エネルギーバンド図
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 06:40 UTC 版)
「MOSダイオード」の記事における「エネルギーバンド図」の解説
p型シリコンMOSキャパシタのエネルギーバンドを考える。熱平衡状態にあるMOSキャパシタでは、金属ゲートと半導体との仕事関数が異なるため、酸化物と半導体表面のバンドが曲がる。その結果フェルミ準位が価電子帯から離れるため空乏層が形成する。 p型MOSキャパシタに負のゲート電圧をかけると、シリコン基板のバンドが平らになる電圧が存在する。このときの電圧 V F B {\displaystyle V_{FB}} をフラットバンド電圧と呼ぶ。この状態ではシリコン基板中に電界が存在していない。さらに負の方向へ電圧をかけると、p型基板の自由可動電荷である正孔がゲート界面に引き付けられ、シリコンのバンドが上に曲がることによってフェルミ準位が価電子帯に近づき、半導体表面では正孔が溜まる。これを蓄積と呼ぶ。 逆にMOSキャパシタに正の方向へ電圧を加えると、バンドが下に曲がることでフェルミ準位は価電子帯からさらに遠ざかり、正孔が移動することで空乏が進む。またある電圧 V t h {\displaystyle V_{th}} を超えると、フェルミ準位が伝導帯に近づくことで少数キャリアである電子が半導体表面に誘起される。これを反転と呼び、半導体表面の少数キャリアの層を反転層と呼ぶ。反転が始まる電圧 V t h {\displaystyle V_{th}} をしきい値電圧と呼ぶ。 実際にはフラットバンド電圧を超えてゲート電極の電圧を上げていくと、p型シリコン側の可動電荷である電子が追いやられて界面近くのシリコンが空乏化し、その空乏層に残された不純物イオンが固定電荷としてゲート電極による電界を受け止めるが、この段階では、まだ十分な電子が界面に誘起されていない。反転層として十分な電子が現れるのは、空乏層の固定電荷であるアクセプタ原子の密度と同等の電子密度になった場合であり、そのためには界面での(n型方向の)フェルミ準位が基板の(p型方向の)フェルミ準位とほぼ等しくなる必要がある。 すなわち、p型基板のフェルミ準位がバンド中央の真性フェルミレベルから測って − ϕ F {\displaystyle -\phi _{F}} だとすると、界面が反転するにはバンドが 2 ϕ F {\displaystyle 2\phi _{F}} だけ曲がる必要があると言う事になる。一旦反転層に電子が蓄積されるようになると、それ以上に高い電圧をゲート電極に印加しても反転層の電子密度が高くなるだけで、空乏層の伸びはほぼ無視できるので余分な電圧はゲート絶縁膜に吸収されると考えてよい。従って、閾値電圧 V t h {\displaystyle V_{th}} はゲート絶縁膜にかかる電圧 V o x {\displaystyle V_{ox}} とシリコンのバンドの曲がり分 − 2 ϕ F {\displaystyle -2\phi _{F}} の合計になる。 現実的には、ゲート絶縁膜中に存在する電荷や界面準位(Qss)によってフラットバンド電圧も変化するので、MOSキャパシタの閾値電圧はその影響も受ける。 接続前 熱平衡(空乏) フラットバンド 蓄積 反転
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