喀血 喀血の概要

喀血

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/07/20 04:38 UTC 版)

喀血
ICD-10 R04.2
ICD-9 786.3
DiseasesDB 5578
MedlinePlus 003073
MeSH D006469

概要

喀血とは、気道出血のことである。すなわち、または気管支からの出血である。喀血関連血管は下行大動脈の分枝であることが多いが、鎖骨下動脈や腋下動脈の分枝であることもしばしばである。気管支動脈などが形成する気管支動脈-肺動脈シャントに起因する出血であることが大半(95%程度)を占める。通常を伴い、血は真っ赤で泡を含むことが多い。呼吸困難を伴うこともある。

吐血・血痰との違い

混同されがちの言葉に吐血血痰がある。

吐血

気道からの出血が喀血であるのに対して、吐血は消化管からの出血である。吐血の場合、胃潰瘍などによるあるいは十二指腸からの出血で、血液が胃液による酸化を受けて黒色となる。コーヒーの滓に似ており「コーヒー残渣様」と表現される。但し、吐血でも肝硬変などに伴う食道静脈瘤からの出血は、胃液と接触しないため赤い。

喀血 吐血
出血状態 咳に伴う 嘔吐に伴う
性状 泡沫を伴う 食物残渣混入
pH(テステープ) 中性 酸性
随伴症状 胸痛、呼吸困難など 腹痛、嘔吐、嘔気、下血など

喀血を飲み込み、それを後に吐血することもあるため、両者の区別は時に難しいこともある。喀血と吐血の区別がつかない場合は、呼吸器と消化器の両方の精査が必要である。

血痰

に血液が混じる場合があるが、これは通常、喀血とは呼ばず血痰という。ただしそれらの境界は曖昧であり、少量でも液体としての血液である場合には小喀血と呼んだりもする。3ml以下を血痰と定義する立場もある。また、喀痰全体が赤い場合には全血痰・線状に血液が混じる場合には血線痰、血液が混じった痰という意味で血液混入痰などという呼称を呼吸器内科の現場では使うこともある。血痰と喀血は、どちらも気道出血を示す徴候であるため、血痰の原因は喀血と同様であるが、そのほかに、鼻血鼻腔から喉に落ちて排出される場合や、咽頭や喉頭の腫瘍からの出血などの耳鼻科的な問題であることもある。なお、血痰は英語でhemosputumであるが、実際に英語圏で使用されることはほとんどなく、血痰も喀血も含めてhemoptysisという単語が一般的に用いられている。

原因・危険性

喀血の原因となる基礎疾患には、気管支拡張症・非結核性抗酸菌症・活動性肺結核・肺結核後遺症・肺アスペルギルス症・肺癌・特発性喀血症・気管支動脈つる状血管腫などがある。このうち特発性喀血症とは、特に背景となる基礎疾患を持たない喀血であり、胸部レントゲン・胸部CT気管支鏡などを実施しても出血以外の異常を指摘できない。そのほとんどは喫煙者である。特発性喀血症は医師の間ですら認知度が低いが、喀血専門医にとってはありふれた疾患である。

喀血は気道出血であるため、窒息(気管・気管支閉塞)による死亡につながることがあり、呼吸器救急の最も代表的な症候の一つとされる。気道閉塞を起こすリスクは喀血量に比例し、特に空洞を伴う肺結核後遺症や肺アスペルギルス症に多いが、一方で、一般的には予後良好な特発性喀血症であっても気管内挿管を要する大喀血も稀にみられ、油断は禁物である。大量喀血の一般的定義は24時間以内に200ml以上の喀血であるが、文献によって幅がある(100~600ml)致死率は80%にも及ぶという報告もある。

マネジメント

窒息による喀血死の恐れもあり、必ず呼吸器科を受診すべきである。 まず行うべきことは気道確保といった全身管理である。気管内挿管を行う場合は後に気管支鏡を挿入するために太めのチューブで挿入することが望ましい。そして、出血源の肺を下とする側臥位の姿勢をとらせる。これは患側から健側へ血液が流入するのを防ぐためである。出血源の精査は胸部X線で行うことが多いが、CTによるいわゆる出血吸い込み像の確認がより有用である。ただしほとんど喀出してしまっていて出血量が多いのに吸い込み像が全くないこともしばしばではある。その場合は気管支鏡によって、出血部位を同定することはその後の治療上有意義であることも多い。前述のように吐血や耳鼻科疾患との鑑別が不十分であった場合は上部消化管内視鏡などをさらに追加する場合もある。喀血における活動性結核の比率は一般に内科医が考えているよりはるかに小さいが、できるだけ喀痰塗抹検査は提出すべきであるし場合によっては隔離の必要性も考慮する。

治療としてはまずは血管確保し、止血剤の点滴をする。ただし止血剤の点滴は一時的な対症療法であるばかりか明確なエビデンスもなく、一旦止まっても再喀血する可能性が高い。根治療法としては、超選択的気管支動脈塞栓術 (BAE)がゴールデンスタンダードである。これはカテーテルという血管造影用チューブを用いた局所麻酔下での治療であり、いわゆるカテーテルインターベンションの1種である。ただし実施できる施設は少なく、また実施していても年間数例程度という施設が多かったが、近年、岸和田盈進会病院 喀血・肺循環センターや国立病院機構東京病院 呼吸器センター、あるいは東海大学医学部付属八王子病院 画像診断科など、年間数十例から300例(手技数)のBAEを実施する専門性の高いhigh volume centerも出現してきている。BAEの長期成績(止血率)は、塞栓物質の違いや技術による施設間格差が大きいが、1年後止血率は最先端の施設では90%前後に達している。肺アスペルギルス症など、BAEの有効性が低く病変が限局する疾患については外科手術が行われることもあるが、大量喀血の緊急手術は死亡率が20%という報告もある。

最近では、EWSというシリコン製充填物を出血気管支に留置する気管支鏡インターベンションである気管支充填術も一部で行われるようになってきた。これについては、大喀血中には視野が制限され実施困難であること、術後の閉塞性肺炎などが問題となっており、BAEに代わりうるものではないが、BAEを直ちに実施できない場合の橋渡し的な役割が今後期待される。




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