プロトタイプ 鉄道車両

プロトタイプ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/18 08:12 UTC 版)

鉄道車両

新しい鉄道車両を開発する場合も、プロトタイプを作る。

まずはコンセプト図や図面を描いてみるが、空気力学上の性能を確かめるためにはまずは外形だけを形にしたプロトタイプをつくり、風洞実験で具体的な性能の数値を把握する。

線路上で走らせるプロトタイプもあり、「試作車」などと呼ばれる[4]

プロトタイプ車を用いた試験や試験運行でデータを集め、改良したほうがよい点が見つかれば、仕様を修正したものを量産車の仕様とする。 プロトタイプは、通常、廃棄されるというわけではなく、試験段階で改良すべき点が見つかれば、そこだけ改良を施し、量産化が実現し同型の車両が増えた後も、そのまま実際の営業運転に利用されることが多い。量産車と同一に改造される例も多いが、許容範囲であれば、多少異なっていてもそのまま使用される事例も珍しくない。

鉄道車両のプロトタイプの形式は、やや特殊である(モハ90系→101系EF90→EF66901系→209系)。また番台区分が異なっていたり(209系950番台→E231系900番台)、外観や組成・編成などが量産車と異なる場合(300系新幹線J1編成700系新幹線C1編成400系新幹線S4編成→L1編成E3系新幹線S8編成→R1編成207系F1編成など)がある。

また、試験した結果 量産が見送られた場合には、プロトタイプは「1形式1両のみ」(や「数両のみ」など)の車両となってしまうことがある(前者では国鉄207系713系、後者ではJR東日本クハ415-1901や、日本貨物鉄道(JR貨物)のEF500およびED500が該当する)。さらに一連の試験を終了した車両や量産が見送られた車両については、共通運用が組めない使い勝手の悪さなどから、車齢が10年を満たないうちに廃車となる場合もある(後者ではE331系など)。また、営業運転はおろか試験を行う事なく廃車された車両も存在する(キハ285系がその例[5])。JR東海N700系N700S系の先行試作車(9000番台)のように、量産車登場後は営業運転に投入されず、そのまま試験用の編成とされる例もある。


  1. ^ しに」という意味になるように造語された用語である。ただしこの言葉を使う人が皆、これを言う前に毎回それをはっきり意識しているかどうかは定かではない。
  2. ^ 野球で打席に立ってバットを振っても、出塁できるのは通常は2〜3割程度にすぎず、残りの7〜8割は結果が出ずベンチに戻る、というのと同じことが、開発の世界でも通常は起きている。消費者の側は、製品化されて自分が眼にすることになったものばかりに気を奪われ、そういったもののプロトタイプの情報ばかりを見ているので、プロトタイプはきっと量産化すると勘違いしているきらいがあるが、そうではなく、たいていのプロトタイプは、何度か作っても期待ほど使い勝手が良くなかったり、期待の性能値が出せなかったり、仕様を詰めて生産コストなどを計算してみたら採算が採れないと判明するなどして、製品化されずに終わる。形にしたことでそのようなことが分かり、無謀な大量生産をせずに済み、破綻を免れることができるということも、プロトタイプを作る目的のひとつである。
  3. ^ いきなりの大量生産したとして、生産ラインの端から次々と出てきたものを見て、その段階で、ほぼ間違いなく品質が不完全な品(不良品)だと気づくことになる。(「かも知れない」ではない、ほぼ間違いなく、である)、大量の不良品を作る結果を生み、不良品は販売することもできず、うっかり販売すれば自社製品の信用はガタ落ちとなりその後は自社製品の売上は低迷する。またうっかり販売してしまった不良品は自社負担で(送料なども負担するなどして)回収しなければならなくなり大赤字であるし、また不良在庫の山を作り出し結局廃棄物として処分するのに莫大な費用がかかる。小規模な会社やスタートアップ企業なら不良品の大量生産を1〜2回するだけで倒産する。大企業も数回やらかすと信用がガタ落ちとなり、販売が低迷し、没落してゆく。もちろん、滅びたければ、どんなガラクタでも大量生産はできる。
  4. ^ 日本においては、プロトタイプの段階から次の段階へ進み、人々に見せてもよい段階に入ったものは「デモ版」「デモ・プログラム」「ベータ版」、まれに「アルファ版」(ベータ版の更に手前)などと呼ばれる。
  5. ^ 他社との競争に勝つために開発段階の技術は、基本的に、他社に漏れないようにする。 秘匿のしかたについて言うと、 サスペンションエンジントランスミッションなどの見えづらい部分について新しい技術を導入する場合、現行型を改造してプロトタイプとする場合もある(その場合、外観ではプロトタイプとは知られない)。フレームや雨避けに関するプロトタイプだと、見る人が見れば現行車種と異なることが分かり、プロトタイプとバレてしまう。秘匿するために、スタイリング決定後に公道で試験を行うプロトタイプは、人々に知られないように、覆面偽装を施すこともある。
  6. ^ 例外はある。人間は他人(他社)の秘密を知りたがるという心理的性質を利用して、まるで釣りの疑似餌のように、人々の関心を釣るために使うのである。マーケティングブランディング手法のひとつである。プリンス・R380トヨタ・2000GT速度記録試験車、果てはソニーが次世代のカーエレクトロニクス・カーデバイスの検証用として試作されたセダン型電気自動車・VISION-Sなどは、宣伝目的で、意図的にメディアに露出された。
  1. ^ a b 精選版 日本国語大辞典「プロトタイプ」
  2. ^ Merriam Webster, prototype.
  3. ^ McDermott, Kara (2018年7月17日). “Eat your heart out, Elon Musk: Behold these ugly electric cars from Seattle's past” (英語). KUOW. http://archive.kuow.org/post/eat-your-heart-out-elon-musk-behold-these-ugly-electric-cars-seattles-past 2021年6月11日閲覧。 
  4. ^ 試作していても《試作止まり》になってしまうことはあるのだが、"試作車は量産に至るのが当たり前だ" と思っている人は、(事後的に)「量産先行車」「先行量産車」などと呼ぶこともある。
  5. ^ JR北海道の相次ぐ事故、不祥事及び、北海道新幹線の開業準備の計画、安全性に伴い開発が中止されたため。






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