D-30 122mm榴弾砲 D-30 122mm榴弾砲の概要

D-30 122mm榴弾砲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/19 07:49 UTC 版)

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D-30 122mm榴弾砲
展示品のD-30 122mm榴弾砲
種類 軽榴弾砲
原開発国 ソビエト連邦
運用史
配備期間 1963年-
配備先 #採用国を参照
関連戦争・紛争 第四次中東戦争
イラン・イラク戦争
アンゴラ内戦
ソ連のアフガニスタン侵攻
湾岸戦争
ユーゴスラビア紛争
チェチェン紛争
南オセチア紛争など、多数の戦争紛争
諸元
重量 3,210kg
全長 5.4m(牽引状態)
銃身 4.636m(38口径
全幅 1.9m(牽引状態)
全高 1.6m(牽引状態)
要員数 8名

砲弾 装薬:分離薬莢
口径 122mm
砲尾 半自動垂直鎖栓式
反動 液気圧式駐退機
砲架 三脚
仰角 -7°~+70°
旋回角 360°
発射速度 7-8発/分(最大)
1発/分(持続射撃)
有効射程 15,400m(標準榴弾
最大射程 21,900m(ロケット補助推進弾)
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なお、GRAUインデックスでは2A18とも呼称され、西側諸国がD-30の存在を確認したのは1963年であることからM1963 122mm榴弾砲NATOコードネームが与えられている。

概要

D-30は、第二次世界大戦中の赤軍師団榴弾砲であったM-30 122mm榴弾砲を更新する目的で、第二次大戦の後期にドイツが設計した10.5 cm leFH 43ドイツ語版を基に1960年代に設計された。

D-30は、長砲身を採用することで当時の西側製105mm榴弾砲を大きく凌駕する15kmもの長射程を実現しており、反動吸収用のマズルブレーキも装着されている。また、閉鎖機も従来の断隔螺旋式から半自動開閉機構付き垂直鎖栓式に変更され、連射速度も向上している。また、自衛程度の限定的状況において対戦車戦闘も行えるように直接照準用の照準器と対戦車用の成形炸薬弾も開発されている。

D-30の最大の特徴は、三脚式の砲架を採用している点である[1]。三脚式砲架を使用することで、D-30は砲自体の方向を調整すること無く文字通りの360度全周囲を砲撃することが可能となった。

牽引時には3本の脚を固定された1本の脚の左右に揃えてトラベルロックで砲身と固定し、砲身先端下部のリングで牽引車両のフックに引っかける。牽引車両には装軌式のMT-LB汎用装甲車か六輪式トラックウラル-375D、もしくはその後継のウラル-4320や四輪式トラックのGAZ-66が使用される。

砲撃する際には内蔵ジャッキで本体を支えて車輪を持ち上げてから三本の脚を120度間隔に展開し、ジャッキを降ろしてから脚の先端にY字型の駐鋤をハンマーで地面に打ち込み固定する。

運用

D-30は、旧東側諸国を中心として世界60ヶ国が採用しており、冷戦期から現在まで多くの戦争紛争で広く用いられている。

ソビエト連邦軍では戦車師団自動車化狙撃兵師団に多数配備されたが、機動力向上のために2S1 グヴォズジーカ2S3 アカーツィヤなどの自走榴弾砲に更新されていった。

しかし、P-7機材用パラシュートによって輸送機から空中投下することが可能な唯一の榴弾砲であるため、ロシア空挺軍では未だに唯一の榴弾砲として現役で使用されているほか、現在のロシア連邦軍でも多くのD-30が予備兵器として保管されている。

2S1の主砲も、このD-30を改良したものを採用している。さらに、エジプトシリアでは中古のT-34戦車リビアではM113装甲兵員輸送車の車体にそれぞれ独自の方法でD-30を搭載した自走榴弾砲を製造している。

中国ではリバースエンジニアリングによる無断デッドコピー86式122mm榴弾砲やその改良型である96式122mm榴弾砲を生産して人民解放軍に配備するとともに海外へ輸出している他、多くの国でライセンス生産やデッドコピーの生産が行われている。また、85式122mm自走榴弾砲YW-323)や89式122mm自走榴弾砲PLZ-89)など、多くの自走砲の主砲として用いられている。


  1. ^ 三脚式を始めとする多脚式砲架は主に高射砲で使用されていたが、第二次世界大戦以降は高射砲自体が廃れていったため現在ではあまり見られない。第二次世界大戦後に設計された榴弾砲は一部の軽量砲を除いて二脚式砲架が主流となっている


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