アルルのおんな〔‐のをんな〕【アルルの女】
アルルの女
アルルの女
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/10 04:24 UTC 版)

『アルルの女』(アルルのおんな、フランス語: L'Arlésienne[1][2])は、ジョルジュ・ビゼーによる全27曲の付随音楽であり、アルフォンス・ドーデの同名の短編小説『アルルの女』およびそれに基づく戯曲の上演のために1872年に作曲されたものである。付随音楽から編曲された2つの組曲が一般には最も広く知られている。
あらすじ
南フランス豪農の息子フレデリは、アルルの闘牛場で見かけた女性に心を奪われてしまった。フレデリにはヴィヴェットという許嫁がいるが、彼女の献身的な愛もフレデリを正気に戻すことはできない。日に日に衰えていく息子を見て、フレデリの母はアルルの女との結婚を許そうとする。それを伝え聞いたヴィヴェットがフレデリの幸せのためならと、身を退くことをフレデリの母に伝える。ヴィヴェットの真心を知ったフレデリは、アルルの女を忘れてヴィヴェットと結婚することを決意する。2人の結婚式の夜、牧童頭のミティフィオが現れて、今夜アルルの女と駆け落ちすることを伝える。物陰からそれを聞いたフレデリは嫉妬に狂い、祝いの踊りファランドールがにぎやかに踊られる中、機織り小屋の階上から身をおどらせて自ら命を絶つ。
日本語訳(戯曲)
- 『アルルの女』横山正幸訳 福永書店 1926年
- 『アルルの女』中山鏡夫訳 仏語研究社 1926年
- 『ドーデー選集 第2 アルルの女(桜田佐訳)留守の人たち(岡田弘訳)』十字屋書店 1949年
- 『アルルの女』桜田佐訳 岩波文庫 1950年
- 『アルルの女』村上菊一郎訳 新潮文庫 1952年
- 『アルルの女』加藤道夫訳 角川文庫 1952年
劇付随音楽
作曲期間が短く、また契約の関係で極めて小編成のオーケストラを用いた。初演の評価は芳しくなかった。6年後に再演された時は大好評のうちに迎えられたが、その時すでにビゼーはこの世の人ではなかった。
楽器編成
ハープ、フルート2、オーボエ(コーラングレ)1、クラリネット1、ファゴット1、アルト・サクソフォーン1、ナチュラルホルン1、ヴァルヴ・ホルン1、ティンパニ、プロヴァンス太鼓、ピアノ、ハルモニウム、弦五部(第1ヴァイオリン4、第2ヴァイオリン3、ヴィオラ1、チェロ5、コントラバス2)、合唱
組曲
一般に知られているのは、演奏会用に劇付随音楽から数曲を選んだ組曲である。
第1組曲
第1組曲はビゼー自身が通常オーケストラ向けに編成を拡大して組曲としたものである。劇付随音楽が初演された直後の1872年11月10日に初演されて成功を収めた。
- 第1曲『前奏曲』
- 劇音楽No.1 序曲から。3部構成。第1部の主旋律は、プロヴァンス民謡『3人の王の行列』に基づく。第2部のアルト・サクソフォーンによる旋律は、フレデリの弟の知的障害を表す動機によっている。第3部は、フレデリの恋の悩みを表している。
![{
\key c \minor \tempo "Allegro deciso" 4=104 \time 4/4 \relative c' {
r2 c4\ff-. g4-.| c4( c8) [r16 d16] \acciaccatura f8 ees8 [r16 d16 ees8 r16 c16]| g'4( g8) [r16 ees16] f4-. g4-.| aes8-. g8-. f8-. ees8 d4-. g4-.| f8-. ees8-. d8-. ees8-. c4-. g4-.| c4( c8) [r16 d16] \acciaccatura f8 ees8 [r16 d16 ees8 r16 c16]| g'4( g8) [r16 ees16] f4-. g4-.| aes8-. g8-. f8-. ees8-. ees4-. d4-.| c4( c8) [ r16 d16] d4-. d4-.| ees-. d8[ r16 c16] d4-. ees4-.| f4( f8) [ r16 ees16] f4-. g4-.| c,4-. d8-. ees8-. f8-. ees8-. d8-. c8-.| c8-.[ b8-. g8-. r16 d'16] d4-. d4-.| ees4-. d8[ r16 c16] d4-. ees4-.| f4( f8) [ r16 ees16] f4-. g4-.| aes8-. g8-. f8-. ees8-. ees4-. d4-.| c4( c8)
}
}](https://cdn.weblio.jp/e7/redirect?dictCode=WKPJA&url=https%3A%2F%2Fupload.wikimedia.org%2Fscore%2Fg%2Fs%2Fgsod517r49qlhalqllevtl96x5bhod9%2Fgsod517r.png)
- 第2曲『メヌエット』
- 劇音楽No.17 間奏曲から。

- 第3曲『アダージェット』
- 劇音楽No.19 メロドラマの中間部から。

- 第4曲『カリヨン』
- 劇音楽No.18 導入曲およびNo.19 メロドラマ前後部から。ビゼーは『アダージェット』に使わなかった部分を中間部に置く三部形式に構成し直している。

第2組曲
第2組曲は、ビゼーの死後の1879年に彼の友人エルネスト・ギローの手により完成された。ギローは管弦楽法に長けていただけでなく、ビゼーの管弦楽法の癖についてもよく把握しており、『アルルの女』以外の楽曲も加えて第1組曲と同じようなオーケストラ編成で編曲した。
- 第1曲『パストラール』
- 劇音楽No.7 導入曲および合唱から。もともと二部に分かれていた曲を、ギローは三部形式に構成し直している。

- 第2曲『間奏曲』
- 劇音楽No.15 導入曲から。中間部のアルト・サクソフォーンによる敬虔な旋律は、『神の子羊』という歌曲としても歌われた。

音楽・音声外部リンク | |
---|---|
![]() アルルの女 メヌエット - 歴史的音源(国立国会図書館デジタルコレクション) |

- 第4曲『ファランドール』
- 劇音楽No.21 ファランドールなどからギローが終曲として構成。プロヴァンス民謡『3人の王の行列』(短調)に基づく旋律とファランドールが組み合わされ、熱狂的なクライマックスを築き上げる。『ファランドール』の軽快な旋律は、民謡『馬のダンス』(長調)に基づく。


楽器編成
通常の二管編成(ただしサクソフォーンが加わる)に拡大され、金管楽器が大幅に追加されている。またハルモニウムは省かれ、ハープが追加されている。
フルート2(第2では持ち替えでピッコロ1)、オーボエ2(持ち替えでコーラングレ1)、クラリネット2、ファゴット2、アルト・サクソフォーン1、ホルン4(第2組曲の間奏曲では3・4番ホルンにヴァルヴ付きが指定されている)、コルネット2、トランペット2(省略可。ただしその場合、第1・第2組曲の2つのメヌエットにおけるトランペット・パートはコルネットで代用すること)、トロンボーン3、ティンパニ、スネアドラム(第1のみ)、シンバル、バスドラム、プロヴァンス太鼓(以上第2のみ)、ハープまたはピアノ、弦五部(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス:それぞれ通常の人数)
備考
- 付随音楽、第1組曲、第2組曲とも、サクソフォーンをオーケストラで用いた楽曲としてはごく早い時期のもので、一般に知られる曲では最も古い。組曲はサクソフォーン抜きでも他の楽器による代替で演奏可能に書かれているが、今日ではあまり行われない。
脚注
出典
- ^ “L’Arlésienne”. pad.philharmoniedeparis.fr. 2025年8月10日閲覧。
- ^ “L’Arlésienne”. www.chatelet.com. 2025年8月10日閲覧。
- ^ “ビゼー:「アルルの女」第1組曲・第2組曲より”. shinkyo.org. 2025年8月10日閲覧。
外部リンク
- アルルの女の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- アルルの女 第1組曲の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- アルルの女 第2組曲の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
アルルの女
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/06 01:26 UTC 版)
「宝塚歌劇団によって舞台化された作品の一覧」の記事における「アルルの女」の解説
詳細は「アルルの女 (宝塚歌劇)」を参照 原作はアルフォンス・ドーデの「風車小屋だより」の中の短編小説。
※この「アルルの女」の解説は、「宝塚歌劇団によって舞台化された作品の一覧」の解説の一部です。
「アルルの女」を含む「宝塚歌劇団によって舞台化された作品の一覧」の記事については、「宝塚歌劇団によって舞台化された作品の一覧」の概要を参照ください。
固有名詞の分類
- アルルの女のページへのリンク