細菌の細胞壁
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/02 04:37 UTC 版)
ペプチドグリカンは後述する一部の古細菌の細胞壁の構成成分でもあるが、分子構造が異質なため、細菌の細胞壁の構成成分をムレイン、一部の古細菌の細胞壁の構成成分をシュードムレイン(古細菌の細胞壁にて後述)と呼ぶ。 細菌は、莢膜を含む細胞表層構造体の違いにより二つに分けられる。 グラム陰性菌 - ペプチドグリカンのペプチドは、メソ-ジアミノピメリン酸、アラニン、グルタミン酸から構成され、グラム陰性菌ではほぼ一定しているため、細胞壁から細かな分類はできない。細胞壁は、ペプチドグリカン(糖鎖とペプチドの化合物)と外膜で構成されている。この外膜はリポ多糖であり、糖の種類が分類の指標に使われる。厚さは10-15nm程度であり、ペプチドグリカンの占める割合はグラム陽性菌に比べて極めて低く5-10%程度。ムレイン2nm、外膜8nm。 グラム陽性菌 - 上記のメソ-ジアミノピメリン酸部分やペプチド部分の組成や、結合している糖の組成が異なるため、細胞壁の組成は細菌を分類学上の指標として重要となる。グラム陽性菌の細胞壁は20~80nmの厚さで、グラム陰性菌に比べてかなりの厚みを持っていて、ペプチドグリカンは40-90%程度を占める。また細胞壁にはタイコ酸といわれるアルコールとリン酸基の化合物が含まれている。細胞壁の主成分はムレイン。 両菌はグラム染色によって判別が可能である。 細菌の細胞壁(ムレイン)は、糖鎖およびペプチド鎖からなる二種類の鎖からなる。ムレインはグリカン鎖が1層あるいは2層からなる、単分子層あるいは二分子層である。 グリカン鎖:N-アセチルグルコサミンとN-アセチルムラミン酸が交互にβ(1→4)結合している糖鎖 テトラペプチド鎖:4つのアミノ酸がペプチド結合したもの(細菌によって異なるが主なアミノ酸はl-アラニン、d-グルタミン酸、メソ-ジアミノピメリン酸、d-アラニン) グラム陽性菌では、メソ-ジアミノピメリン酸のほか、LL-ジアミノピメリン酸、リジン、オルニチン、ヒドロキシリジン、ヒドロキシオルニチン、ヒドロキシ-ジアミノピメリン酸、ジアミノ酢酸、ランチオニンなどとなる。 以上の二種類の鎖は、以下の結合様式で結合し網目構造をとっている。 N-アセチルムラミン酸のカルボキシル基とl-アラニンのアミド結合 d-アラニンと隣り合うのテトラペプチドのメソ-ジアミノピメリン酸の遊離アミノ基のペプチド結合 すなわち、グリカン鎖が平行に並んでおり、N-アセチルムラミン酸に結合しているテトラペプチド同士が互いに結合し合いグリカン鎖に対して垂直方向への構造的強度を高めている。またテトラペプチド鎖は細胞膜側にも結合できるようになっており、これで細胞膜および細胞壁の結合をより強固なものにしている[要出典]。 グラム陰性菌の外膜にはリポ多糖が存在する。分類の指標となる糖類として、アラビノース、ガラクトース、キシロース、マジュロース、一部の放線菌ではアコフリオース、2-O-メルマンノースが検出できる。この外膜はタンパク質、脂質、リポ多糖から構成される。外膜のリポ多糖は、リピドAという複合脂質および様々な糖を含む多糖からなる。リピドAには、ファージやバクテオリシンのレセプターがあり、抗生物質や毒素から防御する機能を持っている。 グラム陽性および陰性菌ともに、細胞膜と細胞壁の間にペリプラズム空間という空隙がある。この空間には生体エネルギーや物質取り込みに関する多くの酵素が確認されている[要出典]。
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