エリクソン神話
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/14 09:49 UTC 版)
催眠療法家であるミルトン・H・エリクソンは、1930年頃から古典的なアプローチとは異なる手法を催眠に取り入れ、心理療法全般に多大な影響を与えた。しかしエリクソンが亡くなった後、エリクソン催眠という特別な催眠が存在する、エリクソン催眠を行う者は全てエリクソニアンである、エリクソン催眠は全てブリーフセラピー(短期療法)である、エリクソンといえば間接暗示である、といったいわゆるエリクソン神話が広まってしまった。 エリクソンが催眠において斬新な技法を取り入れたことは事実だが、ある手法を画一的に用いていたというわけではない。クライアントの問題に合わせて治療方法を極めて柔軟に変化させていたのである。例えば、エリクソンは間接技法(明確に暗示を与えるのではなく、暗示を日常起きる現象に関連付けたり、催眠誘導によって起こる反応を関係のない場面で言ったりして暗示を遠回しに与える技法)を治療抵抗のあるクライアントのみに用いており、通常は直接技法を使用していた。時には権威的な暗示を用いることすらあったという。 なお、治療方法を柔軟に変化させたというのは、催眠治療に理論が不要であることを意味するものではない。実際エリクソン自身も、他学派の学者と催眠理論に関する意見を交換していた。高石はエリクソンの態度に関して超理論(transtheoretical)、すなわち従来あった理論を超越しようとしていたのではないかと主張している。 エリクソン神話が広まった主な原因として、エリクソンが晩年行ったセミナーが挙げられる。若い治療者の希望に応えて行ったものだったが、その内容は過去の治療成功例をひたすら繰り返すものだった。
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