ゲンジボタルの移入問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/21 14:08 UTC 版)
「ゲンジボタル」の記事における「ゲンジボタルの移入問題」の解説
ゲンジボタルは、その発光の強さや飛翔の優雅さなどから、日本のホタル類の中でも人目を引きやすい。そのため、観光や自然回復をアピールする目的で、しばしば他地域から人為的に移入されてきた。 ゲンジボタルは1種 (Luciola cruciata) であり、種より下位の亜種には分けられていないが、1系統ではなく、遺伝的生態的な地理的変異がある。1993年に日本が締結した生物多様性条約 (Convention on Biological Diversity) 第2条には、「生物多様性」の定義として、種内 (within species) 多様性も明記されている。この国際条約に基づいて制定された日本の生物多様性基本法(平成20年6月6日施行)第2条も同様である。このように、種より下位の分類群の多様性も保護されるべきであることは世界共通の認識となりつつあり、生物多様性の保全の観点からは、在来ゲンジボタルと異なった系統のホタルの移入は避けられるべきである。全国ホタル研究会では安易なホタル移入を制限するために、ホタル移入に関する指針を定めている。 2008年に全国ホタル研究会に寄せられた全国各地(青森県から宮崎県67か所)のゲンジボタル発生状況を見ると、1位は長野県辰野町松尾峡で16020匹、2位は山口市で1155匹(いずれも1日当り)となっており、松尾峡は国内最大のゲンジボタル発生地である。しかしながら、松尾峡のゲンジボタルは近畿地方から人為的に移入された外来種であることが判明しており、本来生息していた在来種とは発光周期も分子系統も異なっている。 ゲンジボタル移入に関しては、その影響を研究することも大事だが、まず安易な放流を中止することが求められており、文部科学省や環境省がゲンジボタル移入の問題点を一般に周知させるべきだ、という意見も出されている。一部地域では、ゲンジボタル移入の問題点を指摘された後、移入ゲンジボタルを排除し、本来生息していたのと同じ系統のゲンジボタルを増やそうという試みも始まっている。
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