うりずんのたてがみ青くあおく梳く
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夏 |
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評 言 |
この句を含む作品でマチ子は第四十四回の現代俳句協会賞を受賞しており、とりわけこの句は岸本マチ子を強く印象付けた。これをマチ子は第四句集『うりずん』に収めている。うりずんは沖縄の方言で、夏を迎える前二、三月頃の木の芽が一斉に芽吹く沖縄では一番美しい季節をいうと知った。沖縄には若夏という言葉もあり、これにうりずんとルビをふったりすることがあるが、隣り合っていても正確にはニュアンスが違うという。ともあれうりずんも若夏も沖縄に相応しい美しい言葉だ。 マチ子は群馬県生れであるが、沖縄の人と結婚し、沖縄に住みついた。沖縄はマチ子の感性を一気に開花させ、詩を多産させた。そして沖縄の詩人の名前を冠した第一回山乃口獏賞を受賞している。この句はそんなマチ子が俳句に示した記念すべき沖縄賛歌をいってよい。沖縄の冬は短く、春の闌けるのも早いはずだ。青々とした海、緑したたる山河、春から夏への移り行きを駿馬の訪れとして捉えた。うりずんは颯爽とたてがみを靡かせてやってくるのだ。うりずんと言う言葉はそれほどにはずむような豊かな響きをもっている。沖縄自身がたてがみを梳かれている駿馬にも見えてくる。 若夏にうりずんとルビを振った句では金子兜太の「起伏ひたに白し熱し 若夏(うりずん)」という独自なリズム感をもった句が記憶に新しい。ここはやはりうりずんの言葉が命だろう。マチ子の最近の若夏を詠んだ句も二句挙げておきたい。 若夏へ戦争もまた歩きます わたくしの中で若夏水位あげ やはり屈折し、内面化して歳月を思わせる。 |
評 者 |
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備 考 |
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