JR九州885系電車
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JR九州885系電車 | |
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特急ソニックとして運用される885系電車 (2021年3月 朽網駅 - 苅田駅間) | |
基本情報 | |
運用者 | 九州旅客鉄道 |
製造所 | 日立製作所笠戸事業所 |
製造年 | 2000年 - 2004年 |
製造数 | 69両(11編成66両+代替車3両) |
運用開始 | 2000年3月11日 |
主要諸元 | |
編成 | 6両編成 |
軌間 | 1,067 mm |
電気方式 | 交流20,000V (60Hz) |
最高運転速度 | 130 km/h(曲線通過 +30 km/h) |
設計最高速度 | 150 km/h(曲線通過 +40 km/h)[要出典] |
起動加速度 | 2.2 km/h/s |
減速度(常用) | 4.3 km/h/s |
減速度(非常) | 5.2 km/h/s |
編成定員 | 314名(6両編成) |
編成重量 | 228.4 t |
全長 |
20,500 mm 21,650 mm (先頭車) |
全幅 | 2,910 mm |
全高 | 3,825 mm |
車体 | アルミニウム合金 (A-train) |
主電動機 | かご形三相誘導電動機 |
駆動方式 | TD継手式中実軸平行カルダン駆動方式 |
編成出力 | 190kW×12=2,280kW (3M3T) |
制御方式 | IGBT素子VVVFインバータ制御 |
制動装置 | 回生ブレーキ併用電気指令式ブレーキ |
保安装置 | ATS-SK、ATS-DK |
概要
783系と485系を使用していた特急「かもめ」の速度向上を目的とした振り子式車両である。デザインは水戸岡鋭治主宰のドーンデザイン研究所が担当した。
2001年(平成13年)に「ソニック」増発用の2次車が製造された[1]。2003年(平成15年)に2次車の6両化用として4両が、2004年(平成16年)に事故廃車(後述)された補充として3両が製造された。
全車が日立製作所で製造された。車両価格は6両編成で10億8000万円。
最高速度は883系と同じ130km/hで、80km/hまでの加速性能も883系と同じだが、それ以上の速度領域では加速力を向上させることで高速性能の改善を図っている[2]。本形式は883系と異なりアルミ車体が採用されたが、振り子式車両への導入は381系以来であり、JRグループの新型車両では当形式が唯一の存在である。
2001年に鉄道友の会第44回ブルーリボン賞[3]、ブルネル賞、財団法人産業デザイン振興会グッドデザイン賞を受賞した。
車両概説
車体
車体は日立製作所のモジュール構体システム「A-train」を採用し、摩擦撹拌方式 (FSW) により製造されたダブルスキン構造のアルミニウム合金製である[2]。ダブルスキン構造の内部に制振材を挿入し、床面上部にも貼り付けることで騒音防止を図っている[2]。前頭部は新幹線や、ドイツの高速列車ICE3を彷彿させるような、非貫通構造で丸みの帯びた流線型とし、併結用の密着連結器はカバーで車体と一体になるようにデザインされている[4]。前照灯のデザインは、スポーツカー「アウディ・TT」のものを基にしている[5]。前照灯はロービームの際は2箇所のシールドビームしか点灯しないが、ハイビームでは787系と同様に運転室窓上のシールドビームも点灯する。尾灯は前照灯の下部に横方向に配置されている。
側面窓は883系に比べやや小さくなるとともに、窓ガラスはUVカットガラスに変更された。また乗降扉の横幅も883系に比べ100mm縮められ、900mmとされた。ただし、床面高さを低くしたことにより、ホームとの段差が小さくなったため出入台にステップは設置されていない。
行先表示器はLED式で、一定速度以上で走行中は表示が消え、停車中に消すことも可能である。上部約2/3では、列車名と行先が表示される。上部より英語列車名、日本語種別・列車名、日本語行先、英語行先となっている。下部約1/3は、号車番号、座席種別(グリーン/指定/自由、禁煙/喫煙)およびその英語表記が表示される。これらは別個に設定可能である。
- 大分駅で「にちりん」と接続する「ソニック」では、英語名の表記が省略されるとともに、列車名と行先がそれぞれ「ソニック(&にちりん)」「大分(宮崎空港又は南宮崎)」となっている。また、その下に「大分駅で「にちりん号」と接続」の表記が加わる。
塗装はそれまでのJR九州の車両に多かった原色を用いたデザインから一変し、白一色で車体下部と前面運転台窓周りに帯を入れたデザインとなっている。この帯の色は「かもめ」に充当される1次車が黄色、「ソニック」に充当される2次車が青色と区別され、ロゴもそれぞれ異なっていた。ただし予備車が少ないことから運用上の自由度を高めるため、車体側面エンブレムは後に撤去され[6]、帯の色も2012年上期までに青色への統一が完了した[7]。
このデザインを採用するにあたり、ICE3のデザイナーであるアレクサンダー・ノイマイスターと親交がある水戸岡は、ノイマイスター本人から快諾を得たという[8]。
内装
車内
座席は全席リクライニングシートで、普通席・グリーン席ともに本皮革張りとしている。これにより構造上、座席背面にテーブルを設置することができないため、側面窓の窓かまちを設けることで小物を置くスペースの確保を図っている。また、ヘッドレスト背面にはチケットホルダーが設置されている。座席の本革は、商品価値を損なわない程度の微細な傷などが入ったもの(いわゆるアウトレット品)を用いている。そのため、製造コストは通常の座席と大差はない。なお、運転席はレカロ社に特注したセミバケットシートを採用している[9]。
しかし汚れ付着防止のため、各編成の座席が順次皮革からモケットに変更されることとなっており[10]、2012年にSM2編成で実施された[11]。
グリーン席の座席はすべて1人掛け座席となっているが、中央のC列の座席を片側に寄せてD列席と隣接させることで1+2列配列並みの配置としている(席番配置はA+CD)。また座席背面のフットレストが省略された。A列の壁面とC・D列の中間部に折りたたみ式の木製テーブルを設置している。定員は12名で、883系より1列分少なくなっている。
普通席は一般的な2+2列配置の座席で、座席の前後間隔は883系に比べて20mm短い980mmとなった。普通席では中ひじ掛けに収納式の木製テーブルを設置している(画像でも解るが手前には2つ設置されている。これは、座席を回転させた際にテーブルの位置がずれてしまう為の対策である)。
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指定席車の車内(※画像は1号車後室)
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モケットに交換された車内
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1次車のグリーン車の車内。普通車同様黒いシートにカモメのロゴが入っている。
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2次車のグリーン車の車内。えんじ色のシートにSの文字が入っている。
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1次車グリーン車のテーブルを閉じた状態。金属部分にロゴが入る。
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1次車グリーン車のテーブルを開いた状態。
その他車内設備
側面化粧板は白色、床はフローリングとしている。ただし、サハ885形100番台および300番台(いずれも3号車)の化粧板はダークグレーである。
本系列では883系に設けられていた客室中央部のセンターブースは廃止され、代わりにデッキの面積を拡大し、車端部にコモンスペースを設けた。コモンスペースには縦長の窓が設けられている。
仕切扉には、車両間の半透明ガラス扉、普通客室とデッキを仕切る上部透明/下部半透明のガラス扉、グリーン客室とデッキを仕切る木製扉の3種類があり、全て自動扉であるが、木製扉は手でセンサに触れなければ開かない。これらのうち、ガラス扉は乗務員室からの操作による一括開閉が可能である。また車両間の扉は、一方の扉の開閉と連動して他方の扉も開閉する。
LED式案内表示器は、客室端部(仕切扉上部)に天井から吊るす形で設置されている。LEDの大きさや配置は883系に準じ、左側から禁煙表示灯、号車番号表示、座席種別表示(グリーン車:グリーンマーク、普通車指定席:緑色で「指」、普通自由席:橙色で「自」)、スクロール式情報表示(8文字分で、当初は「見えるラジオ」を利用したニュース配信も行われていたが、「見えるラジオ」の終了により、現在は、乗客への注意喚起や特別企画乗車券等の自社広告などが流れている)、携帯電話使用禁止表示、トイレ使用中表示となっている。また、6号車に指定席と自由席が混在していた時期(2003 - 2007年)は、通常の座席種別表示は使用されず、「指/自」と表記されたプレートが当該部分に貼付されていた。
各車両一部座席を撤去し、大型の荷物を置くことができる荷物スペースを設置している。
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グリーン車入口の木製ドア(SM3かもめ編成)。
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普通車入口。上部案内表示機周辺を除き、すりガラスとなっている。
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デッキとグリーン車室内にある多目的スペース。新聞・雑誌・車内販売のメニューが置いてある。
乗務員室
主幹制御器は左手操作ワンハンドル式(手前から力行5段、中立、抑速ブレーキ、常用ブレーキ7段、非常ブレーキ)とされた。また右側のグリップには勾配起動スイッチが備わっている。運転室と客室との仕切は液晶ガラスとなっており、通常は透明であり客室から前方の風景を見ることができる。なお、停留中や事故などで先頭車のマスコンハンドルが非常ブレーキ位置にあるときは瞬時に不透明になる機構を備える。ちなみに、運転席右部にこのスイッチがあり、ONにすれば常時透明のままになる。
また、三菱電機製乗務員支援モニタ(合成音声とチャイムによる停車駅接近予告機能を付加。客扱いをしない停車駅でも予告)も備えている。後日装備であるが、運転台の上にATS-DK形のコンソールが搭載された。
本系列ではミュージックホーンも搭載されているが、883系と同様に運転台の下のペダルで操作するのではなく、運転室のコンソールボックスの中のスイッチを操作して吹鳴させる。これは各種試験動作などの注意啓発の合図のために設置されたもので、通常は聞くことができない。
機器類
主回路機器は815系をベースに特急形として見直しを図っている[12]。主回路制御方式は、883系に続いてVVVFインバータ制御を採用する。
主変換装置は、IGBT(3300V/1200A)素子を使用したPWMコンバータ+VVVFインバータで構成される[12]。
主変圧器は自冷式を採用し、モハ885形に搭載される。モハ885形0・400番台は隣接するクモハ885形にも給電することから、二次巻線2線と三次巻線で構成された2M車タイプを搭載する[12]。モハ885形100・200番台は自車のみ給電であることから、二次巻線を1線とした1M車用を搭載する[12]。
また、中間電動車のモハ885形(2・5号車)にシングルアーム式パンタグラフを1基ずつ装備している。パンタグラフ位置が車体の振り子動作に影響されないように、パンタグラフ台は台車枠直結の支持台上に設置されており、パンタグラフを備えるモハ885形のこの部分はデッドスペースとなっている。
主電動機は、883系で実績のある MT402K (定格出力190kW)を電動車両1両あたり4基搭載する[12]。
消費電力は、1両あたりの消費電力の理論値ベースで415系の消費電力を100とした場合、885系は約65パーセントとなっている[13]。
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東芝製主変換装置
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日立製主変換装置
台車は空気式制御付自然振り子台車のDT406K(電動車)/TR406K(制御車・付随車)となっている。台車の外観や寸法などは883系に類似しているが、台車形式は883系とは異なっている。
883系投入線区のほとんどは最高速度で走行可能で、100km/h未満の速度制限箇所が一部存在するが、長崎本線肥前鹿島駅 - 諫早駅間では日豊本線より厳しい制限70km/h - 75km/hの急曲線が連続するため、振り子電車としての車体傾斜による安定性を高めることを目的に、空気ばねの左右間隔を883系より10cm広い1,900mmとしている。80km/h以上の速度領域での加速度向上を図ったのも同様の理由のためである。
注釈
- ^ 2003年、2次車の5両化の際に製造・編成組込
出典
- ^ a b c d e f 『鉄道ジャーナル』通巻415号、p.76
- ^ a b c 『鉄道ファン』通巻469号、p.42
- ^ a b 「JR年表」『JR気動車客車編成表 '02年版』ジェー・アール・アール、2002年7月1日、191頁。ISBN 4-88283-123-6。
- ^ 『鉄道ファン』通巻469号、p.43
- ^ 水戸岡 2009, pp. 128–129.
- ^ a b c JR特急列車年鑑 2011, pp. 90–91.
- ^ a b 鉄道ファン 2012, p. 33,170.
- ^ 「オランダに485系、日欧「似たもの列車」大集合」『東洋経済ONLINE』、東洋経済新報社、2020年11月6日、2021年2月21日閲覧。
- ^ 水戸岡 2009, p. 77.
- ^ 『鉄道ジャーナル』第47巻第5号、2013年5月、34頁。
- ^ 『JR電車編成表 2013冬』2012年11月9日、208頁、ISBN 978-4-330-33112-6。
- ^ a b c d e 『鉄道ファン』通巻469号、p.50
- ^ 九州を走るエコ車両 - ウェイバックマシン(2017年10月2日アーカイブ分) - 九州旅客鉄道 2017年10月1日
- ^ a b 「885系SM5編成が青帯に」『『鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース』交友社、2010年12月27日。2012年10月13日閲覧。
- ^ a b c 坂 2011, p. 29.
- ^ 鶴 2011, p. 85.
- ^ 鶴 2011, p. 82.
- ^ 『鉄道ジャーナル』通巻415号、p.72
- ^ 『鉄道ジャーナル』通巻415号、p.77
- ^ 「新型特急デビュー」『交通新聞』交通新聞社、2001年3月6日、1面。
- ^ 「「白いかもめ」晴れ舞台 ブルーリボン賞 博多駅でセレモニー」『西日本新聞』西日本新聞社、2001年8月25日、夕刊、10面。
- ^ “JR九州にて『福が来た!プロジェクト』始動!!”. 福山雅治オフィシャルサイト. 2023年5月4日閲覧。
- ^ 『車内飲料自動販売機サービスの終了について』(PDF)(プレスリリース)九州旅客鉄道株式会社(JR九州) 。2022年1月30日閲覧。
- ^ 『2022年9月23日ダイヤ改正 西九州新幹線が開業します 在来線各線区でダイヤを見直します』(PDF)(プレスリリース)九州旅客鉄道、2022年6月10日、8頁。 オリジナルの2022年6月10日時点におけるアーカイブ 。2022年6月18日閲覧。
- ^ “「Splatoon3×JR九州」さぁ、キュウシュウを楽しまなイカ?キュウシュウラン開催概要について”. 九州旅客鉄道. 2024年2月16日閲覧。
- ^ 臺鐵局積極回應民眾東部運輸服務期待,完成增購4組列車,將於明年底陸續交車投入營運(繁体字中国語) - ウェイバックマシン(2014年12月29日アーカイブ分) - 交通部臺灣鐵路管理局
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