機動戦士Vガンダム
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機動戦士Vガンダム | |
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ジャンル | ロボットアニメ |
アニメ | |
原作 | 矢立肇、富野由悠季 |
総監督 | 富野由悠季 |
キャラクターデザイン | 逢坂浩司 |
メカニックデザイン | 大河原邦男、カトキハジメ 石垣純哉、佐野浩敏(デザイン協力)[注 1] |
音楽 | 千住明 |
アニメーション制作 | サンライズ |
製作 | テレビ朝日、サンライズ |
放送局 | テレビ朝日他 |
放送期間 | 1993年4月2日 - 1994年3月25日 |
話数 | 全51話 |
関連作品 | |
テンプレート - ノート | |
プロジェクト | アニメ |
ポータル | アニメ |
制作
ガンダムシリーズのテレビアニメとしては『機動戦士ガンダムΖΖ』以来となるテレビシリーズ。第4作目にあたる本作は、SDガンダム世代の小学生に受け入れやすくするため、主人公の年齢は13歳と従来のシリーズから引き下げられ、同じ理由から旧作ガンダムを知らない世代でも理解できるよう、旧作とはほとんど関連を持たない作品として作られた。また「環境問題」もテーマとして取り上げたともされる[2]。これまでのテレビシリーズでは、物語の出発点がスペースコロニー(宇宙)であったのに対して本作では地球となっているが、これは「ガンダム=宇宙」というイメージを払拭するためである[3]。また、『機動戦士ガンダム』より始まる「宇宙世紀」ガンダム作品としては最後年にあたる[注 2]。
監督の富野由悠季は放映当時のインタビューにおいて、本作はテレビアニメの原点に戻って、楽しいロボットアニメ、かつ当時の子供に流行のRPGを意識し、主人公が中心のシンプルかつマンガチックな作品を目指していた[4]と答えているが、本作制作前には舞台となる東欧――当時混乱の続いていたポーランドとチェコを取材している[5]。このため、物語序盤は明朗活発な主人公ウッソ・エヴィンが幼なじみのシャクティ・カリンや憧れの女性カテジナ・ルースを守るためにガンダムに乗り込み、トリッキーな戦法で敵を打ち負かすというシンプルな活劇としての方向付けがなされていたものの、物語が進むにつれ、宗教を背景とした民族主義など重いテーマに比重が置かれるようになっていく。序盤に部下をガンダムに殺され復讐に燃えていた敵の部隊長が、ガンダムのパイロットがまだ子供であることにひどく驚き、「子供が戦争をしてると、みんなおかしくなってしまう」と言い残して自決するが、ストーリーが進むにつれ、その言葉の通りに登場人物の多くは戦争という特異な環境にさらされ続けた結果、精神的に追いつめられていき、捕虜にした主人公に拷問と称して手錠をかけたまま2人で入浴し、自分たちの仲間になるように強要する女性や、女性の上司が主人公を惑わすために女性部隊に裸に近い格好でガンダムと生身で戦うように強要するなど、奇怪な行動をとるようになっていく。また、ギロチンで主人公の仲間の首がはねられたり、敵のパイロットが非武装の民間人の虐殺を楽しむような描写や、戦闘の際に機体を破壊するのではなく、コクピットを潰したりビームサーベルで中のパイロットを焼き殺すなどの残酷描写がある。未成年の多くが視聴できる時間帯であるにもかかわらず性的な描写も見られる。
もともと自身の作品を褒めること自体まれである富野だが、本作については後年にDVDボックスが発売された際、付属のブックレットに掲載された富野のインタビュー記事において「このDVDは、見られたものではないので買ってはいけません!!」と記述している。(『機動戦士Ζガンダム』のDVDにおけるインタビューでも同様のコメントをしている)。なお、これは本文中において「本当にそういうポスターを張り出してみると、このDVDはきっと凄く売れるでしょう」と締めくくられてる。また、Blu-rayボックス発売発表時にも「全否定したいと思っている作品。このような結果になったのは、全て監督(自身)の責任である。何かの間違いでこのBlu-rayを見た人は、何がダメなのかを探してみて欲しい。そこから気付ける人が1人でもいればBlu-rayとして出した意味がある」とコメントしている[6]。一方で、逢坂浩司によるキャラクターデザインは本作の救いだったと語っている[要出典]。また、本作の結末について「とっても好きなエンディングなんですよ」と語った事もある[7]が、「最終回の作品コンセプトが、現実にたいするぼくの恨みつらみを込めたものになって、作品として終わらせるというものにはなっていなかった」とも語っている[8]。
主役機Vガンダムのデザインにはカトキハジメを起用。シンプルなデザインながら、合体変形機構を持つ玩具性の高いものとなった。敵メカニックは宇宙人をコンセプトとしており、ビームローター、MS乗用一輪車、巨大バイク戦艦など、従来とは一線を画す設定が取り入れられた。特徴的なネコ目状のカメラアイは遮光器土偶がモチーフとなっている[9]。
アイキャッチはハロとウッソの愛犬フランダースが、回が進むごとに動き出すアニメーション形式が取られている。
制作時の仮題は『新機動戦士ビクトリーガンダム』。第1話の絵コンテはこのタイトルになっている。
音楽
音楽は千住明が担当し、本作のサウンドトラックは、アニメとしては当時珍しいフルオーケストラを起用した。スタッフはもちろん作曲家を褒めることもほとんどない富野は、曲の収録風景を見学に行って「幸せだ」と感じたという。千住は「Vガンダムを担当するに当たって、自分のもつ引き出しをすべて出し切るつもりで臨んだ」と語っている。また千住はアルバム「機動戦士Vガンダム〜交響組曲第二番 THOUSAND NESTS」(演奏:ポーランド放送管弦楽団、指揮:アンソニー・イングリス)を自身の代表作として語っている。オリジナルサウンドトラックはCDで3枚が発売されており、千住の手がけたサウンドトラック以外にも、1巻の「野辺の花」の後半パート(前期オープニングテーマ「STAND UP TO THE VICTORY〜トゥ・ザ・ヴィクトリー〜」のアレンジ版、次回予告で使用)や、挿入歌「ひなげしの旅のむこうに」「いくつもの愛をかさねて」などが収録。ただし、上記の「野辺の花」のピアノバージョンなど、未収録曲が10曲ほど存在する。
演技・キャスティング
ウッソ役には当時19歳の新人で、本作が声優デビュー作となる阪口大助が
カテジナ・ルース役には、『勇者エクスカイザー』の星川コウタ役などを演じた渡辺久美子が起用された。渡辺は女性キャラクターを演じるのは本作が初めてであり、「カテジナ役を通じて、『役について頭で考えるよりも実際に演じることが重要である』ということに気づかされた」と2015年6月のインタビューの中で振り返っており、「新鮮な気持ちで演じることができた」と述べている[12]。
トマーシュ・マサリク役には、本作が声優としての本格デビュー作となる関智一が起用され、関は後番組の『機動武闘伝Gガンダム』の主人公ドモン・カッシュを演じた。このほか各話のゲスト声優にも『新機動戦記ガンダムW』のヒイロ・ユイを演じた緑川光やゼクス・マーキスを演じた子安武人など、後の平成ガンダムシリーズ3部作のメインキャラクターを演じる声優が数多く出演している。
カテジナ役の渡辺は当時の収録の様子について「先の話がどうなるのかわからないままに演じていたため、キャストたちは毎回全力で自分の役にぶつかっていた」と前述のインタビューの中で振り返っている[12]。
商業的事情
当初は『勇者エクスカイザー』の後番組として『機動戦士ガンダムF91』のテレビシリーズ化が予定されていたが、同作の興行不振により頓挫し、企画を練り直した上で本作が制作された[13]。本作はSDガンダムを支持する小学生などの新しいファン層を開拓することによって、当時マニア化、高年齢化していたガンダムファン層の活性化を図る目的があった[14]。しかし難解な内容のため、本来の対象であるはずの小学生からは支持されず、結局旧来のガンダムファンがファンの中心となり、関連商品の購買層も高齢化した[15]。本作のビデオソフトの当時のアンケートによると当時の購買層は20歳代前半の男性で、ちょうど中学生の頃に『機動戦士Ζガンダム』『機動戦士ガンダムΖΖ』を見ていた世代に当たるという[16]。
本作が放映された1993年はリアルガンダムのプラモの売上が倍増しており、落ち込み気味だったSDガンダムの不振を補い、バンダイ模型部門の売上を伸ばした。しかし販売個数としては1000万に満たず、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』が公開された1988年と同程度に留まり[17][18]、さらに本来取り込みを狙っていた小学生層の支持獲得にも失敗した。特に後者が大きな要因となり、次作として企画されていた『ポルカガンダム』は製作中止[注 3]。結果としてそれまでの宇宙世紀シリーズとは全く異なる新シリーズである『機動武闘伝Gガンダム』への制作につながっていくことになる[19]。なお本作はサンライズとしては赤字だったものの、LDの好調により制作費を回収することができた[20]。『アニメージュ』1994年5月号においてバンダイビジュアルの高梨実は、本作はVTR・LD合わせて各巻平均1万5千本を販売したとコメントしている。高梨はTVアニメシリーズをソフト化した場合、通常は各巻平均約4千本ぐらいであり、それらに比べ本作の売り上げはかなりいいと述べている[16]。
なお当時バンダイがサンライズ買収を予定しており、サンライズ上層部は主力作品であるガンダムの人気を再燃させることで、より有利に買収を行わせようと意図していた。富野はこの事実を知らずに製作に入ったと後年述べており、そのことについて今でも当時のサンライズ上層部からの謝罪がなく、許せない旨を語っている[21]。
評価
幾原邦彦
アニメーション監督で音楽プロデューサーの幾原邦彦は、富野由悠季が1からガンダムを創り直そうとして、過去を捨てきれなかった作品だとして、企画段階ではシリーズ構成を担当する脚本家が起用されていたにも関わらず[22]、制作段階ではシリーズ構成の役職そのものを無くして、起用されていた脚本家の園田英樹をメインライターとして使い、総監督の富野が本作のストーリー構築の主導権を握ったことに言及して、「本人は死んだつもりでやり直しているつもりだろうが、やっぱり死んでないんじゃないかという気がする」と語って、本作を評価しているのはアニメ業界の人間だけで、視聴者側の子供たちは本当に面白がっているのか疑問に感じると述べている[23]。
注釈
- ^ クレジットではメカニカルデザイン協力となっている。アニメーターが描きやすいように元のメカデザインを作画参考用に描き直した[1]。
- ^ アニメ作品以外では、実写ドラマ『G-SAVIOUR』は宇宙世紀0223年と設定されている。また、『ガンダム Gのレコンギスタ』は宇宙世紀が改暦された後の世界、『∀ガンダム』は(非宇宙世紀を含めた)全てのガンダム作品の遠い未来と設定されている。
- ^ 当初『Vガンダム』の後続作品案は、それまでのガンダムシリーズらしさを踏襲する企画で決まりかけていた。内容は火星に移住した人類が、母なる星、地球に戻ろうとすることによって起こる「地球住民」と「火星移民」との摩擦を描いた大河ドラマで、企画名は『ポルカガンダム』であった[14]。
- ^ 1993年9月までの社名は『静岡県民放送』(通称:静岡けんみんテレビ)で、同年10月に現社名に変更された。
- ^ 1993年10月開局から
- ^ 1993年4月8日よりネット開始。
- ^ HGExであるV2は設定通りの変形を実現していたが、頭部を収納する関係から胴体の造形のプロポーションが大きく崩れていた。
- ^ 変形時に手首は取り外す。
- ^ ヴィクトリーガンダムとコア・ブースターが同梱されたセット発売された。
出典
- ^ “アニメ業界ウォッチング第33回:吉田健一が語る「キャラクターデザイン」に求められる能力”. アキバ総研. 株式会社カカクコム (2017年5月28日). 2021年8月11日閲覧。 アーカイブ 2021年8月10日 - ウェイバックマシン
- ^ 上野五郎(編)「MARKET EYE〔HOBBY〕第1回APSカップ開催。新作ガンダム登場」『トイジャーナル』1993年3月号、東京玩具人形協同組合、1993年3月1日、59頁。
- ^ 「ALLNEW 新世紀GUNDAM」『月刊ニュータイプ』1993年4月号、角川書店、1993年4月1日、17頁、雑誌07009-4。
- ^ 『月刊ニュータイプ』1993年2月号、角川書店。
- ^ 富野由悠季の世界 2019, pp. 310–313.
- ^ a b “PRODUCT(商品情報)”. 機動戦士Vガンダム公式サイト. 2015年3月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年3月14日閲覧。 アーカイブ 2015年3月14日 - ウェイバックマシン
- ^ 小牧雅伸 編「総監督富野由悠季インタビュー」『機動戦士Vガンダム大事典』ラポート〈ラポートデラックス〉、1994年5月10日、80頁。雑誌69160-44。
- ^ 富野由悠季『∀の癒し』角川春樹事務所、2000年、28頁。ISBN 4-89456-189-1。ただし同書8頁には「著者の職業上、多少の脚色・演出を加えている」との断り書きがある。
- ^ 『GREAT MECHANICS. DX7』、双葉社、2008年12月15日、[要ページ番号]、ISBN 978-4-575-46443-6。
- ^ a b c “【Style of the PRINCE】第12回ゲスト:阪口 大助さん Vol.2”. Girls Style. 2012年1月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年2月15日閲覧。 アーカイブ 2012年1月5日 - ウェイバックマシン
- ^ a b 沖本茂義 (2015年9月25日). “「機動戦士Vガンダム」ウッソ役・阪口大助インタビュー “本当に乗りたかったのはズゴックです”(2ページ目)”. アニメ!アニメ!. イード. 2018年7月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年2月15日閲覧。 アーカイブ 2018年7月21日 - ウェイバックマシン
- ^ a b c “阪口大助&渡辺久美子の間「教えて!マイブーム」”. V-Storage. バンダイビジュアル (2015年6月10日). 2018年7月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年2月15日閲覧。 アーカイブ 2018年7月21日 - ウェイバックマシン
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- ^ 日経キャラクターズ!, ed (2004). 大人のガンダム. 日経BPムック. 日経BP社. p. 45. ISBN 4-8222-1705-1
- ^ a b 『アニメージュ』1994年5月号、徳間書店、66頁。
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- ^ 『ガンダム 無限のリアル ◇進化重ねてプラモデル発売30年◇』(2010年9月15日 日本経済新聞)にて、川口克己は本作の商品展開に苦戦したと述べている。
- ^ ガンダム神話Zeta 1997, pp. 25, 96, 108
- ^ 僕たちに出来ることは何があるのだろうか? 今こそ「今、そこにいる僕」を語る - ウェイバックマシン(2004年8月11日アーカイブ分)
- ^ ササキバラ・ゴウ「第3部 Vガンダムという戦い 富野由悠季インタビュー」『それがVガンダムだ ―機動戦士Vガンダム徹底ガイドブック―』銀河出版、2004年2月7日、164-170頁。ISBN 4-87777-054-2。
- ^ マッツー@ウソシャク過激派 [@cubecubem] (2023年9月28日). "フォロワーさんと話してる最中気になって調べてみると、". X(旧Twitter)より2024年2月20日閲覧。
- ^ 『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会』、1993年12月30日発行、庵野秀明・編、ハッピー興行新社、P79~80
- ^ 『UX新潟テレビ21 30年史』(2014年3月、新潟テレビ21発行)102ページ。
- ^ 猪俣謙次『ガンダム神話Zeta』ダイヤモンド社、1997年2月28日初版発行、106頁。ISBN 4-478-95021-0。
- ^ toshiya_iwamuraの2022年7月18日のツイート、2024年1月27日閲覧。
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- ^ 長谷川裕一『機動戦士Vガンダム外伝』原案:矢立肇・富野由悠季、角川書店〈角川コミックス・エース〉、1995年、259頁。ISBN 4-04-713119-9。
- ^ 『機動戦士クロスボーン・ガンダム メカニック設定集』角川書店、2021年、151頁。ISBN 978-4-04-111272-4。
- ^ “機動戦士Vガンダム:外伝「オデロ・ヘンリークからの手紙」 「ガンダムエース」で連載スタート”. MANTANWEB (2023年12月25日). 2024年2月5日閲覧。
- ^ 『ガンダムエース』2024年2月号203 - 242頁。KADOKAWA。
- ^ “MGV2ガンダム HGUCキュベレイ等【2015全日本模型ホビーショー レポ1】バンダイ編その1”. 2015年9月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年9月30日閲覧。 アーカイブ 2015年9月29日 - ウェイバックマシン
- 1 機動戦士Vガンダムとは
- 2 機動戦士Vガンダムの概要
- 3 物語
- 4 登場人物
- 5 放送局
- 6 参考文献
固有名詞の分類
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