シャプレーの講演
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/14 10:00 UTC 版)
「大論争 (天文学)」の記事における「シャプレーの講演」の解説
シャプレーの講演は、自身が書いた原稿が残っているので、そこから内容を知ることができる。 まずシャプレーは、天文学の基礎的な説明に多くの時間を費やし、銀河系の構成や、恒星、星雲などについて、望遠鏡で撮ったスライド写真を見せながら解説した。また、「光年」という用語の意味についても説明した。 続けて、球状星団までの距離を求める方法について述べた。ここでシャプレーが説明した方法は、これまで自身が主に研究していたケフェイド変光星を使った方法ではなく、B型青色巨星を使った方法だった。当時B型青色巨星は、太陽系の近くにも、球状星団の中にも見つかっており、太陽系近くの青色巨星は太陽の200倍の明るさがあった。シャプレーは、球状星団内にあるB型青色巨星も実際の明るさはこれと同程度であるという仮説をたてて球状星団までの距離を計算し、ヘルクレス座にある星団までの距離を3万5000光年と見積もった。さらに、この星団の明るさと比較することで他の星団の距離も求めた。そしてその結果をふまえ、銀河の大きさは約30万光年で、暗く見える星団はこの銀河の縁にあり、太陽は銀河の中心から離れた位置に存在すると主張した。この結果は、自身によるケフェイド変光星の調査から得られた結果と同一である。 シャプレーが講演でケフェイド変光星の調査結果でなく、B型青色巨星の研究結果のほうを取り上げた理由は、当時、シャプレーによるケフェイド変光星の研究には批判があったためだと考えられている。元々リービットが発見したケフェイド変光星の光度と変光周期の関係は、小マゼラン雲にある、変光周期が数日の変光星から求めたものであった。これをシャプレーは球状星団にある変光星にあてはめたのであるが、球状星団内にある変光星の周期は数時間で、小マゼラン雲内のものとは異なっていた。そのため、この関係をそのままあてはめてよいのかについては、当のシャプレー自身も気になっていたのである。 シャプレーは講演の中で、仮にケフェイド変光星を使った方法を取りやめたとしても、B型青色巨星を使えば、星団までの距離や天の川銀河の大きさについて同じ値が得られると述べた。 シャプレーは講演の終わり近くに、渦巻星雲について簡単に触れた。そこではヴァン・マーネンの測定結果を紹介し、天の川銀河がシャプレーの考えるような大きさであるならば、渦巻星雲が天の川銀河とは別の銀河であると考えることはできないと主張した。最後にシャプレーは、銀河系の外にある恒星集団について、このような銀河は発見されていないと述べた。
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