日本フィルハーモニー交響楽団 演奏会

日本フィルハーモニー交響楽団

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演奏会

主な主催公演

共催公演他

日本フィル・シリーズ

「日本フィル・シリーズ」は日本フィル創立期の1958年より始められた日本人作品の委嘱シリーズで、演奏会初演を前提とした日本音楽史上稀な委嘱制度である。代表的な日本の大家から新人まで作曲家が広く選定され、作品傾向も古典から前衛まで多岐にわたる。

第1作の矢代秋雄『交響曲』以来、現在まで40作(第8作は欠番)ある。

日本フィル・シリーズ作品リスト
通算 作曲家 作品名 初演年月日 初演会場 指揮者 ソリスト
第1作 矢代秋雄 交響曲 1958年6月9日(第9回定期演奏会) 日比谷公会堂 渡邉暁雄
第2作 間宮芳生 ヴァイオリン協奏曲 1959年6月24日(第16回定期演奏会) 日比谷公会堂 渡邉暁雄 松田洋子(Vn)
第3作 入野義朗 交響曲 1959年12月8日(第20回定期演奏会) 日比谷公会堂 渡邉暁雄
第4作 三善晃 交響三章 1960年10月14日(第26回定期演奏会) 日比谷公会堂 渡邉暁雄
第5作 柴田南雄 シンフォニア 1960年12月12日(第28回定期演奏会) 日比谷公会堂 渡邉暁雄
第6作 武満徹 樹の曲 1961年5月22日(第33回定期演奏会) 日比谷公会堂 渡邉暁雄
第7作 別宮貞雄 交響曲第1番 1962年1月18日(第39回定期演奏会) 東京文化会館 渡邉暁雄
第8作 欠番
第9作 黛敏郎 弦楽のためのエッセー 1963年1月30日(第57回定期演奏会) 東京文化会館 渡邉暁雄
第10作 山本直純 和楽器とオーケストラのためのカプリチオ 1963年6月27日(第67回定期演奏会) 東京文化会館 渡邉暁雄
第11作 清瀬保二 日本の素描 1964年1月28日(第77回定期演奏会) 東京文化会館 渡邉暁雄
第12作 高田三郎 宮沢賢治詩による「無声慟哭」 1964年3月27日(第81回定期演奏会) 東京文化会館 渡邉暁雄 三觜晶子(Sp)、栗林義信(Br)、横森久(ナレーター)、東京混声合唱団
第13作 安部幸明 シンフォニエッタ 1965年1月14日(第92回定期演奏会) 東京文化会館 渡邉暁雄
第14作 松村禎三 交響曲(第1番) 1965年6月15日(第102回定期演奏会) 東京文化会館 渡邉暁雄
第15作 諸井誠 カインの幻影 1966年1月28日(第113回定期演奏会) 東京文化会館 渡邉暁雄
第16作 間宮芳生 二重合奏協奏曲 1966年6月14日(第122回定期演奏会) 東京文化会館 渡邉暁雄
第17作 野田暉行 交響曲 1966年12月8日(第130回定期演奏会) 東京文化会館 渡邉暁雄
第18作 芥川也寸志 オスティナート・シンフォニカ 1967年5月25日(第141回定期演奏会) 東京文化会館 渡邉暁雄
第19作 戸田邦雄 六つの楽器と管弦楽のための合奏協奏曲 1968年1月25日(第153回定期演奏会) 東京文化会館 渡邉暁雄
第20作 小倉朗 交響曲 1968年6月13日(第162回定期演奏会) 東京文化会館 渡邉暁雄
第21作 高橋悠治 「オルフィカ」 1969年5月28日(第181回定期演奏会) 東京文化会館 小澤征爾
第22作 篠原眞 オーケストラのための「ヴィジョンII」 1970年6月11日(第202回定期演奏会) 東京文化会館 小澤征爾
第23作 石井眞木 遭遇II番―雅楽とオーケストラのための 1971年6月23日(第223回定期演奏会) 日比谷公会堂 小澤征爾
第24作 林光 ウィンズ 1974年6月25日(第263回定期演奏会) 東京文化会館 渡邉暁雄
第25作 広瀬量平 管弦楽のための「クリマ」 1976年11月15日(第286回定期演奏会) 東京文化会館 渡邉暁雄
第26作 外山雄三 「花をささげる」 1977年1月22日(第288回定期演奏会) 東京文化会館 外山雄三 成田絵智子(Ms)
第27作 小山清茂 管弦楽のための鄙歌第2番 1978年6月8日(第303回定期演奏会) 東京文化会館 渡邉暁雄
第28作 池辺晋一郎 トライアス―シンフォニーII 1979年7月4日(第314回定期演奏会) 東京文化会館 渡邉暁雄
第29作 吉田進 「縄文」 1982年4月9日(第47回定期演奏会) 神奈川県民ホール 渡邉暁雄
第30作 松村禎三 チェロ協奏曲 1984年2月27日(第360回定期演奏会) 東京文化会館 渡邉暁雄 安田謙一郎(Vc)
第31作 吉松隆 鳥たちの時代 1986年5月24日(第382回定期演奏会) 東京文化会館 井上道義
第32作 細川俊夫 フルート協奏曲「ペル・ソナーレ」 1988年5月26日(第401回定期演奏会) 東京文化会館 大友直人 ピエール=イヴ・アルトー(Fl)
第33作 牧野謙 PHASES 1989年12月14,15日(第416回定期演奏会) サントリーホール 小林研一郎
第34作 吉松隆 トロンボーン協奏曲「オリオン・マシーン」 1993年4月15,16日(第449回定期演奏会) サントリーホール 外山雄三 箱山芳樹(Tb)
第35作 三善晃 管弦楽のための「霧の果実」 1997年1月16,17日(第487回定期演奏会) サントリーホール 広上淳一
第36作 湯浅譲二 内触覚的宇宙V-オーケストラのための 2002年1月17,18日(第537回定期演奏会) サントリーホール 尾高忠明
第37作 西村朗 交響曲第3番「内なる光」 2003年7月10,11日(第552回定期演奏会) サントリーホール 沼尻竜典
第38作 猿谷紀郎 「潦の雫」 2004年10月21,22日(第564回定期演奏会) サントリーホール 下野竜也
第39作 北爪道夫 「様々な距離」 2005年6月2,3日(第570回定期演奏会) サントリーホール 沼尻竜典
第40作 野平一郎 オーケストラのための「トリプティーク」 2006年7月13,14日(第582回定期演奏会) サントリーホール 沼尻竜典
第41作 尾高惇忠 ピアノ協奏曲 2016年3月4,5日(第678回定期演奏会) サントリーホール 広上淳一 野田清隆(Pf)
  • 第30作は創立25周年記念委嘱作品、第35作は創立40周年記念委嘱作品、第36作は創立45周年記念委嘱作品である。
  • 第8作は林光に作曲を委嘱し、完成したものの作曲者自身によって全面的な改作のために初演が撤回された。[4]

日フィル争議

日本フィルは1956年に文化放送が設立した後、財団法人となりフジテレビと文化放送の放送料により運営されてきたが、1972年6月に両社はオーケストラの解散と楽団員全員の解雇を通告して放送料支払いを打ち切り財団も解散した。表向きの解散理由としてオーケストラ運営に多額の資金が必要なことが示されたが、1971年5月に日本フィルハーモニー交響楽団労働組合が結成され、同年12月に同労組が日本音楽史上初の全面ストライキを実行したことが遠因とされる。

楽団員のおよそ3分の2はオーケストラと労働組合にとどまり、自主的な演奏活動で運営資金を確保しつつ、解雇不当により東京地方裁判所へ提訴して解決を求めた。一方、当時の首席指揮者小澤征爾を中心とする元団員により新日本フィルハーモニー交響楽団が設立される。

初代常任指揮者の渡邉暁雄は1969年にスイスへ移住する際に日本フィルを離れたが、争議中の1978年に復帰して以後もオーケストラの精神的支柱として活動した。演奏活動が全国的に展開されて音楽家や音楽愛好家・聴衆らの広範な支援を受けながら争議され、1984年3月16日、「フジテレビ・文化放送両社は労組側に2億3000万円の解決金を支払う」、「日本フィル労組はフジテレビ構内の書記局を明け渡す」ことなどで和解が成立した。争議解決の1984年4月、渡邉暁雄は日本フィルから「創立指揮者」の称号を贈られた。

争議の影響

音楽家の権利意識の向上につながり、争議の過程で1983年、全国的職能組織の日本音楽家ユニオンが結成される。

全容は外山雄三・中村敬三『オーケストラは市民とともに―日本フィル物語』(岩波書店)に詳しい。今崎暁巳が『友よ!未来をうたえ/日本フィルハーモニー物語』(「正」1975年、「続」1977年)を著し、これを原作とする映画『日本フィルハーモニー物語 炎の第五楽章』(1981年日活、監督・脚本:神山征二郎、音楽:林光、指揮:渡邉暁雄、演奏:日本フィルハーモニー交響楽団、出演:風間杜夫田中裕子ほか)も制作された。

「市民とともに歩むオーケストラ」

「市民とともに歩むオーケストラ」のスローガンは争議の経験から生まれた。精力的に展開された自主的な演奏活動から、北海道から九州に至る日本各地での公演活動が定着し、地域音楽振興として1994年に杉並区と友好提携を結び、「市民のためのアウトリーチ活動」など交流プログラムを実施している。

オーケストラと社会をつなげ、価値や豊かさを生み出すための活動を「音楽の森」として実施[5]。地域コミュニティー、学校や病院とのコンサートを多数開催し、東日本大震災の被災自治体である南相馬市などを訪れ、音楽を通じた被災地支援を200回以上行っている[6]

2018年6月には、日越外交関係樹立45周年記念事業の一環として、弦楽四重奏がベトナムダナンホイアンの両市で公演[7][8]。公式演奏会、子ども体験コンサート、癌病院慰問、ユネスコ世界遺産・日本橋前などでコンサートを行った[9][10]


  1. ^ NHK交響楽団東京フィルハーモニー交響楽団東京都交響楽団などの他の在京プロオーケストラの多くは既に公益財団法人へ移行していた。
  2. ^ 日本フィル存続のために「公益財団法人」認定に向けてご支援のお願い(日本フィル公式サイト)
  3. ^ ご報告とお礼(日本フィル公式サイト)
  4. ^ 日本フィルシリーズの歴史(日本フィルハーモニー交響楽団ツイッター 2012年6月25日投稿記事)
  5. ^ 日本フィルの活動(教育・地域) ~音楽の豊かさをより多くの人に~”. 日本フィルハーモニー交響楽団. 2018年8月10日閲覧。
  6. ^ すぎなみ区役所. “被災地支援” (日本語). 杉並区公式ホームページ. http://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/kusei/furusatonouzei/tsukaimichi/1032467.html 2018年8月10日閲覧。 
  7. ^ 日本フィルハーモニー交響楽団カルテットダナン・ホイアン交流演奏会 ~日越友好45周年記念~ : 在ベトナム日本国大使館”. www.vn.emb-japan.go.jp. 2018年8月10日閲覧。
  8. ^ 日越外交関係樹立45周年(2018年)関連事業(案)”. 在ベトナム日本国大使館. 2018年8月10日閲覧。
  9. ^ ダナン駐日代表部公式サイト - ぐっと身近に!ダナン”. www.oeri.co.jp. 2018年8月10日閲覧。
  10. ^ 日本フィルハーモニー四重奏コンサート”. ダナン駐日代表部. 2018年8月10日閲覧。






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