対馬
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生物相
島の面積の約88%を照葉樹などの山林が占める。原始林やスギ、大ソテツなどが国や県によって天然記念物に指定されており、豊かな自然にめぐまれている。本来の植生は広葉樹林であるが、林業によって生まれた針葉樹林も多い。植生は全般的に九州本土に類似するが、九州では山地に多い夏緑樹が低地にも見られる。
動植物とも、大陸系種、対馬固有種、対馬固有亜種、および日本本土系種が混在する。九州本土に多くて対馬に全くいない種や、対馬に多く九州本土では少ないという種もあり、独特の生物相を形成している。そのため、対馬より南側の本土方面との間に動物地理区の境界線として「対馬海峡線」が引かれている[15](一方で、朝鮮半島側との動物相の差異に注目して半島との間に「朝鮮海峡線」を引く説もある[16])。
2017年(平成29年)2月にはカワウソの姿が対馬に設置された琉球大学のカメラにとらえられ、同年8月に発表された。日本国内で1979年(昭和54年)に高知県で最後にニホンカワウソが目撃されてから38年ぶりとなる。カワウソの種類(ニホンカワウソかユーラシアカワウソか)などの詳細はこれから調査・研究される予定。
対馬の沿岸部には、所々に小規模なサンゴ礁が分布している。2007年(平成19年)には、対馬のサンゴ礁でも白化現象が確認された[17]。
主な固有種・固有亜種
- 哺乳類 - ツシマジカ、ツシマテン、クチバテングコウモリ、対州馬(家畜種)
- 鳥類 - チョウセンエナガ、チョウセンハシブトガラス、ツシマコゲラ(隠岐にも分布)
- 爬虫類 - ツシマスベトカゲ、ツシママムシ
- 両生類 - ツシマアカガエル、ツシマサンショウウオ
- 昆虫類 - ツシマヒメボタル、ツシマメクラチビゴミムシ
- 軟体動物 - ツシマナメクジ
- 植物 - オウゴンオニユリ、ツシマギボウシ、ツシマトウヒレン、ツシマニオイシュンラン、ツシマラン(絶滅?)
主な大陸系種
- 哺乳類 - コジネズミ、ツシマクロアカコウモリ、ツシマヤマネコ
- 鳥類 - キタタキ(絶滅)、ミヤマホオジロ(繁殖)、シロハラ(繁殖)
- 爬虫類 - アムールカナヘビ、アカマダラ
- 両生類 - チョウセンヤマアカガエル
- 昆虫類 - ツシマカブリモドキ、アキマドボタル、キンオニクワガタ、チョウセンヒラタクワガタ、ツシママダラテントウ、ハラアカコブカミキリ、チョウセンケナガニイニイ、タイワンモンシロチョウ、ツシマウラボシシジミ
- 植物 - チョウセンキハギ、チョウセンヤマツツジ、ムジナノカミソリ
自然保護と環境行政
対馬は、日本では対馬にしか生息しないユーラシア大陸との共通種が数多く生息しており、これらはかつて大陸と陸続きであったことを物語る貴重な動植物である。また、南方系の動物も生息し、対馬固有の動植物も多い。このため、各地に自然保護区が指定され、自然環境の保護がはかられている。
透明度の高い海は浅茅湾や神崎などで海中公園となっており、昭和43年7月22日には、対馬全島は壱岐島とともに壱岐対馬国定公園に指定された。
ツシマヤマネコなど希少種の保護のため、平成元年11月1日に主島北部の伊奈地区が国指定伊奈鳥獣保護区に指定された。また、洲藻白岳原始林、龍良山原始林、御岳鳥類繁殖地、鰐浦ヒトツバタゴ自生地が、国の天然記念物としてそれぞれ地域指定されている。とりわけ龍良山原始林は、日本有数の原生林[8]として知られる。島の北西には環境省対馬野生生物保護センターが設けられた。
2013年8月29日、絶滅危惧種である「ツシマヤマネコ」が唯一生息する広大な森林地が競売入札に付されていたが、市や裁判所に環境保護団体など全国から購入の申し出が相次ぎ、対馬市は反響の大きさなども含め購入に踏み切った[18]。森林の大きさは東京ドーム55個分に相当し、対馬でこのような広大な森林地が売りに出されるのは初めてで、韓国の業者も関心を示していた[18]。
注釈
- ^ 平成28年三角点標高成果の改定に伴う標高変更で649mから648mと1m低くなった。[9]尚、山頂にある三等水準点の標高は648.40m[10]。
- ^ 三等三角点 基準点名:真石、基準点コード: TR35129129001
- ^ 二等三角点 基準点名:男竜良、基準点コード:TR25129117701
- ^ 一等三角点 基準点名:有明山、基準点コード:TR15129224101
- ^ 峰町歴史民俗資料館の展示物
- ^ 正確には『三国志』魏書・東夷伝・倭人条
- ^ 現・対馬市の美津島町に玉調(たまつき)の地名があり、古代においては玉調郷があるので、その地の有力者の子女と思われる。遊女説には根拠がない。
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