聖徳の王権とは? わかりやすく解説

聖徳の王権

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/10 15:29 UTC 版)

絹本著色後醍醐天皇御像」の記事における「聖徳の王権」の解説

後醍醐天皇理想論独裁君主異形天皇見なすことへの疑問は、まず、法制史研究分野から出された。市沢哲は、1988年から1992年にかけて、鎌倉時代末期西国裁判事例検証し鎌倉時代朝廷訴訟制度の改革取り組むにつれて都市貴族たちが裁判調停者として治天の君に頼る事例徐々に大きくなることを指摘した。つまり、後醍醐天皇進めた中央集権政策は、後醍醐個人性格思想よるものというよりは、朝廷訴訟制度改革による「治天の君権力集中延長上にあるものであり、後醍醐時代要請応えたのであることを指摘した続いて1998年伊藤喜良は、佐藤進一の「綸旨万能主義」(全て綸旨天皇私的な命令文)で決め主義)説を否定した綸旨万能とは、後醍醐元弘の乱終戦直後という組織整わない時期に、急場凌ぎ暫定的措置として、綸旨多く発給したからそのように見えたに過ぎないという。そして、実際は、佐藤が「新政挫折」と定義した雑訴決断所等こそが、非人機関通した統治として、建武政権完成形と見られることを指摘した市沢伊藤説は21世紀に入ってから注目浴び2000年代から後醍醐への再評価始まり鎌倉時代建武政権室町時代法制度には連続性見られることが次々と指摘され2010年代には後醍醐建武政権において現実的優れた政策行っていたと評価されるようになった加えて2006年から2010年にかけて、仏教美術研究者内田啓一は、仏教信仰上においても後醍醐天皇異形と言うことはできない指摘した網野異端的見なし本作品と結びつけた「聖天供」という祈祷は、実際に息災(仏の力で病気天災鎮めること)の祈祷であり、そこにいかがわしい意味はない。聖天供説明に「怨霊退散云々と言った文句用いられることがあるが、怨霊退散し息災を祈るのは真言密教常套句であり、幕府への呪詛考えることはできないという。 内田また、本作品の場面が、当時真言宗最高の神聖な灌頂授位儀式)である「瑜祇灌頂」であることを、『清浄光寺記録』(『十二代尊観上人系図』)・『瑜伽伝灯鈔』・『東宝記』などを用いて示した。その瑜祇灌頂にしても確かに在俗天皇として受けた事例は他にないものの、それを受けるに足るだけの僧としてのキャリアは着実積んできており、その過程特異だった訳ではない。さらに、この灌頂で、父帝後宇多上皇もかつて身につけたことがある秘宝犍陀穀糸袈裟」を使用するなど、天皇家において異端なのではなく、むしろ敬愛する父の宗教政策受け継いでいることを指摘したまた、異形説を唱える網野善彦は、後醍醐は父より宗教にのめりこんだとして批判したが、内田によれば事実は逆であるという。後宇多高野山奥の院こもったり、僧として弟子取ったりなどしているが、後醍醐そこまではしておらず、密教修行者としては父より穏健派であるという。また、後醍醐腹心文観についても、実際高徳の僧であり、か優れた学僧画僧であるとして、武闘派妖僧説を否定した2018年『太平記』研究者兵藤裕己また、内田成果支持し後醍醐異形の王、文観異形の僧と見なすことに強く反駁した。現行の『太平記』のうち、特に巻第1・1213には、建武政権批判意図して『太平記』初稿本からの改竄があると推測され事実曲げてまで後醍醐文観個人的性格さえも中傷する傾向があり、異形の王権というのはこれらに根ざした虚像であるという。兵は、本図像の天皇法服をまとうという部分について、後醍醐の父の後宇多出家以前伝法灌頂を受け、治天の君として在俗のまま修法行っていたことを指摘し、特に奇異な点はない、と主張した。 兵主張によれば、この図像特徴的なのは、法服よりも、頭に通常の冠と冕冠両方付けている部分方にあるという。これは武田佐知子指摘するように、聖と俗双方至高存在であると当時なされた聖徳太子模したものと見られる(#太子信仰)。後醍醐父の後宇多は、政敵花園上皇による評伝によれば(『花園天皇宸記元亨4年6月25日条)、英邁な君主真言密教庇護者ではあったが、晩年出家して後は真言密教への傾倒あまりに過ぎており、政治疎かになったという。兵推測によれば、父に対して後醍醐聖徳太子を範としており、仏教庇護者ありながら世俗世界に留まって政治仏教バランス取っていた太子こそが、王者理想像だと考えたではないか、という。

※この「聖徳の王権」の解説は、「絹本著色後醍醐天皇御像」の解説の一部です。
「聖徳の王権」を含む「絹本著色後醍醐天皇御像」の記事については、「絹本著色後醍醐天皇御像」の概要を参照ください。

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