イオン結晶の溶解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/03 05:23 UTC 版)
イオン結晶は明確な電荷が存在する為、結晶エネルギーは大きな値を取る。それはイオン結晶の融点が高いという性質にも表れている。イオンに対する水和の度合と水和エネルギーはイオンの種類や電荷量によりそれぞれ異なり、正・負両イオンそれぞれの水和エネルギーの和となる。 例えば塩化銀の融点は455℃、塩化ナトリウムは801℃であり融解エネルギーの点からは塩化銀の方が結晶からイオン対が遊離しやすい。しかし、これは塩化銀の方が共有結合性の寄与が強くなるためである。電解質の溶解度は、主に結晶格子のイオン結合の強度の指標である格子エネルギーと、溶媒中におけるイオンの安定化の指標である溶媒和エネルギーに支配され、その他分子間力などの寄与も加わる。例えば塩化ナトリウムおよび塩化銀の水に対する溶解に関する熱力学的諸量は以下のようになり、塩化銀は水にほとんど溶けないのに対して塩化ナトリウムの方はよく水に溶ける。 MX(s) → M(g) + X(g) (格子エネルギー) M(g) + X(g) → M(aq) + X(aq) (水和) MX(s) + X(g) → M(aq) + X(aq) (溶解) 物質格子エネルギー U {\displaystyle U} 水和エンタルピー変化 Δ H h y d {\displaystyle \Delta H_{hyd}} 溶解エンタルピー変化 Δ H s o l n {\displaystyle \Delta H_{soln}} 溶解エントロピー変化 Δ S s o l n {\displaystyle \Delta S_{soln}} 溶解ギブス自由エネルギー変化 Δ G s o l n {\displaystyle \Delta G_{soln}} 塩化ナトリウム 787.4 kJ mol−1 −783.5 kJ mol−1 3.9 kJ mol−1 43.4 J mol−1K−1 −9.0 kJ mol−1 塩化銀 915.7 kJ mol−1 −850.2 kJ mol−1 65.5 kJ mol−1 33.0 J mol−1K−1 55.7 kJ mol−1
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