『サン=ドニの戴冠』
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「マリー・ド・メディシスの生涯」の記事における「『サン=ドニの戴冠』」の解説
『サン=ドニの戴冠』は、リュクサンブール宮殿待合室の西側壁面の最北端に飾られていた作品で、それまで様々な神々から庇護を受けていたマリーの独り立ちを意味する絵画である。待合室南東の角にあった出入り口から見て、もっとも目立つ2点の作品のうちの1点でもある。ルーベンスは『サン=ドニの戴冠』を、画面右端に立つ2人の枢機卿の赤いローブに見られるように、様々な階調の赤色を用いて遠景から描いている。ルーベンスは続く『アンリ4世の神格化とマリーの摂政宣言』でも同様に様々な階調の赤色を使用しており、このことがこれら2作品に一体感を与える効果をもたらしている。 この作品にはパリのサン=ドニ大聖堂で戴冠するアンリ4世とマリーが描かれている。『アンリ4世の神格化とマリーの摂政宣言』とともに『マリー・ド・メディシスの生涯』のなかでも中核となる絵画だとされ、どちらの作品にも大地のオーブを受け取るマリーが描かれている。マリーは枢機卿ゴンディとスルディの案内で祭壇まで導かれ、ド・ベテューヌらがマリーのそばに立っている。戴冠式は枢機卿ジョワユーズが主催している。マリーの周囲には王太子ルイ13世、宝冠を持つコンティ公フランソワ、笏を持つヴァンタドゥール公、裁きの手を持つヴァンドーム卿らが描かれている。コンティ公妃ルイーズ・マルグリット・ド・ロレーヌ (en:Louise Marguerite of Lorraine)とモンパンシエ公妃アンリエッタ・カトリーヌ・ド・ジョワユーズ (en:Henriette Catherine de Joyeuse) が、マリーが着用するマントのトレーンを支えている。画面右上の後陣には、アンリ4世がこの戴冠式を認可しているかのように描かれている。画面後方の群衆たちは新たな王妃の誕生を祝って手を振り上げ、マリーの頭上には豊穣と幸運の女神アブンダンティアと勝利の女神ウィクトリアが、ユピテルの黄金のメダルを振り撒くことで平和と繁栄を寿いでいる。ルーベンスがこの作品に描いている金の縁飾りを施した戴冠式の宝珠は、メダル作家ギョーム・デュプレが1610年に鋳造したメダルから着想を得ている。デュプレのメダルには、マリーの依頼でミネルヴァに仮託したマリーとアポロンに仮託したルイ13世の肖像が刻まれていた。
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