アイスキュロスのパロディとホメーロスへの言及
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/28 06:12 UTC 版)
「エレクトラ (エウリピデス)」の記事における「アイスキュロスのパロディとホメーロスへの言及」の解説
アイスキュロスのオレステイア三部作(紀元前458年に上演)は長きにわたる人気を誇った作品であり、エウリピデス版におけるオレステースとエレクトラの再会場面の構成にはその影響が明らかである。オレステイア三部作中の『供養する女たち』(おおまかなプロットはエウリピデスの『エレクトラ』と同じである)において、エレクトラは弟を髪の房、アガメムノーンの墓にあった足跡、何年も前に弟に作ってやった衣類など、いくつかの証拠で見分ける。エウリピデス版の見分けの場面は明確にアイスキュロスをパロディ化している。エウリピデス版『エレクトラ』では、エレクトラは、髪がぴったり合う理由などないし、オレステースの足跡は自分の小さな足跡に全く似ていないし、大人になったオレステースが小さな子どもの頃に作ってもらった衣類の布をまだ持っているなどばかげていると言って、こうした証拠を用いて弟を見分けられるという考えを笑う。 オレステースはそのかわりに、子ども時代に家で鹿を追いかけている時に負ったひたいの傷で見分けられる。これはホメーロスの『オデュッセイア』の英雄的な一場面を茶化したものである。『オデュッセイア』において、乳母エウリュクレイアは帰還したばかりのオデュッセウスを、子ども時代に最初のイノシシ狩りで負った太ももの傷で見分ける(19.428-54)。『オデュッセイア』では、オレステースがアルゴスに戻って父の死の復讐をとげたことがテレマコスのふるまいの模範として何度か言及されている。エウリピデスは『エレクトラ』の見分けの場面において、逆に『オデュッセイア』第19歌を参照していると言える。叙事詩の英雄にふさわしいイノシシ狩りのかわりに、エウリピデスは子鹿にまつわる少々喜劇的な事故のエピソードを考え出している。
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