アポプラスト輸送
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/25 07:58 UTC 版)
アポプラスト経路とシンプラスト経路はどちらも水と溶質の主要な輸送経路である。アポプラスト輸送(apoplastic transport)では水や無機物は地下部から地上部へと、幹から枝葉へと木部を移動する。木部の溶質は細胞に吸収されるか、師部へと輸送される。アポプラスト輸送される物質の濃度は木部への輸入量、細胞の吸収量、師部への輸出量で決まる。輸送速度はシンプラスト輸送でよりもアポプラスト輸送で速い。このため、水は細胞内でよりも組織内で活発に輸送されている。 植物の主要な炭素源である二酸化炭素が生体分子やエネルギーとなるためにはアポプラスト経路を通って細胞内小器官の葉緑体にたどり着かなければならない。これは、光合成にはアポプラスト経路での輸送が必須であることを意味する。土壌から取り込まれた無機栄養素(硝酸イオン、リン酸、カリウムイオン、鉄イオンなど)はまず根表皮のアポプラスト内に拡散される。その後、無機イオンは各イオンに特異的なイオンチャネルを通ってシンプラストに入る、あるいは蒸散流によって地下部から地上部へと引き上げられ各部位へと輸送される。同様に、地上部で獲得された酸素など気体分子や、植物細胞内で合成された各種化学物質(植物ホルモンやフェロモンを含む)はアポプラスト経路を介して輸送される。 アポプラスト経路はまた排出にも関与している。根に吸収された無機物の一部は木部に輸送されない。この無機物は、中心柱と接する内皮の細胞膜によって排出される。
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