保護されないもの
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 23:22 UTC 版)
「著作権法 (アメリカ合衆国)」の記事における「保護されないもの」の解説
著作権保護の要件を満たしておらず、かつ特許や商標権なども認められていないものは、パブリック・ドメインとみなされ、これらを第三者が無断で利用しても、上述の排他的権利を侵害したことにはならない。パブリック・ドメインの内訳は、(1) そもそも著作物性が認められないもの、(2) 著作物ではあるが著作権が「元来発生しない」もの、(3) 著作権は発生したが後に「消滅した」ものに大きく分けられる。 連邦法による著作権の保護目的と対象 連邦議会は、著作者 (author) および発明者に対して、それぞれ著作 (writings) および発明に対する排他的権利を一定の期間に限り付与することにより、科学および有用な技芸の振興を促進する...権限を有する。 “ ” 合衆国憲法 第1条第8項第8条 (通称: 特許・著作権条項(英語版)) (1) 著作物性が認められないもの 上述の8ジャンルのいずれかに該当していても、著作物性がないとされるケースがある。その要件の一つが「創作性」の有無である。合衆国憲法で定めた特許・著作権条項の「著作者 (author)」の用法から、著作権には創作性 (originality) が必要であるとされている。 著作物性を巡って争われたリーディング・ケースとして、1990年最高裁判決の「ファイスト出版対ルーラル電話サービス裁判」が世界的に知られている。これは電話帳に掲載された電話番号を無断で転載した事件であり、単なるデータの配列だけの電話帳には創作性が認められないとして、無断転載が合法と判示された。この判決により、アイディア・表現二分論 (著作者の創作性に基づく「表現」を保護するのが著作権だとする考え方) が明示され、額の汗の法理(英語版) (著作物の内容や特性の如何に関わらず、著作者の労力の賜物である著作物を保護しようとする考え方) は否定されることとなった。 無方式主義を採用する国では、著作物を創作した時点で自然に著作権が発生する。そのため、創作者本人は著作権保護の対象内だと認識していても、第三者の目には創作性がないものと映り、認識にギャップが生じることがある。そしてこのギャップは、著作権侵害で提訴した時、あるいはUSCOに著作物を登録した時に初めて公となり、解消される。たとえば先述の「アタリゲームズ対オマーン裁判」では、アタリ社がUSCOにゲームを登録しようとして申請を却下されたことから、当時のUSCO局長ラルフ・オマーン(英語版)を提訴している。最終的にオマーン局長の判断は誤りだったとして、連邦控訴裁は当ゲームの著作物性を認めた。 ファイスト判決やアタリ判決以外にも、創作性の線引きを巡って争われた判例が複数存在する。たとえば、ケーキ箱のラベルやプラスチックの花には創作性が認められた一方、言葉やフレーズの断片、スローガン、音楽のわずかな変奏などは創作性が否定されている。 (2) 著作物性は認められるが、著作権が発生しないもの 特許・著作権条項の「著作 (writings)」の文言から、著作物は何らかの媒体に固定 (fixation、fixed) されていなければならないと解されている。この固定要件とは、印刷物や録音・録画など何らかの媒体に記録されている必要があり (第102条)、固定されていない生の著作物は米国において法的保護の対象外となるという意味である。例えば、日米の大学間でインターネットを使って合同授業が行われており、それがライブ配信されただけでは、その授業内容は米国側では著作権保護されない。多くの先進国で、著作権保護に固定要件は定められていないことから、米国著作権法の特徴ともいえる。固定の要件が判示されたケースとしては「ゴールドスティン対カリフォルニア州政府裁判」(1973年最高裁判決) が知られている。ただし未固定の著作物を保護しないのは連邦著作権法であり、別途、州法のコモンロー・コピーライトで保護されることもある点に注意が必要である。 加えて、たとえ固定要件を満たしていたとしても、合衆国政府の著作物には著作権保護が認められない (第105条)。ただし、州政府などの地方自治体の著作物については、合衆国法典の規定の範囲外であり、各自治体で別途定められている。例えばオレゴン州やジョージア州などでは、注釈付きの州法法令集は著作権保護の対象内だとしている。 (3) 著作物性が認められ、著作権が発生した後に消滅したもの 著作権の保護期間が切れた著作物が該当する。米国著作権法では過去に著作財産権の保護期間を2段階制にしており、最初の期限が切れる際に更新手続を行えば延長できた。しかしこの更新手続を怠ったことから、他者に無断で著作物を悪用されたケースもある。詳細は「ダスター対20世紀フォックス裁判」(2003年最高裁判決) も参照のこと。
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