正法眼蔵 正法眼蔵の概要

正法眼蔵

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/26 23:15 UTC 版)

著者によって大別すると、次の3種類に分かれる。

  1. 『正法眼蔵』 - 3巻。大慧宗杲
  2. (仮字)『正法眼蔵』(仮名記述) - 75巻+12巻+拾遺4巻(現在の研究結果による)。道元著
  3. (真字)『正法眼蔵』(漢文記述) - 300則の公案集。道元選(ただし道元による若干の変更あり)

ここでは、2番目の道元著(仮字)『正法眼蔵』について述べる。

仮名版と漢字版の正法眼蔵

日本曹洞宗の開祖である道元が、1231年から示寂する1253年まで生涯をかけて著した87巻(=75巻+12巻)に及ぶ大著であり、日本曹洞禅思想の神髄が説かれている。道元は、中国曹洞宗の如浄の法を継ぎ、さらに道元独自の思想深化発展がなされている。

真理を正しく伝えたいという考えから、日本語かつ仮名で著述している。当時(鎌倉時代)の仏教者の主著は、全て漢文で書かれていた(法然親鸞教行信証』、栄西日蓮、…)。古い巻の記述を書き直し、新しい巻を追加して全部で100巻にまで拡充するつもりであったが、87巻で病のため完成できなかった。その後、拾遺として4巻が発見され、追加されている。

(仮字)『正法眼蔵』は、道元の禅思想を表現するために、語録から特に公案で使われてきた重要な問答を取り出し、それに説明注釈する形で教えを述べている。その種本が(真字)『正法眼蔵』であり、10種類ぐらいの禅語録から、道元がみて重要な300則の禅問答を抜き出している。ただし、そのまま写したのではなく(抜き出した段階で既に)道元の思想によって若干の変更が加えられていることが、研究の結果判かっている。

真筆と諸版

道元真筆とされるものは、正法眼蔵嗣書(しょうぼうげんぞうししょ、伊予西条藩松平家旧蔵→里見忠三郎旧蔵、現在は駒澤大学禅文化歴史博物館所蔵)[3][4]、正法眼蔵「山水経」(愛知県全久院所蔵)など[5]10数種が残っている。

また、道元の死後直後から、後継者らにより頻繁に書写され、各地に分散していく。現在では以下6系統が確認されている。

  • 75巻本
  • 12巻本(百八法明門がある)
  • 60巻本
  • 卍山本
  • 80巻本
  • 95巻本

最後に開版(出版)された95巻本には、『正法眼蔵』とは呼べない文章も混入している[6]

大久保道舟など識者の精緻な研究結果から、旧稿75巻+新稿12巻に整理され、学会で合意されている[7]

修證義

特に在家への布教を念頭において、正法眼蔵から重要な点を抜粋したものに修証義(しゅしょうぎ)がある。

有名な言葉

而今の山水は、古仏の道現成なり(目の前の自然は、古来伝えられてきた仏の道が成就したもの、そのものである) —  山水経の冒頭


宗門の正伝にいわく、この単伝正直の仏法は、最上のなかに最上なり。参見知識のはじめより、さらに焼香・礼拝・念仏・修懺・看経をもちいず、ただし打坐して身心脱落することをえよ(この仏法では最初から焼香、礼拝、念仏、懺悔、読経もせず、ひたすら座禅して身も心も消せるようにせよ) — 弁道話より

これまでの刊行書籍

原本・注釈

現代語訳

新装版 全6巻、1999-2000年/河出文庫 全5巻、2004年

  1. ^ 「織田佛教大辞典」p790
  2. ^ 名著59 道元「正法眼蔵」100分de名著”. 日本放送協会. 2023年5月26日閲覧。
  3. ^ 駒澤大学禅文化歴史博物館所蔵「道元禅師真筆「正法眼蔵嗣書」2008年
  4. ^ 駒澤大学禅文化歴史博物館 平成21年度企画展『正法眼蔵』出版の足跡リーフレット
  5. ^ 鏡島元隆「正法眼蔵の成立的研究について:古田紹欽著『正法眼蔵の研究』刊行にちなんで」『駒澤大學佛教學部研究紀要』31巻、1973年
  6. ^ 旧岩波文庫全3巻、ただしこの版は、語句の誤りが多いので、岩波書店では絶版になった。復刻版が一穂社にある。
  7. ^ 水野弥穂子校注、岩波文庫版での解説。
  8. ^ 河村孝道著「正法眼蔵」‐『講座道元 第3巻 道元の著作』、73頁、春秋社、1980年11月 も参照。
  9. ^ 旧岩波文庫版は衛藤即応校註 全3巻


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