ワーキングプア
・ワーキングプアとは、正社員としてもしくは正社員並みに働いても、生活維持が困難、もしくは生活保護水準以下の収入しか得られない就労層のことである。
・もともとはアメリカで生まれた言葉であり、「働く貧困層」と訳される。
・日本では、2006年以降、テレビなどのメディアで取上げられ、新しい種類の貧困として、注目された。
・国税庁の平成18年度民間給与実態統計調査によると、年間給与額200万円以下の就労者は平成18年度で約1022万人であり、平成14年度の約853万人と比べると、5年で約180万人も増加している。原因としては、失業した中高年世代に加えてフリーターや派遣社員などの非正規雇用者の増加があげられる。
・このように、不安定な雇用環境にある非正規社員が社会において一定割合発生したことに呼応して、社会的な注目度が高くなった。
・具体的な解決策として日本では、母子家庭への自立支援策としての高等技能訓練促進費という補助制度の導入や非正規雇用者と正規雇用者の労働条件の均等化、正規雇用化の促進等を行っているが、予算の割合も低いのが現状で、実態に合っていない政策といえる。
ワーキングプア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/09 00:43 UTC 版)
ワーキングプア(英:working poor)とは、貧困線以下で労働する人々のこと。「働く貧困層」と解釈される[1]。「ワープア」と省略されることがある。
注釈
- ^ 2021年時点で、時間当たり8,720ウォン。
- ^ 賃金の「締め日」および「支払い日までの日数」は企業によってばらつきがあり、完全に統一されていない。早ければ「毎月月末締め・翌月10日払い」の場合もあるが、長くなると「毎月月末締め・翌月末払い」の場合もある。この場合、なんらかの職に就労できても当日から2か月間は実質無収入と変わらない生活を余儀なくされる。
- ^ 労働基準法第25条(非常時払)で「使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。」と規定されているが、「既往の労働に対する賃金」を生活費(家賃、食費、水道光熱費などの固定費)として充てるため前払いするよう請求しても、ほとんど認められない(生活費については「非常の場合の費用」として想定されていない)。
- ^ 渋谷のヤング・ハローワークの話として「即戦力を求めがちな企業側はアルバイト経験しかない人材を好まない傾向」があり指導官が「未経験者でも育ててゆく姿勢でもう少し門を広げてほしい」と述べているが、これは法的な強制力を有するものではない(朝日新聞・週末特集be-b〈青色〉 2006年11月4日)。同趣旨の記事は、多く報道されている。単行本では橘木俊詔『格差社会 何が問題なのか』(2006年、岩波新書)や中野麻美『労働ダンピング』(2006年、岩波新書)などを参照されたい。
出典
- ^ 「フルキャスト再び事業停止――厚労省方針 処分中に派遣」朝日新聞(2008年9月29日付夕刊、第3版、第14面)
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- ^ Report: Standard of living rises, poor remain impoverishedイェディオト・アハロノト電子版 2008年2月14日
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- ^ 論文の中で「ワーキングプア Working Poor」
- ^ 1918-2008。日本女子大学,中央大学の教授。昭和57年「現代の「低所得層」―「貧困」研究の方法」で学士院賞。東京帝大卒。著作に「山谷―失業の現代的意味」。江口英一 えぐち えいいち
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- ^ 非正社員の増加、賃金の低さは読売新聞の特集「【連載】ワーキングプア」(2006年)で取り上げられている。
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- ^ 保育士は官製ワーキングプア、公的サービスを提供する労働者が劣悪な労働条件で働かされるということは住民サービスが削られているのと同じ|竹信三恵子和光大学教授 | editor
- ^ 2019年12月17日中日新聞朝刊1面
- ^ 民間よりヒドい[ワーキングプア公務員]の地獄 | 日刊SPA!『SPA! 2009年6月9日』
- ^ 東京新聞:非正規公務員(No.466) 3人に1人 官製ワーキングプア:生活図鑑(TOKYO Web)
- ^ ワーキングプアを自治体が作っている | オリジナル | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
- 1 ワーキングプアとは
- 2 ワーキングプアの概要
- 3 解決への取り組み
- 4 関連文献
- 5 関連項目
- 6 外部リンク
ワーキングプア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/28 07:37 UTC 版)
詳細は「ワーキングプア」を参照 雇用につくことで貧困を回避できるいう保障はなく、国際労働機関(ILO)は世界の40%の労働者が貧困状態にあり、一日あたり2ドルの絶対貧困線以下では家族を養うのに必要な収入を得られていないとしている。例えばインドでは、慢性的貧困人口の多くは正規雇用により賃金を得ているが、それらの仕事は安全でなく収入が低いため、リスクを避けて富を蓄積できる機会がない。 この問題は、雇用機会と労働生産性について、ふたつとも上昇させるのが困難である点に起因しているとされる。国連社会開発研究所(UNRISD)によれば労働生産性の向上は雇用創出に負の影響を与えるという。労働者あたり1%の生産性向上による雇用喪失は、1960年代では-0.07%であったが、今世紀初頭には-0.54%に増大した。雇用創出と生産性向上(長期的に高賃金に繋がるような)のふたつが、貧困解決の道である。生産性向上なしの雇用増加はワーキングプア人口の増加に繋がるため、そのため一部の専門家らは労働市場政策での「量ではなく質の創出」を訴えている。それは高い生産性が東アジアの貧困を減らすことに貢献した点に着目したものであるが、その負の側面も現れ始めてきた。例えばベトナムでは、生産性向上が続いている間も、雇用創出は低調であった。このように生産性向上は常に賃金向上をもたらすとは限らず、アメリカ合衆国では1980年代から生産性と賃金のギャップが開き続けている。 英国のシンクタンク海外開発研究所(en:Overseas Development Institute)は、雇用創出による貧困削減について経済セクター別の違いのデータを示した。その中では24の事例が示されており、そのうち18で貧困を削減できている。この研究では、失業削減において他の業種(製造業など)の状況が重要になってくると示された。生産性向上によって最も雇用創造をもたらす業種は、サービス業であった。農業部門については、他の業種が苦境に至っているときの雇用的・経済的バッファーとしてのセーフティネットになっていた。 成長と雇用と貧困(Growth, employment and poverty) 事例数 農業部門での雇用増加 工業部門での雇用増加 サービス業での雇用増加 貧困率が減少している成長事例 18 6 10 15 貧困率が減少していない成長事例 6 2 3 1
※この「ワーキングプア」の解説は、「雇用」の解説の一部です。
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「ワーキングプア」の例文・使い方・用例・文例
- 私の兄は弁護士だが、仕事がなく高学歴ワーキングプアだ。
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