エチレンオキサイドガスとは? わかりやすく解説

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エチレンオキシド

(エチレンオキサイドガス から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/24 03:59 UTC 版)

エチレンオキシド
物質名
識別情報
3D model (JSmol)
略称 EO, EtO
バイルシュタイン 102378
ChEBI
ChEMBL
ChemSpider
ECHA InfoCard 100.000.773
EC番号
  • 200-849-9
Gmelin参照 676
KEGG
MeSH Ethylene+Oxide
PubChem CID
RTECS number
  • KX2450000
UNII
国連/北米番号 1040
CompTox Dashboard (EPA)
特性
化学式 C
2
H
4
O
モル質量 44.052 g·mol−1[2]
外観 無色の気体
匂い ジエチルエーテルのような
密度 0.8821 g·cm−3[2]
融点

−112.46 °C, 161 K, -170 °F [2]

沸点

10.4 °C, 284 K, 51 °F [2]

への溶解度 混和性
蒸気圧 1.46 atm (20 °C)[3]
磁化率 −30.5·10−6 cm3/mol[5]
屈折率 (nD) 1.3597 (589 nm)[2]
1.94 D[4]
熱化学
標準定圧モル比熱, Cpo 47.9 J·mol−1·K−1[6]
標準モルエントロピー So 242.5 J·mol−1·K−1[6]
標準生成熱 ΔfHo −52.6 kJ·mol−1[6]
−13.0 kJ·mol−1[6]
危険性
安全データシート(外部リンク) ICSC 0155
GHSピクトグラム
Hフレーズ H220, H230, H301, H314, H331, H335, H336, H340, H350, H360FD, H372
Pフレーズ P202, P210, P260, P280, P301+P310+P330, P303+P361+P353, P305+P351+P338+P310, P410+P403[8]
主な危険性 発がん性、高い引火性
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド)
Health 3: Short exposure could cause serious temporary or residual injury. E.g. chlorine gasFlammability 4: Will rapidly or completely vaporize at normal atmospheric pressure and temperature, or is readily dispersed in air and will burn readily. Flash point below 23 °C (73 °F). E.g. propaneInstability 3: Capable of detonation or explosive decomposition but requires a strong initiating source, must be heated under confinement before initiation, reacts explosively with water, or will detonate if severely shocked. E.g. hydrogen peroxideSpecial hazards (white): no code
3
4
3
引火点 −20 °C (−4 °F; 253 K) [4]
発火点 429 °C (804 °F; 702 K) [4]
爆発限界 3 to 100%
脱出限界濃度 Ca [800 ppm][3]
NIOSH(米国の健康曝露限度):
勧告曝露限界 Ca TWA <0.1 ppm (0.18 mg/m3) C 5 ppm (9 mg/m3) [10-min/day][3]
半数致死濃度 LC50 836 ppm (マウス, 4 時間)
4000 ppm (ラット, 4 時間)
800 ppm (ラット, 4 時間)
819 ppm (モルモット, 4 時間)
1460 ppm (ラット, 4 時間)
835 ppm (マウス, 4 時間)
960 ppm (イヌ, 4 時間)[7]
関連する物質
関連する複素環 アジリジン
エチレンスルフィド
ボリラン
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
 verify (what is  N ?)
専用コンテナによるエチレンオキシド(液化酸化エチレン)の輸送

エチレンオキシド (: ethylene oxide) は、有機化合物の一種で、三員環の構造を持つ環状エーテルである。

概要

分子式 C2H4O、分子量 44.05 の最も単純なエポキシドである。別名として、エポキシエタン (epoxyethane)、オキシラン (oxirane)、オキサシクロプロパン (oxacyclopropane)、酸化エチレンエチレンオキサイド (ethylene oxide) とも呼ばれ、EOと略称される。IUPAC命名法では、1,2-エポキシエタン (1,2-epoxyethane) が最も一般的。

単体は、エーテル様の臭気を有する無色の気体である。

洗剤ポリエステル繊維など身近なものに使われるエチレングリコールエタノールアミンなどの誘導品を製造する。

また、加熱殺菌により変形の可能性のあるプラスチックを用いた医療用器具の製造において、最終工程の滅菌ガスとして用いられる。(ディスポーザブルの注射器や注射針など)

性質

有機溶媒のいずれにもよく溶ける。立体的なひずみエネルギーにより、特に求核剤に対して反応性が高い。他の有機物質を合成するときの中間体として用いられる。また、医療機器や精密機械を滅菌するために用いられる。猛毒。常温大気圧下の空気中での爆発範囲は3.0 – 100 %である。つまり、空気がなくとも火花や静電気などによって爆発する、分解爆発性を有する。 作業環境における管理濃度は1ppmである。2012年10月1日施行の改正女性労働基準規則[9]の対象物質となる。

合成

工業的には、を担持させたアルミナ触媒のもと、1 – 3 MPa、200 – 300 °Cエチレン酸素とを作用させて合成される。 酸化エチレンの 2016年度日本国内生産量は 867,367 t、工業消費量は 585,077 t である[10]

エチレンオキシドを最初に合成したアドルフ・ヴュルツは、2-クロロエタノールと塩基を用いた(分子内ウィリアムソン合成)。 エチレン過酸化水素、あるいは過酸との反応によっても作ることができる。

反応

エチレンオキシドに触媒として水と反応させるとエチレングリコール (HOCH2CH2OH) が得られる。この反応で水の量を減らせば、ポリエチレングリコール (PEG) が生成する。さらに、水のない条件で酸を作用させるとカチオン重合によりポリエチレンオキシド (PEO) となる。

また、グリニャール試薬 (RMgX) と反応させると加水分解後に第一級アルコール (RCH2CH2OH) となる。3員環の開環によりひずみエネルギーが解放されるため、このほかにもさまざまな求核剤に対するヒドロキシエチル化剤として良い反応性を示す。 アセタール樹脂エピクロロヒドリンゴムなどの原料として利用される。

脚注

  1. ^ International Union of Pure and Applied Chemistry (2014). Nomenclature of Organic Chemistry: IUPAC Recommendations and Preferred Names 2013. The Royal Society of Chemistry. pp. 714. doi:10.1039/9781849733069. ISBN 978-0-85404-182-4 
  2. ^ a b c d e Haynes, p. 3.430
  3. ^ a b c d NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards 0275
  4. ^ a b c Haynes, p. 15.20
  5. ^ Haynes, p. 3.576
  6. ^ a b c d Haynes, p. 5.22
  7. ^ Ethylene oxide”. 生活や健康に直接的な危険性がある. アメリカ国立労働安全衛生研究所英語版(NIOSH). 2025年9月24日閲覧。
  8. ^ Ethylene oxide 387614”. Sigma-Aldrich. 2020年12月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月1日閲覧。 Alt URL
  9. ^ 女性労働基準規則
  10. ^ 経済産業省生産動態統計年報 化学工業統計編

参考文献

  • 野村正勝、鈴鹿輝男 編、「最新工業化学」講談社、2004.



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