サハロフの条件の下でのGUTバリオン数生成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 15:13 UTC 版)
「バリオン数生成」の記事における「サハロフの条件の下でのGUTバリオン数生成」の解説
1967年、アンドレイ・サハロフはバリオン生成相互作用が物質と反物質を異なる速度で生成するために満たす必要がある3つの必要条件を提案した。これらの条件は、そのころ起きた宇宙背景放射および中性K中間子系におけるCP対称性の破れの発見に触発された。3つの必要な「サハロフ条件」は バリオン数 B {\displaystyle B} の破れ C対称性とCP対称性の破れ 非熱平衡の相互作用 である。バリオン数の破れは明らかに反バリオンよりも過剰にバリオンを生成するために必要な条件である。しかし、C対称性の破れも必要であり、これにより反バリオンよりも多くのバリオンを生成する相互作用がバリオンよりも多くの反バリオンを生成する相互作用によって相殺されなくなる。CP対称性の破れも、なければ左巻きのバリオンと右巻きの反バリオンが同数、左巻き反バリオンと右巻きバリオンが同数生成されるため同様に必要である。最後に、相互作用が熱平衡から外れている必要があり、そうでなければCPT対称性によりバリオン数が増減する過程の間の埋め合わせが保証されるためである。 現在、バリオン数の保存が摂動的に破られている粒子相互作用の実験的証拠はない。このことは観測されたすべての粒子の反応が前と後で等しいことを示唆しているようである。数学的には、(摂動)標準模型のハミルトニアンを持つバリオン数量子演算子の交換子はゼロである。 [ B , H ] = B H − H B = 0 {\displaystyle [B,H]=BH-HB=0} .しかし、標準模型は非摂動的にのみバリオン数の保存を破ることが知られている(グローバルU(1)アノマリー)。バリオン数生成におけるバリオンの破れを説明するためにそのような事象(陽子崩壊を含む)は、Xボソンなどの仮想の重いボソンを介して大統一理論(GUT)および超対称性(SUSY)模型で生じる可能性がある。 2番目の条件であるCP対称性の破れは1964年に発見された(直接的なCPの破れ、つまり崩壊過程におけるCP対称性の破れは1999年に発見された)。CPT対称性のため、CP対称性の破れはT対称性を必要とする。 平衡ではない崩壊のシナリオでは、最後の条件はバリオン非対称性を生成する反応の速度は宇宙の膨張速度よりも小さくなければならないことを述べている。この状況では急速な膨張により対消滅の発生が減少するため、粒子とそれに対応する反粒子は熱平衡に達しない。
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