「人格」か「同一性」か
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 00:07 UTC 版)
「解離性同一性障害」の記事における「「人格」か「同一性」か」の解説
DSMの定義は2回変更されている。1980年のDSM-IIIでは「患者の内部に2つ以上の異なる人格が存在」とあった部分が、1987年のDSM-III-Rでは「患者の内部に2つ以上の異なる人格または人格状態が存在」となり、1994年のDSM-IVでは「2つまたはそれ以上の、はっきりと他と区別される同一性または人格状態の存在」となっている。この名称変更は、「解離」の役割を強調し、かつ、人格 (personality) 障害との混乱を避けるため」というのが理由のひとつであるが、もうひとつ「いくつもの人格が実態として存在するのではなく、個人の主観的体験の一部だということをはっきりさせる」ことも目的とされている。後者について、DIDの代表的な専門家であるコリン・A・ロス (Ross,C.A.) はこう説明している。 「多重人格者は複数の人格を持つわけではない。別の人格達は実際は一つの人格の断片である。別の人格は異常な形で擬人化され、お互いに分離して、相互に記憶喪失の状態に陥る。我々はこうした人格の断片を昔から「人格」と呼んでいる。多重人格症の存在を疑う人達がいる。彼らの疑問は、多重人格者は複数の人格を持つという誤解を前提にしている。実際の問題として、一人の人間が複数の人格を持つことはあり得ないのである。」 「identity(同一性)」は「personality(人格)」についての哲学的、あるいはアメリカ法的議論を回避するために選ばれた言葉であり、正確な病名としては「解離性同一性障害」と呼ぶが、その説明の中では「人格」という言葉をあいまいに普通に使っている。日本語で「同一性」というとピンとこないが、疾患の範囲が変わった訳ではない。「人格状態」(personality statesの直訳)も含めて、日本語の「人格」「別人」をイメージしておけばよい。ただしロス (Ross,C.A.) もいうようにそこでの「人格」も「別人」もあくまでその人の一部である。
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