コロナ・グラエカ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/18 08:33 UTC 版)
「聖イシュトヴァーンの王冠」の記事における「コロナ・グラエカ」の解説
コロナ・グラエカは幅5.2cm、直径20.5cm。円環部の後部の、カッティングされた2つのアクアマリンは、マーチャーシュ2世(神聖ローマ皇帝マティアス)によって補充されたものである。正面の絵は「全能者ハリストス(イエス・キリストの別名)」が描かれている。イエスの左右には大天使ミカエルとガブリエルが描かれており、その半分のサイズで殉教者聖ゲオルギオス、聖ディミトリオス、聖コスマ、聖ダミアノがともに描かれている。 円環部の後部には東ローマ帝国皇帝ミカエル7世ドゥーカスが描かれている。その下左側にはコン(スタンティノス)と刻まれた人物が描かれているが、これはミカエル7世ドゥーカスの子で共同皇帝をつとめたコンスタンティノス・ドゥーカス(英語版)、もしくはその弟コンスタンティン・ドゥーカス(英語版)のいずれかであると考えられている。その右にはハンガリー王ゲーザ1世(1074年 - 1077年)が描かれ、「Geovitsas pistos krales tourkias」(誠実なTurksの王)と書かれている。当時、ハンガリー人は東ローマ帝国でTurksと呼ばれていた。これは東ローマ帝国の階級制度によるもので、皇帝とハンガリー王の間には明確な区別があり、ゲーザ1世よりもむしろ聖人や東ローマ皇帝のほうが重く見られていたのである。このことは、ハンガリー王の名前が黒や青文字で書かれているのに対し、皇帝の名前が赤で書かれていることからもうかがえる。 全能者ハリストスとミカエル7世の前後の飾り板は、それぞれ別の方法で接着されている。全能者ハリストスの板が縁にフィットしているのに対して、皇帝の飾り板は形が合わない。板のフレームを上方に折りたたんで、縁にくぎづけにすることで接着している。したがって、ミカエル7世のエナメル画は、王冠のオリジナルデザインには含まれておらず、どこか別の場所で使用されていたものだと考えられる。 コロナ・グラエカの、湾曲して先がとがった飾り板は東ローマ帝国における女帝の冠に特有の形である。すなわち、コロナ・グラエカは女性用の王冠だったのである。 コロナ・グラエカはミカエル7世から、ゲーザの王妃であるシナデネ(後に東ローマ皇帝となるニケフォロス・ボタネイアテスの姪)に贈られた冠が元である。その時贈られたのは新品の王冠ではなく、皇帝の宝物から選ばれた王冠を造り直したものであると考えられている。古い人物が描かれていたか、ハンガリーの女王にはふさわしくない絵だったのか、ともかく古いエナメル画が取り除かれ、造り直された。その結果、現在のような形のコロナ・グラエカがハンガリーに贈られたのである。
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