴でもある。またラーを補佐することから「ラーの心臓 」とも呼ばれる。
その他 楽器の開発者とされるなど、他にも神話上に多くの役割を持っている。ピラミッド の建設方法を人間に伝えたのもトトであるとされる。
シナイ半島 では、トルコ石や銅鉱石を採掘に行ったエジプト人の守護者として、「遊牧者の主 」、「アジア人を征服するもの 」と呼ばれている。このシナイでの信仰は、ハトホル よりも古くスネフェル 王の時代からシナイ半島の碑文に名前が登場している。
古代エジプト以外でのトート トートは、ギリシア神話のヘルメス神 と同一視された。ヘルモポリスの名前もここに由来する。
ここからローマ帝国時代にヘルメス・トリスメギストス となった。またヘルメス思想 では、エジプトの知恵がタロット に残されたと考えられたためタロットは、しばしば「トートの書」とも呼ばれた。
近・現代においてもトート(=ヘルメス)はオカルト で重要な存在であり、アレイスター・クロウリー は「トートのタロット 」を制作した。またタロットに関する論文である『トートの書(英語版 ) 』を執筆している。ただし、この本自体は、トート神とはあまり関係がない。
脚注
^ Hieroglyphs verified, in part, in (Budge The Gods of the Egyptians Vol. 1 p. 402) and (Collier and Manley p. 161)
^ 『エジプト神話』157頁で確認できる表記。
^ 『エジプト神話』160頁。
参考文献
関連項目
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