この國を出ることもなく春炬燵
作 者 |
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季 語 |
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春 |
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前 書 |
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評 言 |
句意は平易であるがいろいろと想像を沸かせて呉れる句である。まずは作者、品田まさをが生まれてから現在までのことを詠っているのか、現在の状況を詠っているのか考えさせられる。前者によると、「この国以外を旅行等で行ったかもしれないが、今まで一度も居住したことがない」との意味に取れる。また別の解釈は「最近若者達は気軽に海外旅行を楽しんでるが、作者はそのとき外国旅行をすることなく炬燵でぼんやりしている」である。筆者は前者のように解釈した方が句の奥行きが広がり、品田まさをも同じ土地に生まれ育ったことを回顧していると思われる。 掲句の國は日本国を指すのでなく、もっと狭く作者が生まれ育った伊勢崎を指すと思われる。伊勢崎は関東平野のやや北西にあり平坦な地であるが、少し遠くには赤城山が見え、さらに谷川連邦等多くの山脈が遠望でき風光明媚な地である。上州は博打が盛んで大前田英五郎や国定忠次郎など著名な博徒がおり、また織物業、特に伊勢崎銘仙が有名で栄えてが比較的地味な土地である。 掲句は品田まさをがそんな土地に生まれ、一生を終ろうとしていることに多少後悔する気持と平々凡々な生活に安らぎを覚える気持が入り混じって、炬燵にぼんやり入りながら回想している様子が伺われる。 品田まさをは、又豪快磊落な性格であることは「日本海枕としたる大昼寝」との句からも窺え、また酒をこの上なく愛し「焼酎のコップの底のお正月」「晩酌は二三合なり朧なり」等多くお酒の句を詠っている。 品田まさをはひろせ川俳句会代表として活躍したが、しかし病には勝てず黄泉に旅立ったが、健在であったら群馬県の俳壇を背負って立つ俳人であったであろう。 |
評 者 |
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備 考 |
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