シュガーのようにうっすらと雪アベマリア
作 者 |
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季 語 |
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季 節 |
冬 |
出 典 |
ある雪の日に |
前 書 |
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評 言 |
お歳暮やクリスマスケーキのカタログが届くのが年々早くなるなと思っていたら、日本だけのことではないらしい。小売業の年間売り上げの多くをクリスマスシーズンが占めるイギリスでは、クリスマス商戦の前倒し傾向が年々強くなっていると、新聞で読んだ。ロマンティックなイメージとは裏腹、あちらでもこちらでも、クリスマスシーズンは書き入れ時だ。 そんな現実世界をまさに粉砂糖のようにうっすらと覆った、静かな景色の一句である。読むときはやさしくやさしく、決して壊さぬよう声に出さねばならない。河村氏とはここ数年、山口県で開催される俳句大会でご一緒する機会を得ており、句集『ある雪の日に』はその縁で頂戴した。句集読者の大部分は俳句同好者であるわけだが、この句集はあくまで俳句に縁のない人々を対象に、河村氏が「ささのはささら」という著者名でディレクションされている。難しい季語や漢字には欄外にふりがな、簡単な解説もある。先輩をつかまえて恐縮だが、穏やかな風貌の奥底に気骨稜稜。その河村氏の違った一面を拝見できたこの句集は大のお気に入りである。「豊かなイメージの喚起できる句であるか否かが大切」とあとがきにあるが、揚句「シュガーのようにうっすらと雪」とは、まさにそれぞれの人に、その人の感じるうつくしさを豊かにイメージさせるだろう。 「アベマリア」の美しい旋律が雑踏に消え入るように、雪もやがて融け、現実の姿がふたたび露わになることを私たちは知っている。だからこそ、「シュガーのように」はかない美しさのこの一句に、心惹かれるのだろう。 |
評 者 |
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備 考 |
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